2016年02月29日

約束の日の金魚師 サーヤ・スズカゼ

遠くへ消えた彼女の影、指切り交わした再開の約束。
また、いっしょに花火を見よう。

  *  *  *

──夏が過ぎ、秋が駆け抜け、白の季節がやってきた。
空を覆う灰色の雲、吹き荒れる山風、やむことなく降り積もる雪。

厳しい冬を楽しむために、異界「和ノ国」で催される「雪上の大花火大会」。
世界中から集まった観客の前で、花火師たちが夜空に色とりどりの華を咲かせる。

夏のそれとは趣の異なる、幻想的な空の芸術。
光が舞い散る細雪を照らし、世界は神秘で飾られる。

息をのむような光景の中、君のその目は彼女を探す。
けれど、あまりの人出に身動きもとれず……やがて最後の演目を迎えてしまう。

いくつものハートが浮かんでは消える、可愛らしい大作。
観客が一際わき立ち、誰もが空に目を奪われたその瞬間──

視界を遮る、鮮やかな傘。

「約束、覚えててくれたんや……うれしいわぁ」

背伸びし傘さす、記憶の少女。
見上げる微笑みが思っていたよりずっと大人びていて、君はなぜだか目線をそらす。

澄んだ瞳と栗色の髪、雪降る宙を舞う色とりどりの金魚たち。
夏の淡い想い出が、胸を、身体を駆け巡る。
響く花火の咲く音も、祭りの人々の歓声も……もう、ここまでは届かない。

  *  *  *

あの夏よりも、ちょっぴり甘い二人の予感。
それは、ほんの少しの間だけ。

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posted by yamanuko at 18:57| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

風水金魚師 サーヤ・スズカゼ

夏の夜空を彩る大輪の花。

四季ある異界"和ノ国"に今年もこの日がやってきた。
国中の花火師達が己の腕を磨き、心血を注いだ一品で競い合う「大花火大会」だ。

国宝の花火師であり親友のサクラがこの日の為に用意した花火。
その出番を、縁側に座ってサーヤは待ちわびる。

傍らに居るのは、彼女が操る水の流れに沿って、空中を自由に泳ぐ"使役された金魚"たち。
新調した着物を見にまとい、彼女は金魚たちに問いかける。

「この日のためにこしらえた一張羅の着物」
「どや? はんなりしたええ色合いの着物やねぇ」

  *  *  *

夏を彩る非日常は露と消え、はにかむ少女の火照った頬を秋の予感が優しく撫でる。
時はめぐり、異界「和の国」に葉の色づく季節がやってくる。

祭りの余韻冷めやらぬ夜、手繋ぎ畦道を歩く二つの影。
水気を含んだ大気をかきわけ、豊かに実った稲穂の影から虫の音が響く。
新月の空に輝く幾億の星々、見上げた少女の横顔はどこか儚く……

「短い付き合いやったけど……あんたの名前、一応、覚えといたるわ」

いたずらっぽい笑顔の影で、小さなその手に力がこもる。
色とりどりの金魚たちが、もの言いたげに宙を舞う。
ぎゅっと握られた彼女の気持ちに想いが弾け、君の迷いは決意に変わる。

この夏はまだ、もう少しだけ、続く──

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posted by yamanuko at 18:54| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

三周年 伝説再臨! 〜 イザヴェリ編:長い旅路の果て

←見つからない温泉

山を越えた。

海を渡った。

魔物を倒し、小国を滅亡させた。

言い訳をすることが許されるのなら。

何も小国を滅ぼすつもりはなかった。

偶然、彼らの領地に
踏み入れてしまったことが発端だが、
その時はイザヴェリもすぐに戻ろうとしたのだ。

だが彼らは、あろうことか
イザヴェリとヴィヴィを囲い、襲ってきた。

[イザヴェリ]
あんなことをしなければ、許してあげたのに。

全ては温泉のため。

イザヴェリの欲を満たすため──。

[イザヴェリ]
……おかしいわね。何もないわ。

かなりの距離を進んだはずだが、
やはり一向に見つからない。

いくら死界が広いとはいえ、
そろそろそれらしいものがあっても
いい頃なのでは? と思い始めていた。

道しるべがあるわけではないし、
問いかけようにも死骸しかない。

[イザヴェリ]
困ったわね……。

[ヴィヴィ]
あれを見て、イザヴェリ。

ヴィヴィが指差したのは、
赤く燃え盛るような場所だった。

死界の者は、それを灼炎の砦という。

[イザヴェリ]
……あんなに燃えるような見た目だったかしら。

それは灼熱と呼ぶに相応しい、真っ赤な建物だ。

煙と、焼けるような異臭が漂ってくる。

[イザヴェリ]
……あれが、温泉?

[ヴィヴィ]
…………。

[イザヴェリ]
私の想像とはずいぶん違うわね。

[イザヴェリ]
まあいいわ。行ってみましょう。
何かわかるかもしれないし。

(道中)
あそこには何があるにゃ?

辿り着いた、砦。

近づけば近づくほど、その熱が伝わってくる。

イザヴェリは額から一滴の汗を垂らし、
そして砦の最上部を見上げた。

厳かに鎮座する者が、
イザヴェリを睨めつけている。

ドラゴン.jpg

それは巨大で真っ赤なドラゴンであった。

[ヴィヴィ]
大きい。

[イザヴェリ]
しょせんは知能のない獣ね。
来客への礼儀がなってないわ。

[イザヴェリ]
見下ろす相手を間違えているわよ、化物。
私は用事があってここに来たの。
さあ、失せなさい。

それはグルルと喉を鳴らした後で、
威嚇するように咆哮した。

そう、〈死喰〉を挑発したのだ。

[イザヴェリ]
私は温泉に用があるのよ。
見たところ、もうこれがそうじゃない?
だからあなたに用はないの。

[イザヴェリ]
温泉……心躍るような言葉ね。
私に何を与えてくれるのか……
ああ、もう待ちきれないわ。

身体の奥底から、熱いものがこみ上げてくる。

そうだ。これが欲を満たすために必要なのだ。

渇きも、飢えも、
この一瞬の前にはないに等しい。

この欲望を満たし続ければ、より高みに──
誰ひとり辿りつけない私だけの世界に──
いくことができるのだ。

しかし、そう簡単には辿りつけない。

[ヴィヴィ]
イザヴェリ、あのドラゴン……
何か、吐き出そうとしている。

[イザヴェリ]
炎だろうと雷だろうと水流だろうと、
私を覆うことはできないわよ。

[イザヴェリ]
たかがしれてるわね、無能なる化物。

イザヴェリは嘆息して、頭を振った。

[イザヴェリ]
代償を支払うかわりに対価を得るなんて、
馬鹿みたい。流行らないわ、そんなの。

[ヴィヴィ]
じゃあ、あれは無視して進む? それとも帰る?

[イザヴェリ]
どっちも嫌。

[ヴィヴィ]
……わがまま。

[イザヴェリ]
欲しいものは何があっても手に入れるし、
必要ないものは楽しいと思えなくても、
この手で潰してあげるわ。

まるで遠雷のごとき、
ドラゴンの唸り声が響き渡る。

[イザヴェリ]
見てなさい、ヴィヴィ。
私が、あの低俗なモノを壊してあげる。

(クリア後)

戦いは熾烈を極めた。

──とはいえない。

長い髪をなびかせて飛び上がり、
爪を立ててドラゴンへ一閃。

着地と同時に身を翻らせて、踵で一閃。

ドラゴンの肉を裂き、骨を抉りとる様は、
およそ正気とは言い難い。

なおも倒れないドラゴンと、
まるで子どものような笑みを浮かべ
狩りをするイザヴェリでは、勝負にならなかった。

普段は食べることだけしかしない彼女だが、
その内に秘めたるものは暴虐である。

死界において、
誰も彼女に近づこうとしないのは、
"ソレ"が巨悪であると知っているからである。

[イザヴェリ]
ふふ、あははは──! もっと、もっとよ!
醜悪なあなたを喰らってあげる!
だからもっと、もっと抗いなさい。

[イザヴェリ]
温泉を奪われたくないでしょう?

[イザヴェリ]
弱者と侮る私に喰われたくないでしょう?

[イザヴェリ]
さあ、意地を張って命を賭して牙を剥きなさい!

[ヴィヴィ]
イザヴェリ、楽しそう。

意地だ。そして矜持だ。

そんなもの、生き延びるためには必要がない。

逃げることも、隠れることも、
生きるための力だからだ。

守護者たるドラゴンもまた、
それを捨てようと逃げ出そうとしたが──。

[イザヴェリ]
──ダメ、逃がしてあげない。

ドラゴンに密着し、甘く囁きかける。

聞こえていたか、あるいは理解できていたか、
それは定かではない。

最後に、イザヴェリはドラゴンの腹部を捉え──

──べちゃ。

[イザヴェリ]
……へ?

口から吐き出された大きな卵を、
頭から被ってしまった。

[ヴィヴィ]
い、イザヴェリ……!?

どろり、と額から鼻先をつたい、
こぼれ落ちたのは黄身である。

[イザヴェリ]
いやあああ!?

次々に吐き出される巨大な卵たち。

ぐちゃ、べちゃ、と音を立て
イザヴェリの頭に降り注ぐ。

およそ数百年。

数多いる死界の強者を押しのけ、
〈死喰〉と恐れられていたイザヴェリにとって、
初めてのちょっと切ないダメージであった。

[イザヴェリ]
なにこれ変な臭い……もう何なのよ……。

どろりとこぼれ落ちる黄身を振り払った。

[ヴィヴィ]
こっちに飛ばさないで。

ヴィヴィは持ってきていた骨で、それを防ぐ。

[イザヴェリ]
ああ、もう……気分が削がれたわ。最低。

骨2.jpg

[骨]
あっしはいったい……。

[ヴィヴィ]
あれ?

[骨]
ああ! あいつでさァ!
あいつが温泉っつーヤツでさァ!

[ヴィヴィ]
あなた、見た目変わってない?

[骨]
そんなこたァありゃしやせん。
ヴィヴィの姐御、あっしのことお忘れで?

[イザヴェリ]
邪魔よ、どきなさい。

[骨]
ぎゃっ。

イザヴェリの飼い犬に蹴り飛ばされた骨が、
再びその命を散らした。

[ヴィヴィ]
温泉はいいの?

[イザヴェリ]
もうそんな気分じゃなくなったわ。

砦は目の前だというのに、
イザヴェリは踵を返してしまった。

[イザヴェリ]
帰るわよ。

[ヴィヴィ]
うん。

[イザヴェリ]
そういえば……。

[イザヴェリ]
うちの近くにお湯が湧いていたわね。
入れそうな溜まりもできていたし。

[イザヴェリ]
そこに入っていきましょう。
これ全部洗い流したいわ。

[ヴィヴィ]
うん。

[イザヴェリ]
はあ……遠くに来て卵を浴びて……
とんだ災難ね……。

己の欲を満たそうと足を運んだのに、
なんて仕打ちだ。

イザヴェリは、そんなことを考えていた。

もうしばらくは遠出をすることもないだろう。

[イザヴェリ]
温泉……辿りつけなかったわね。

心残りができてしまった。

いずれ知ることができるだろうか?

このヴィヴィ・ナイトメアとともに、
見つけられるだろうか?

温泉という名の、答えを──。

[イザヴェリ]
何も得られなかったなんて、笑えないわね。

収穫といえばせいぜい、
帰り際に熱いお湯に浸かれるぐらいか──。

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