2015年06月30日

幻魔特区スザクU カリュプスの槍 〜 縫合級:終わらない道

←真理級:禁断の果実

ふたたび君のフォナーが鳴り始めたのは、その夜
のことだった。

[フォナー]
カムラナ技研工業より特殊認証コードを受信し
ました。ご返答をお願い致します

[フォナー]
カムラナ技研工業より特殊認証コードを受信し
ました。ご返答を……

君は眠い目をこすりながら、枕元に置いておいた
それを手に取ると、画面を睨む。

[ウィズ]
んにゃ……またかにゃ。キワムたちに、何かあっ
たのかにゃ……?

どうだろう、と君は言う。画面にはこう書いて
あった。

〈10−34 縫合列車 10−45〉
      〈承諾〉〈拒否〉

[ウィズ]
結局、この数字の意味がよくわからないにゃ。そ
れに縫合列車ってどこにゃ……?

[ウィズ]
……でも、友達のピンチには駆けつけないと
にゃ!

君はうなずき、迷わずに「承諾」に指を重ねる。
視界が引き伸ばされる感覚が襲ってきて──。

君は、もう一度この異界へとやってきていた。

[ウィズ]
……? 前に乗った列車と、ちょっと形がちがう
気がするにゃ。

[ウィズ]
それに月でもないみたいにゃ。……あそこにスザ
クロッドが見えるし、ここ、一体どこにゃ?

どうやら、今はまだ列車が動いていないらしい。

[アサギ]
相変わらず勘がいいですね。その猫は。ようこ
そ、魔法使い。しばらくぶりです。

振り返ると、そこにはアサギの姿がある。

[ウィズ]
アサギ……? えーと、あの場所から、外に出て
もいいのかにゃ?

[ウィズ]
たしか、スザクロッドの地下を守るのが仕事だっ
たんじゃ……。

[アサギ]
ああ、私はスザクロッド地下施設管理保守のアサ
ギとは別のアサギです。

[ウィズ]
別のアサギ……? ど、どういう……?

[アサギ]
うーん、そうですね……私はいろんな場所にたく
さん居ると認識して頂ければ問題ありませんよ。

[アサギ]
ちなみにこのアサギはスザクロッド郊外地域巡回
遊撃が担当です。どうぞ宜しくお願いしますね。

[アサギ]
それと、今回は「スザクロッド自警団」より、
助っ人が来てくれています。

そう言い、アサギが振り返ると、そこには見覚え
のある顔ぶれが居た。

[キワム]
よお、また会ったな、魔法使い! 会いたかった
ぜー!

[ミュール]
んふー、かわいし、かわいし。

[クロ]
ハッハッハッハッ……。

元気なキワムと、ひたすらクロを撫で続ける
ミュールがいた。

ミュールは君たちに気づくと、ぱっと表情を明る
くする。

[ミュール]
……あっ! あー!! それにいるのは、ねこ!
ねこですね!

[ミュール]
クロ、なでるの、あきまして! つぎは、ねこを
なでるます!

[ウィズ]
……あー……なんでこの子を連れて来たのにゃ?
詳し (※改行不備?によりこの先読めない)

うんざりした顔をしながら、ウィズはひたすら
ミュールに撫でられている。

ミュールの頭の上にはレベリオーが飛んでおり、
それを指さしてアサギはこう続けた。

[アサギ]
彼女のガーディアンはコインで強化されたガーデ
ィアンを「喰う」ことが出来ると解ったのです。

[ウィズ]
喰う……? どういう意味にゃ。

[アサギ]
言葉通りの意味です。ガーディアンが射出した攻
撃も捕食の対象のようでして……

[アサギ]
彼女は「コインが影響したガーディアン」のすべ
てを食い、自分の力に変えられます。

そこまでアサギが話した辺りで、列車はゆっくり
と動き出した。

だが、彼女はそれを全く気にしない様子で続け
る。

[アサギ]
つまり、彼女は収穫者のガーディアンに対してか
なり有効な迎撃手段になり得るということです。

[キワム]
頼りにしてるぜ、ミュール。

[ミュール]
ふふ、おまかせくだれませ。ぜんぶたべてしまう
ます!

君は、「今回自分が呼ばれたのは、収穫者を倒す
ため?」とキワムに聞いた。

だが、君の予想に反し、キワムは首を横に振る。

[キワム]
……いや、近いけど違う。今回お前を呼んだのは
収穫者をやっつけるためじゃない。

[キワム]
……あの「コイン」を作っている奴を、やっつけ
るためだ。

(道中)
またキワムたちに会えて嬉しいにゃ♪
この列車は、どこに向かっているにゃ……?

[ウィズ]
それにしても、あの「コイン」はなんなのにゃ?

[ミュール]
コインなのは、「カリュプス」のえきですのよ?

[ウィズ]
えき?

[アサギ]
超高濃度化された「カリュプス」の体液が封入さ
れている、とミュールは言いたいのです。

聞き返すウィズに、アサギはミュールの代わりに
答えた。

この場所からも見える、高く、遠く、巨大な塔。

[アサギ]
……そう、あれは言わば極小のロッドなのです
よ。

[アサギ]
「カリュプス」の体液を媒介に、自己のガーディ
アンを半ば暴走状態にする道具──。

[キワム]
……ああ、あれはもう二度と使いたくない。体の
中で爆弾が破裂したみたいだった。

一度「コイン」を使った時の記憶が蘇ったのだろ
う。キワムは苦い表情を浮かべた。

[アサギ]
同時に、あれを人間が持てば、強力な侵食能によ
り体組成を無理矢理変異させられます。

[キワム]
……俺たちが昔戦った、ヴィルゴみたいになるっ
てことだよ。

君はあの光景を思い出し、ゴクリとつばを飲み込
む。

仮に自分があのコインに触れれば、おそらくはあ
あなってしまうのだろう。

[アサギ]
「コイン」は、人間にとっても、ガーディアンに
とっても猛毒なのです。

[ウィズ]
でも、アサギも「コイン」の大きなやつを腰に下
げてるにゃ。それは大丈夫なのかにゃ?

走る度にカラカラと揺れるそれを見て、ウィズは
心配そうに声を上げた。

だが、ニッコリと笑ってアサギは返す。

[アサギ]
ええ、この「エンブレム」には、その毒を濾過す
る機能もあります。それゆえ大きいのですよ。

[アサギ]
……さて、みなさん、止まって下さい。この車両
に「コイン」の「鋳造機」があります。

[アサギ]
私が天井を破りますから、あなたがたは突入し内
部機構の破壊を……

と、そこまでアサギが言った時だった。

[???]
……待て待て待てェ。お前ら僕の列車で何して
る、んんー?

ウシュガ.jpg

[ウシュガ]
このウシュガ様の操る「縫合列車」と聞いてやっ
てんのかって聞いてんだよ、んんー!?

奇妙な風体の男が、前方の車両から君たちの方向
へ近づきつつ叫ぶ。

そして、その声を聞いたアサギは、以前見た時の
ように強烈な殺気を発し始めた。

[アサギ]
……ほう、「僕の列車」とな。つまりは貴様がこ
の列車のオーナーということだ。

[ウシュガ]
そう言ってるだろ、んん……お前らはどこのどい
つなの、タモンさんの知り合いか、んんー?

さらに、タモンという言葉を聞いた瞬間、キワム
の目が鋭く細められた。

[キワム]
……タモンと俺達は関係ない。だけど、お前は関
係あるらしいな。

[キワム]
この車両にある「鋳造機」は破壊させてもらう。
こんなものが存在して良いはずがない。

[アサギ]
そういうことだ、ウシュガとやら。邪魔するのな
ら──

[ウシュガ]
どうするってェ!? んんー!?

言いながら、ウシュガはガーディアンを展開す
る。

[ウシュガ]
やるならやろう、僕には時間がないんだ……もっ
ともっと、コインを作らなきゃさあ!!

[ウシュガ]
止らんないぞォ、僕も、この列車もなぁ、ん
んー!!

既に会話が通じる雰囲気ではない。君は戦いの構
えを取った!

(クリア後)

[ウシュガ]
ぐ……うう……。

君の魔法の力もあり、キワムたちはウシュガを完
全に圧倒する。

そして、彼の力が動力になっていたのか、ほどな
く列車はゆっくりと停止した。

いくつもの戦いを乗り越えたからか、キワムは以
前に比べてとても頼りがいがる。

[ウィズ]
……ホント、以前とは別人にゃ。

戦い方も歴戦の勇士と言っても遜色ないもので、
君もウィズも感心しきりだった。

だが、それに目を奪われていたからなのか、君た
ちはとあることを完全に忘れていた。

[キワム]
……? あっ、ミュールは!?

[アサギ]
なに? ……えっ、あの子どこに行ったんです
か!?

完全に戦闘モードに入っていたアサギも、驚きの
あまりいつもの口調に戻っている。

そう、いつからだったかわからないが、ミュール
の姿が完全に消えていたのだ。

……しかし、ふと静かになった瞬間、がり、が
り……と妙な音が響き始める。

[キワム]
この音……下から、聞こえるみたいだけど……。

[アサギ]
セルウス! 叩き割れ!!

キワムの言葉に、アサギはガーディアンを展開
し、足元の列車を殴りつける。

とてつもない力によって穴の開いたそこに
は……。

コインをガリガリと喰らい続けるミュールのガー
ディアン、レベリオーの姿があった。

しかも、レベリオーはコインを大量に食べた影響
なのか、以前よりも巨大化している。

[アサギ]
な……!? なんですか、これは……!

[ミュール]
ふぅ、レベリオー、おなかたくさんですね! よ
かったのでして!

[アサギ]
みゅ、ミュール……あなた、大丈夫なのですか?

[ミュール]
なにが大丈夫なのでして? レベリオー、もんだ
い、ひとつしてありませんない?

[ウシュガ]
あああ……ああああ……僕の、僕のコイン
が……!!

[ミュール]
えっ!? こ、これ、だめなのだった……?

慌てたミュールの動きとともに、レベリオーもぼ
くっと体を震わせて動きを止める。

そんな彼女の様子を見て、思わずキワムも君も吹
き出してしまった。

[キワム]
ぶっ! あっはははは! いや。大丈夫だよ。ど
んどん食っちまえ。全部だ!

[ミュール]
……ほんとで? えへっ、やったの! よころ
ぶ!!

[ウシュガ]
や、やめろ、やめろぉ……!!

[アサギ]
貴様にはたっぷり聞きたいことがある。拘束させ
てもらうぞ、ウシュガとやら。

[ウシュガ]
ああああ……!

アサギのガーディアンに連れ去られ、ウシュガの
声は少しずつ遠くなっていった。

それを君が眺めていると、アサギは君に近寄り、
小声でこう続ける。

[アサギ]
……本当は、あなたの魔法でコインを焼き払って
欲しかったのですよ。

[アサギ]
仮に我々のガーディアンがコインを破壊した場
合、その中身に触れれば暴走しかねませんから。

[ウィズ]
なるほどにゃ。そういうことだったのか
にゃ……。

[キワム]
……ん? どうしたお前ら。何か相談事か?

[アサギ]
いいえ、手伝って頂いてありがとう、とお礼を言
っていたのですよ。

そう言うと、アサギは君に向かって小さくウイン
クをする。話を合わせろ、ということだろう。

[アサギ]
そろそろ別の任務があるのですよね、魔法使い殿
とウィズは。

[ウィズ]
ん、あ、うん、そうなのにゃ。そろそろおいとま
するにゃ。

[キワム]
……なあ、魔法使い。絶対、また戻ってきてくれ
よ。

[キワム]
俺も、クロも、待ってるからさ。

[クロ]
ワンッ!

……キワムは変わった、と君は思っていた。

けれど、そう言って涙を浮かべる少し泣き虫なキ
ワムは、やはりいつものキワム。

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posted by yamanuko at 20:01| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

幻魔特区スザクU カリュプスの槍 〜 真理級:禁断の果実

←鋼鉄級:自由の真相

[アサギ]
「カリュプス」は、貴様たち「マスプロダクショ
ン型ガーディアン」……

[アサギ]
つまり量産型ガーディアンが生産されるきっかけ
となった生物だ。

荒々しく足を進めながら、アサギは君たちに背を
向けたまま話し始めた。

[アサギ]
この場所が「トウキョウ」と呼ばれていたころ。

[アサギ]
現在から1292年25日前、観測できる最初の
「カリュプス」が衛星軌道上に現れた。

[アサギ]
「鋼鉄」という意味を持つ奴らは、その名の通り
強固な外殻を持っていた。

[アサギ]
……それこそ、当時の人類が持つ兵器があらゆる
意味で通用しないほどにな。

[アサギ]
カリュプスは地上に降り立つと大量の分身を生み
ながら、あらゆる都市を破壊し尽くしていった。

[アサギ]
奴らが出現した理由も、奴らの目的もわからな
い。

[アサギ]
ただただ、「この星のあらゆる生物を食いつく
す」……それだけを遂行する生物だった。

苦虫を噛み潰したような表情で、アサギは続け
る。

[アサギ]
当時の人類は、それに対して有効な反撃手段を持
ち合わせていなかった。

[アサギ]
だから、人類は空に逃げた。奴らは地上に降りて
以降は、高く飛ぶことができなかったからな。

そこまで言い、おもむろにアサギは天井を見つめ
る。その先の空を、睨むように。

[キワム]
ま、待ってくれよ。それならなんで、今人間たち
は地上に居られるんだ?

[キワム]
それにさっき、アサギはそいつ──「カリュプス」
を「C資源」って呼んでただろ。

[キワム]
その怪物が……何も通用しないくらい強い怪物
が、なんで資源になるんだよ?

[アサギ]
……貴様らは、空を見たことがあるか?

[スミオ]
は……? いや、まぁそれは当然……。

[アサギ]
空に逃げた人類は、あらゆる意味で怒っていたの
だ。

[スミオ]
は? 意味がわから──

[アサギ]
空に逃げた人間たちは、一切諦めてなどはいな
かった。

[アサギ]
この怪物に何としても復讐してやる、確実に息の
根を止めてやる、と憤怒の炎に燃えていたのだ。

[スミオ]
……ッ!

アサギの目の奥には、鮮烈な怒りが渦巻いてい
た。

それはまるで、1000年前の人間たちが抱えた
怒りが、彼女の中に息づいているかのような──

[アサギ]
あの怪物を……「カリュプス」を黙らせる。その
ためになら、あらゆる手段をいとわなかった。

[アサギ]
人類は、自分たちが過ごしてきた想い出を焼き
払ってでも、その怪物に復讐したかった。

アサギは、スミオに向けていた視線を、もう一度
見えないはずの空に向ける。

そこには、暗く、深い闇に包まれた天蓋から突き
出た、巨大なトゲしか見えていない。

まるで、恨みを込めて、地面に突き立てた剣のよ
うな──。

[ヤチヨ]
……ま、待って……あの、まさか、とは思うんだ
けど……今まで通ってきた、廃墟は……。

[ヤチヨ]
それに……資源って……つまり、スザクロッド
は……アサギさんたちの任務は……。

震える手で口元を覆いながら、ヤチヨは言う。恐
ろしいものを見たような目をして。

[アトヤ]
……ああ、お前の気づいた通りだよ、ヤチヨ。

悲しく笑いながら、アトヤはめくれた岩盤に突き
立つ、トゲの先端を指さす。

[アトヤ]
あの馬鹿でかいトゲは──スザクロッドは、空か
ら降ってきたんだ。「カリュプス」めがけてな。

[アトヤ]
でもな、当時の人間たちも、そのくらいで奴がく
たばるとは思っちゃいなかったんだよ。

[アトヤ]
……だからな、永遠に「殺し続ける」ことにした
んだよ。あの怪物をな。

アトヤの言葉と同時に、ロッドの先端から、聞き
覚えのある音が聞こえる。

……そう、君たちは気付いてしまった。この音は
「カリュプス」の叫び声だったのだ。

その声を聞いて、皆スザクロッドの先端を見つめ
て驚いた顔をしている。

だが、キワムだけは、何故か目をそらし、悲しそ
うな表情を浮かべていた。

[ヤチヨ]
なんて……ことを。いくら敵だからって、そん
な……!

絞りだすようにそう言うと、ヤチヨは唇を噛んで
うつむく。

その肩を、ミュールがそっと抱く。

[ミュール]
ヤチヨ、だいじょうぶですので、だいじょうぶで
すので……。

[ヤチヨ]
……信じられない、いくら恨んでいたからって、
こんなこと普通できないよ。

敵意に満ちた瞳をロッドの先端に向けながら、ヤ
チヨは言う。

だが、そんな彼女を冷ややかな目で見下ろしなが
らら、アサギは言った。

[アサギ]
「カリュプス」が生み出した分身体を解析した
所、奴らの退役は資源としてとても優秀だった。

[アサギ]
だから、当時の人類はそれを利用することにし
た。ただそれだけのことだ。

君は、正面に見える岩の間から流れ落ちる、青白
く光る液体を見たことがある。

スザクロッドを歩いていた時、地面を走ってい
た、あの光の正体……。

つまり、あれは怪物の拍動。吸いだした体液を走
らせる、いわば血管だったのだ。

[ウィズ]
私達は、そんな場所の上にいたのかにゃ……。

[アサギ]
ああ、そうだ。人類が達成した復讐の礎の上に、
この塔は立っているのだ。

[トキオ]
しかし、それなら我々が守っていた「333号
ロッド」は、何のために……?

[アサギ]
本体は黙らせることが出来ても、周辺には「カ
リュプス」の生み出した分身体が山ほどいた。

[アサギ]
……それなら狩り尽くし、人間が住める場所を作
る。

[アサギ]
それがお前たち、マスプロダクション型ガーディ
アンと「小ロッド」の役目だった。

[アサギ]
「カリュプス」に落とされた「大ロッド」。その
周辺の掃除を永遠に行うためにな。

[アサギ]
おそらくは、1000年近く、お前たちはあの
ロッドで暮らしてきたはずだ。

[アサギ]
繰り返し、繰り返し……ロッドのプログラムした
日常を過ごしながらな。

[アサギ]
な……。

アサギの冷たい言葉は、何一つ容赦なくトキオの
心を打ち砕いたに違いない。

その証拠に、彼は力なく瓦礫の上に座り、見える
はずのない空を仰いでいた。

(道中)
とてつもない場所にゃ……。
一体、この世界はどうなってるにゃ。

[コベニ]
……何いまさらなことで弱ってんのよ、こいつ
ら。私達みたいに好き勝手生きればいいのに。

[アトヤ]
そう言うな、コベニ。こいつらは最近ロッドを
失ったばかりなんだよ。

[アトヤ]
最初はツライもんだぜ、俺だってそうだった。

悲しげな目をして、アトヤはコベニをたしなめ
る。

そんな皆を見ながら、君は複雑な心持ちでいっぱ
いになっていた。

[ウィズ]
……なんて世界にゃ。こんなの、私なら耐え切れ
ないにゃ……。

[ウィズ]
どうすればいいにゃ……?

耳元で囁くウィズに、わからない、と君は言う。

それでも、何かができるはずだ。そう思い、君が
一歩踏み出し、口を開こうとした……

その時だった。

[アトヤ]
──ッ! 伏せろッ!!

[ウィズ]
にゃっ!?

アトヤの声に思わず身をかがめた直後、頭上を強
烈な閃光が通過する!

そしてその閃光は、スザクロッドの先端へと急激
に角度を変えた!

[アサギ]
な……! まずいッ!

アサギの表情が凍りつく。

そう、あの閃光が、仮にスザクロッドの先端を破
壊したとしたら。

スザクロッドが止まるのはもちろん、まだ生きて
いる怪物が──

死に続けているはずの「カリュプス」が復活して
しまう!

しかし、その閃光は君が魔法を発動する暇もな
く、スザクロッドの先端へ伸び──

リベリオー.jpg

[ミュール]
ヤム!

と、ミュールが叫んだ瞬間、閃光は掻き消えてし
まった。

[アサギ]
……!? これは、何を……まさか、今の光を
食ったのか?

[ミュール]
私の「レベリオー」、これなら、食べられますか
らして!

[ミュール]
アサギの、下げてるそれ……それから、あのひと
のコイン、ぜんぶいっしょ!

笑いながらそう言うミュールが指差す方向には、
驚愕の表情でこちらを見つめる女性の姿。

[ミュール]
「カリュプス」のえき、はいってますからゆえ!

ヒミカ.jpg

[???]
……ずいぶん事情に詳しい小娘だな。このコイン
の製造法は知られていないはずだぞ。

[???]
それに、ずいぶん懐かしい顔がいるな。元気にし
ていたか、アトヤ。

[アトヤ]
ヒミカ、お前か……コベニをここへ差し向けたの
は。

[ヒミカ]
はは、覚えていてくれたか。200年以上ぶりだ
というのにな。

疲れきった表情をして、ヒミカは言う。それは、
先ほどのトキオの表情に驚くほど似ていた。

あらゆるものに絶望し、心が擦り切れ果て、もう
何もかも諦めた……そんな表情だった。

[ヒミカ]
なあ、もういいだろう。こんな長い人生、私は要
らなかった。

[アトヤ]
……いいや、俺には夢がある。それを叶えるまで
は、終わるわけにゃ──

[ヒミカ]
うるさいよ。

[アトヤ]
ぐああっ!?

[コベニ]
──ッ!

ヒミカの放った閃光は、アトヤとコベニを同時に
吹き飛ばす。

[アサギ]
ぎっ……あ……!

[ミュール]
ぐぁ……!

さらにその閃光は方向を変え、なぎ払うようにア
サギとミュールを地面に叩き付けた。

[ヒミカ]
なるほどな、捉えられない限りは消されることも
ない、と。大した脅威ではないな。

[キワム]
アサギ! アトヤさん!

[ヒミカ]
復讐の道具に使われた我々は、その道具を作った
人間に対して復讐する権利がある。

[ヒミカ]
こんな形で生きる塔も、ヒトも、いらない。ガー
ディアンは、もう充分に耐えたはずだ。

[ヒミカ]
私達が歴史の裏側に消えた、ただの道具で終わる
のは……許さない。

言いながら、ヒミカはうなだれる皆に近づいてい
く。

そして、アッカの髪を掴むと、それを引っ張り無
理矢理に立ち上がらせた。

[アッカ]
痛っ……やめ……てよ……!

[ヒミカ]
フン……もうガーディアンを出す精神力も無い
か。脆弱だな、我々の道具とはいえ。

[ヒミカ]
私達はここに生きている。それを、忘れさせはし
ない。

ふたたび、閃光が放たれる。それはアサギとアト
ヤをもう一度巻き込んだ。

[キワム]
お、おい、トキオさん、スミオ、ヤチヨ、アッ
カ! 立てよ、このままじゃ……!

[トキオ]
このままじゃ、なんだ? 何が変わるっていうん
だ。

[キワム]
そんな……スミオ、スミオは……!?

[スミオ]
俺は……何が、もう正しいのか、わかんねえよ。
どうすりゃいいんだよ……。

[キワム]
や、ヤチヨ……!

[ヤチヨ]
嫌……もう……無理、私……!

[キワム]
そんな……みんな……。

君は、思わず目をそらし、ポケットの中にある
フォナーを握りしめる。

彼らが悲しむのを、もうこれ以上見てはいられな
かったのだ。

君の手の届かないところで、大切なものがどんど
ん壊れていく気がした。

何もできない自分が腹立たしくて、思わず君の目
に涙が浮かぶ。

だが、そんな君の肩を、誰かが力強く、叩いた。

[キワム]
……大丈夫だ。

彼は、にっこりと君に笑いかけると、一歩前に出
る。

その手には、収穫者のコインが握られていた。

[ウィズ]
にゃっ……!? き、キワム、それは……!

次の瞬間、キワムの体が強く輝く。

そして、そこには……。

キワム3.jpg

[キワム]
はあぁァァ……グ……ウ……。

いびつな怪物に体を変えた、キワムの姿があっ
た。

[ヒミカ]
……無様な。使い方も知らずにコインを使うなど
と。

[ヒミカ]
そのまま、死ね。

ヒミカのガーディアンから、閃光が三度放たれ
る。

だが、それをキワムはその腕で弾いた。

[ヒミカ]
な……!

[キワム]
復讐スる権利ダと……か……そんな……もの……
俺ハ、しらない……!!

[キワム]
俺は決メたんダ、『俺ガ何かをして、幸せになる
ヒトがイるんだったら、闘う』ッテ……!!

[ウィズ]
キワム……!!

[キワム]
皆ガ、闘えないナら……俺が全部背負ウんダ。

[キワム]
どんな姿になっテも、何ヲ使っても、ゼンブ、俺
がヤッてやル……!!

[キワム]
ダかラ、みんナ……泣かナいでくれよ。

[ヤチヨ]
キワム……嫌だ、行かないで!!

涙を浮かべたキワムは、ヤチヨの言葉を振り
払うように、ヒミカへと突進していく。

その姿を見ていたキミに、ヤチヨが叫んだ。

[ヤチヨ]
お願い!! キワムを一人にしないで!!

……!!

そうだ、そうしなければダメなんだ。君は彼女の
言葉に、ハッと我に帰る。

そうだ、戦わなければならない。君は、戦わなけ
ればならない!!

世界のためだとか、平和を守るとか、大義名分の
ためではない。

[キワム]
ガアアアアアアアアアアアア!!!!

たった一人で戦おうとする友達を、ひとりにしな
い。

そのためだけに、君は走りだした!!

(クリア後)

[キワム]
ガアアアア!!

[ヒミカ]
こんな出鱈目な……! ぐっ!?

キワムの腕の一撃で、ヒミカのガーディアンを彼
女ごと吹き飛ばす。

[キワム]
カァッ!!

さらにそれを追いかけようと、地面を殴りつけて
キワムは飛んだ。

[キワム]
ゥオオオオオ!!

[ヒミカ]
ぐっ……!!

そして空中で体制を整えようとするヒミカを巨大
な腕で掴み、地面に叩きつける!(※原文ママ)

[ヒミカ]
あっが……ぐ……!

[キワム]
ハァァァ……!!

戦いは一方的だった。だが……。

[キワム]
グゥア……アア……!!

[ヒミカ]
好き勝手……やってくれる……!

キワムは頭を抱えうずくまるのに対し、ヒミカは
なぜか立ち上がったのだ。

君も全力を出し切ったせいか、もう、立つことが
出来ない……。

……おそらく、ヒミカが立ち上がったその秘密
は、彼女のガーディアンにあった。

薄く光る翼は、キワムの攻撃を寸前で防御してい
るように、君には見えていたのだ。

[ヒミカ]
チッ……これではもう、足りないか……。

だが、自分のコインを見つめ、ヒミカは舌打ちを
ひとつ。そして突然──。

[アッカ]
きゃあッ!?

[ヒミカ]
せめてコイツは回収させてもらうぞ……多大な犠
牲を払ってこれを作ったのだ。

[ヒミカ]
……ここがダメでも、次がある。

[アッカ]
嫌だ、離せ、離せえっ!!

[ヒミカ]
ではな。

[キワム]
マ……テ……!

薄く笑うヒミカに、キワムは腕を伸ばそうとす
る。

[アッカ]
やだ、キワム──!!

けれど、それは、届かなかった。

まるでその場から煙のように、ヒミカとアッカは
消えてしまう。

[アサギ]
……な、るほど……あのアッカとかいう娘……収
穫者に作られたのか……。

[アサギ]
おそらくは、私と同じ、権限を持っていたのか。
だから、ここに……入れたのだな。

ボロボロの体を引きずり、アサギはぶつぶつと呟
きながらキワムへと近づいていく。

[アサギ]
お前は、よくやったよ。キワム・ハチスカ……。

[キワム]
ウゥ……アアァァ……。

キワムは、泣いていた。

半ば人ではない体になりながら、彼は迷子の子供
のように、ただ泣いていた。

そんな彼に、アサギは自分の持つエンブレムを押
し当てる。

[キワム]
……あ、ぐ……!

すると、彼の体から、黒い霧のようなものがエン
ブレムに吸い込まれていく。

次の瞬間には、彼の体は元の形へと戻っていた。

[ヤチヨ]
キワム!

ヤチヨは、倒れこむ寸前のキワムを抱きとめる。

[ヤチヨ]
ごめん、ごめんね、キワム……ごめん……ごめん
なさい……!

[キワム]
……アッカは……。

[ヤチヨ]
連れて行かれた……ごめん、私、なにもできなく
て……!!

[キワム]
俺も、何も、できなかった……ちくしょう!!

額に手を当てながら、キワムは悔しげにそう言
う。

[???]
……いや、お前は充分時間を稼いでくれたぜ、キ
ワム。

[ロッカ]
アッカが俺を作り出す、勇気を奮い起こすまでの
時間を。

[ウィズ]
ろ、ロッカ!? な、なんでここに……アッカは
連れて行かれたはずにゃ!

[ロッカ]
収穫者たちが欲しい機能は、アッカじゃなくて俺
にある。だから置いて行かれたんだ。

[ロッカ]
……アッカを、助けてくれ。あいつは今、収穫者
の船に載せられて、空に飛ぼうとしてる。

[ロッカ]
あいつらは、月に行く気だ。アッカの、そしてお
前らの生まれ故郷に……!

[アトヤ]
……なるほどな。ガーディアンを作る施設は月に
しかねえ。

[アトヤ]
俺も行くぜ、こうなったら……とことん付き合っ
てやるよ。

[コベニ]
アトヤが行くなら、私も行く! もう離れてたま
るもんか!

[キワム]
……アトヤさん、コベニさん……。

[キワム]
……ありがとう。

アサギは、そんな皆を見て頬をゆるめたあと、君
に向かって鋭い視線を投げた。

[アサギ]
このコインは、もうキワム・ハチスカが使うべき
ではない。

そう言うと、アサギは君の足元にコインを放り投
げる。

[アサギ]
あなたがこれを破壊するのです。魔法使い。

君はアサギに対し頷き、地面に置かれたコインへ
魔法を放った。

……知らず知らず、君は以前このコインを集めて
いた。

これを使えば、確かにガーディアンは強くなる。

だが、使ってしまったら、取り返しがつかないこ
とが起こってしまうのでは……

そんな悪い予感が、君の中に大きく大きく渦巻い
ていた。

[ウィズ]
にゃっ……!? 私達のこと、知ってて……?

[アサギ]
あなたを呼んだのは、カムラナ技研工業。その端
末である私が、知らないはずがない。

[アサギ]
また、彼らの傷が癒え、準備を終えたのち、お呼
びします。

[アサギ]
……それまで、これを頼みましたよ。

アサギがそこまで言うと、再び君のポケットの中
で、フォナーが振動し始めた。

[フォナー]
ごきげんよう、魔法使い。お気をつけてお帰り
を。

[ウィズ]
ま、待つにゃ! なんで私達が呼ばれるの
にゃ!?

[ウィズ]
それを……!!

だが、その叫びは途切れ、君はその場から消え
た。

[キワム]
……あいつ、また、いなくなっちまったの
か。

[アサギ]
大丈夫、今度は相対時間のズレはありません。

[アサギ]
あなたのフォナーと、きちんとつなげておきまし
たよ。

[アサギ]
(……願わくば、次が最後の召喚になるとよいの
 ですが……)

  *  *  *

目を開けると、そこは見慣れた君の部屋だった。

……君が見た景色や、知ったことが、夢であれば
どれだけいいか。

[ウィズ]
キワムたちは、本当に大丈夫なのかにゃ……?

ウィズが少しだけ心配そうに、君を見上げながら
そう言う。

だが、それに君はなにも答えることが出来ない。

自分に関するあれほど衝撃的な現実を叩きつけら
れて、立ち直れる人間は、いるのだろうか。

彼らがいったい、これからどんな道を歩いて行く
のかさえ、わからなかった。

……だが。

[フォナー]
キワム・ハチスカよりメッセージを受信しまし
た。

[ウィズ]
……開いてみるにゃ。

沈痛な気持ちで、君はフォナーを手にする。

そこには、ぎこちないながらも笑顔を浮かべる、
皆の写真が写っていた。

その下には、君にも読める文字で……

「スザクロッド自警団 結成!」

「もちろん、お前もメンバーだぞ」

と書かれていた。

縫合級:終わらない道→

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posted by yamanuko at 19:59| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

幻魔特区スザクU カリュプスの槍 〜 鋼鉄級:自由の真相

←上級:より、良い場所へ

[アサギ]
タイプは高度戦略用拡張型ガーディアンインター
フェース。

[アサギ]
現在、マスプロダクションタイプガーディアンのア
トヤ・ハクザンと暫定的に連携中です。

[アサギ]
スザクロッド地下施設保守業務担当をしておりま
す。以後お見知り置きを。

アトヤの横にちょこんと立って、アサギは君たち
に深々と一礼する。

[ウィズ]
……んで、こっちが……?

[ミュール]
はい。これは、なまえが、ミュールです。

[ミュール]
ミュールは、さいきんになっての、うまれてまし
たので、このばしょのこと、あまりしらずです。

[ミュール]
ちしきは、いま、すくなめのなので、げんざい、
あつめたりますけれど、むずかしいのか……。

[ミュール]
みんながたは、さまざまことを、おしえたりくだ
さい。ミュールはきっとよろこぶです!

[クロ]
ワン!

[ミュール]
えへへ、これはとても、かわいければ!

たどたどしい言葉で話しながら、ミュールはクロ
を抱えてにっこりと笑う。

[トキオ]
うーむ。ずいぶんとまた……。

[ウィズ]
濃い二人にゃ……。

怪我の応急処置を終えたトキオは、ウィズと並ん
で二人を眺めている。

どうやら、先ほどのアトヤとの会話が、彼の気持
ちを多少楽にしたようだった。

[アサギ]
アトヤ・ハクザン。あらためてお聞きしますが、
この方々はあなたのお友達なのですか?

[アトヤ]
ですです、彼らも俺と同じ、ロッドをなくした
ガーディアンなんすよ。

[アサギ]
……こちらの、ミュール……といいましたか。

[アサギ]
この方は、色々とガーディアンの指定規格と違う
ようですけれど、どういう方なのです?

少し不安げな表情をしながら、アサギはアトヤに
聞いた。

[アトヤ]
あー……そうすね。なんかツノ生えてますし、な
んだろう。

[アサギ]
エンブレムも無ければ、ガーディアンアバターも
いない。それにこのツノ……。

[アサギ]
ヤチヨ・カスガ。あなたのガーディアンは知覚に
優れています。ミュールを調べて頂けませんか?

[ヤチヨ]
えっ、あ、はい。──シキ、お願い。

[シキ]
はいな!

デバイス形態のシキから、緑色の光線がチラチラ
とミュールに向かって照射される。

つま先から頭の天辺までその光がゆっくりと動く
と、ヤチヨはうーん、と首をかしげた。

[アサギ]
いかがでしたか、ヤチヨ・カスガ。何か変わった
ところはありましたか?

[ヤチヨ]
うーん……いや、見た目に反して、完全に人間の
それですね。体温はちょっと高いですけど。

[ヤチヨ]
頭のツノに見える部分も、角質層の発達したもの
みたいですし、特に変わったところは……。

[アッカ]
んー……私みたいに作られた子なのかなぁ……。
ねぇアサギさん、その可能性はないの?

[アサギ]
それならば、あなたのロッカのような、ガーディ
アンアバターがいないのは何故でしょう?

[アッカ]
わ、わかんない……。ねえミュール、こういう
の、あなたにはいないの?

[ミュール]
むむ……? そのしろいふくろみたいなのは、こ
れでよきかたちですか?

ロッカを見ながらそう言うと、ミュールは指先か
ら、小さな機械のような球体を生み出す。

リベラ.jpg

その球体は、くるくると彼女の周辺を黒いガスの
ような翼で飛び回った。

[アッカ]
わぁ、かわいーい! ねえ、この子の名前はなん
ていうの?

[ミュール]
それの、なまえでありましてか? うーん……な
いのでありまし。

[アッカ]
えー、もったいないよ! つけよう!

[ヤチヨ]
かわいいやつがいいよね。 えーと……。

……楽しげにそうやって話す彼女たちを見ている
と、まるで昔の皆が戻ってきたようだった。

ふと、君に向かってアトヤが手招きをする。君は
そっと立ち上がると、彼の方へと歩いて行った。

[アトヤ]
……今、キワムから聞いたんだけどよ。

[アトヤ]
師匠の腰のエンブレム……あれと同じようなやつ
を、「収穫者」って奴らは持ってるらしいな。

君はその言葉にうなずく。

同時に、収穫者が居る場所には、時々落ちている
ことがあるとも伝えた。

[アトヤ]
……話がある。付き合え。

アトヤの背後には、キワムとスミオの姿がある。
君は、彼らについていくことにした。

(道中)
……あの奥から、嫌な空気を感じるにゃ。
……ここは、いったいどこにゃ?

ここに来て、数度聞いた奇妙な音が響く。それを
耳にして、アトヤは顔をしかめて立ち止まった。

[アトヤ]
……さて、このへんでいいか。

アサギ達の居た場所から、かなりの時間歩いた
後。

アトヤはそう言って、椅子ほどの大きさの石に腰
掛けた。

[アトヤ]
お前らも座れ。大事な話だ。スミオもいい加減、
俺を信用しろ。アサギは収穫者じゃない。

[スミオ]
……信じられるか、そんなもん。

[スミオ]
アサギが腰から下げてたやつは、奴らが持ってた
コインと同じマークだっただろ。

……そう、君もあのコインやエンブレムについて
いたマークには見覚えがあった。

だが、スミオの言うとおり、あれを最初に見たの
は、収穫者たちと戦っている時だ。

[ウィズ]
……あのコインはいったい何にゃ? アトヤ、
知っているなら教えてほしいにゃ。

[キワム]
それは俺も知りたい。あれには何が隠されてるん
だ?

真剣な皆の様子に、アトヤはバツが悪そうに頭を
かく。

それからぽつぽつと、つぶやくように彼は話し始
めた。

[アトヤ]
師匠はおそらく、最も初期型のガーディアンだ。
このロッドが──

[アトヤ]
いや、この場所が出来た頃から、この場所をずっ
と守ってる、すごい人なんだよ。

[スミオ]
……はは、おい。ちょっと待ってくれよ。

[スミオ]
確かヤチヨが「1000年以上前の建物」だって
言ってたぞ? ホントかよ。

[アトヤ]
だからそう言ってんじゃねえか。あの人はそれよ
り前からここに居るんだ。

[アトヤ]
で、だ。あのエンブレムの模様は、カムラナ技研
工業って会社のマークなんだよ。

[アトヤ]
このロッドと、俺達ガーディアンを作った──言
わば、この世界の生みの親のな。

……そういえば、この世界に来る直前、フォナー
から流れた音声を君は思い出した。

[フォナー]
カムラナ技研工業より特殊認証コードを受信し
ました。ご返答をお願い致します。

あの時はなんのことかわからなかったが、つまり
こういうことだろうか。

『この世界を作った「誰か」が、君を必要として
いた』。

[アトヤ]
それに、アサギは64年に1度の施設外一斉点検
でしか外に出ねえ。

[アトヤ]
だからな、結局お前らのロッドを折ったりだとか
はできねぇんだよ。わかったか?

[スミオ]
……じゃあ、結局あのコインとか、アサギの腰の
エンブレムは何なんだよ。

……スミオがそう訊いた瞬間、アトヤはふっ、と
一瞬だけ悲しげな顔をした。

[アトヤ]
あのエンブレムには……

[???]
見つけたァ!!

聞きなれない声に、君はハッとして振り返る。

コベニ.jpg

[???]
アァーーーートォーーーーヤァーーーー……!!

そこには、憤怒の表情で、アトヤの名を呼ぶ小柄
な女性の姿があった。

手には禍々しい弓を携えていて、その矢の切っ先
はピタリと彼に向いている。

[アトヤ]
……コベニ? いや、まさかそんな……

[キワム]
え、誰?

[アトヤ]
ああ、ええと……俺の昔の仲間。430号ロッド
の……。

[ウィズ]
にゃ!? じゃあ、あの子も……?

[コベニ]
ええ、ガーディアンよ……アトヤ、あんたね、こ
んなところに200年近く引きこもって……!!

[コベニ]
やっと、やっとよ。やっとここに入れたわ。今日
は絶対に、絶対に……!!

[コベニ]
あんたを、ここから引きずり出してやるから!!

叫びながら、コベニは弓を引き絞る。青白い矢が
光り、君たちに狙いを定めた!

(クリア後)

[コベニ]
やーーーーだーーーー!! アトヤが来てくんな
いとやーーーーだーーーー!!

[アトヤ]
うるせぇーーッ!! なんなんだよおめェはよ、
急に来て暴れて騒いで!

[コベニ]
だってさみしかったんだもん!!

[コベニ]
ちょっと喧嘩して私がほんの少しあの廃墟出て
いったらアトヤいなくなってるし!!

[アトヤ]
お前のほんの少しは半年もかかんのか! あ!?
長すぎんだろバーカ!

[コベニ]
そんなもん、あんたが引き篭もってたこの200
年に比べればほんの少しでしょ!?

[アトヤ]
言っときますけど200年じゃないですー、
193年だから200年じゃありませんー!

[コベニ]
なにそれ腹立つぅ〜! ほんっとあんたいい加減
に──

[スミオ]
……してほしいのはこっちなんだけどな?

完全な痴話げんかの様相を呈していた二人の会話
に、スミオはため息混じりに割って入る。

それで落ち着くことが出来たのか、ふたりは地面
に座り込んだ。

[アトヤ]
……お前、どうやってここに入ってきたんだよ。
普通は入れねえんだよここは。

[コベニ]
入れてもらった。

[アトヤ]
いや、だから普通は入れないんだって。誰に入れ
てもらったんだよ。

[コベニ]
……いいじゃん別にそんなの言わなくてもさ。私
だって言いたくないことの一つやふた──

[アトヤ]
もし、変な奴らが悪いことを企んだりしたら、大
変なことが起こるんだよ。

[アトヤ]
ここは色々大事な場所なんだ。頼むから教えてく
れ……お願いだ、コベニ。

真剣な表情のアトヤの言葉に、コベニはなぜか顔
を赤くしてうつむく。

そして、少しだけ彼を睨むと、ポケットの中から
ある物を取り出した。

[コベニ]
わかんないの。名前は教えてくれなかった
し……。

[コベニ]
でも、これ渡された。なんか……危ない時は使
えってさ。別に、私には必要ないけど。

そう言いながら、彼女が地面に放り投げたそれ
は、高い金属音を立てて地面を転がる。

[スミオ]
……ッ、こいつは……!

[キワム]
……。

そのコインは、まさに先ほどまで彼らが話してい
た、収穫者たちの持ち物だった。

[アサギ]
遅かったですね。……あら、また新しいお客様で
すか?

コベニを連れ、隠れ家に戻ってきた君たちを見
て、アサギはそう声をかけてきた。

[アトヤ]
ああ、お師匠さん。コイツの他に、やべえお客様
もいらっしゃってるみたいで。

[アサギ]
やべえお客様? なんなのです、それは。

[アトヤ]
……収穫者っていう、スザクロッドを折ろうとし
てる奴らです。

[トキオ]
なんだって……!?

アトヤの声を聞いて、奥のベッドで寝ていたトキ
オは勢い良く立ち上がる。

[ヤチヨ]
トキオさん、まだ寝てないとダメです! 傷がま
だ……!

[トキオ]
ふざけるな! 収穫者が来たんだろう、じっとし
てられるか……!

[ヤチヨ]
でも……!

[アサギ]
二人共、黙れ。

[ウィズ]
にゃっ……!?

低く、強烈な殺気を含んだ声が響き、その場にい
る全員の背筋が凍りついた。

[アサギ]
アトヤ・ハクザン。収穫者とは何だ。報告せよ。

彼女の纏っていた穏やかで静かな雰囲気は一切消
えている。

アサギは、不気味に鋭く冷たい目を持つ、小さな
怪物に変貌していた。

[アトヤ]
収穫者は……キワムたちのロッドを人為的に折っ
た者達です。

[アトヤ]
お師匠の持つ「エンブレム」と同様の機能をもつ
「コイン」を使い……

[アトヤ]
また、この「地下施設」を──「スザクロッド最
下層C資源」を侵す可能性があります。

[ウィズ]
……えっ、「スザクロッド最下層」……?

[ウィズ]
どういうことにゃ、ここはスザクロッドと何か関
係があるにゃ?

[アサギ]
当たり前だ。ここが落ちればスザクロッドは機能
を停止する。

[アサギ]
同時に、C資源……「カリュプス」が復活すれ
ば、この世界は終わりだ。

真理級:禁断の果実→

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posted by yamanuko at 19:58| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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