2016年04月28日

ウィズセレクションストーリーズ 〜 願いのトリロジー:若き戦神の受難

←武器を作りて勇者を待つ

サクト・オオガミ.jpg

サクト.jpg

[???]
ついに"お呼び"がかかった。

若き戦神、サクト・オオガミは、そう呟いて、
届いた文を懐に収めた。

[サクト]
この日をどれだけ待ち望んだことか……。

貧しい農村にある小さな社でありながら、
彼は多くの民兵から信仰を集めていた。

そうした実績が認められたのか、
数多き戦神の中でも圧倒的な力を持つ集団、
戦神四十七柱から誘いが掛かったのである。

[サクト]
悪しき強者の時代は終わりだ……。

そう言って、
彼は腰に下げたふた振りの刀を抜く。

その刹那、一刀から炎が、もう一刀からは
水流が吹き出して、2頭の狼を形作った。

[サクト]
焔狼、流狼、共にこの戦乱に名を刻もう。

熱き炎の狼が宿る「焔狼刀」と、
冷たき水の狼が宿る「流狼刀」──。

その刀は彼の相棒であり、彼の象徴であった。

[サクト]
正しき者が勝つ。そんな時代を創るんだ……。

サクトは戦神としての使命に燃えていた。

「強い者が正義」という言葉を、
彼は心底嫌っていた。

彼にとって、争いとは常にどちらかが
正義であり、どちらかが悪であった。

そして彼は常に正義の味方であろうとしていた。

しかし、彼が味方する側が
勝つことは稀であった。

「人の戦に直接介入してはならない」

そんな戦神の掟が、
正義を貫こうとする彼をずっと縛り続けてきた。

[サクト]
カタバ様なら、
きっとボクの想いを分かってくれるはずだ……。

戦神四十七柱の首領、カタバ・フツガリが
自分の信念に従って人の戦乱に介入している。

そんな噂を耳にして以来、
サクトにとってカタバは憧れの存在となった。

そして今日、そのカタバから、サクトを
戦神四十七柱に迎え入れるという文が届いたのだ。

[サクト]
さあ、行こう。

サクトは2頭の狼が宿った刀を鞘に収め、
勇んでカタバの元へと向かった。

  *  *  *

カタバ.jpg

[カタバ]
悪いが、もう戦の時代は終わった。

[サクト]
え!?

正義を勝たせたい。

サクトの熱い決意を聞いたカタバは、
冷たくそう答えた。

[カタバ]
「喧嘩神輿とうなめんと」に優勝した阿呆どもが、
全てを終わらせたからな。

[サクト]
そんな! 「正義」のために必死に戦ってきた
兵士たちはどうなったんですか?

[カタバ]
知ったことか。戦を離れた者に興味はない。

「喧嘩神輿とうなめんと」

選ばれた神々によって行われるその「喧嘩」に
優勝したものには、どんな願いでもひとつ叶う
目録が与えられる。

前回の優勝者、和歌の神ミコト・ウタヨミの願い
によって、人間界で行われていた戦が全て終わっ
たのは、サクトが文をもらう数日前のことだった。

[サクト]
じゃあ悪しき強者どもは?

[カタバ]
戦は終わったんだ。悪しかろうが正しかろうが、
強者は弱者の上に立ち続けているだろう。

[サクト]
……それじゃ正しき弱者が報われない
じゃないですか?

[カタバ]
恨むならセイとスオウを恨むんだな。

[サクト]
セイとスオウ?

[カタバ]
四十七柱を抜けて歌の神なんぞの肩を持った、
腑抜けの野良戦神どもだ。

[カタバ]
まあ、あいつらが抜けたから、俺はお前に声を
かけた訳だが……。

[サクト]
ボクちょっと行って来ます!

[サクト]
戦がないなんて、なんのために戦神やってるのか、
分かんないですから!

怒りの炎を瞳に宿して、
サクトはカタバの社を後にした。

(道中)
やっぱり平和が一番にゃ。

四十七柱を抜けて、
戦乱で荒れ果てた土地を回っている戦神がいる。

そんな噂を聞きつけたサクトが、
セイとスオウを見つけるまでに、
さほどの時間はかからなかった。

[サクト]
セイ・シラナミ様、スオウ・カグツチ様と
お見受け致します。

セイ.jpg

[セイ]
ああ、そうだ。

スオウ.jpg

[スオウ]
誰だ? お前?

[サクト]
戦神四十七柱の一柱、サクト・オオガミと
申します。

[スオウ]
戦神四十七柱だと?

[セイ]
見ない顔だが、新入りか?

[サクト]
はい。おふたりが抜けた後、カタバ様よりお声を
掛けて頂きました。

[スオウ]
で、その新入りが俺たちに何の用だ?

[サクト]
なぜ、戦神でありながら、
戦から逃げたのですか?

[セイ]
逃げた? 俺たちはカタバのやり方に
ついていけなくなっただけだ。

[スオウ]
なんつーか、無益な戦を止めたかったんだ。

[サクト]
無益な戦、だと!?

スオウの言葉に、サクトは怒りを露わにする。

[サクト]
正義を掲げ、悪を討つために命を賭した人々の
戦いが、無益だというのか?

怒りに打ち震えるサクトは、
腰の二刀を鞘から引き抜く。

その刹那、解き放たれた焔狼と流狼が、
雄叫びを上げる。

[スオウ]
ちょ、落ち着けって!

[セイ]
話の通じる雰囲気じゃないな。

[スオウ]
しょうがねえ、ちょっと揉んでやるか。

[サクト]
うぉおおおお! 天誅!

(クリア後)

[サクト]
はぁ……はぁ……。ボクの剣が通じないとは……。
これが、戦神四十七柱の実力か……。

怒りに任せたサクトの太刀筋は、歴戦をくぐり
抜けてきたセイとスオウに尽く見透かされ、
勝負はあっという間に決した。

[セイ]
炎と水の二刀流か。中々いい太刀筋だったぞ。

[スオウ]
なんつーか芯がある。
カタバより強くなるかも知れねえぞ、お前。

[サクト]
戦を捨てたお前たちにすら通じない剣だ。
いくら褒められたところで嬉しくない。

サクトはふてくされて刀を鞘に収めた。

[セイ]
それで、お前はどうして俺たちを憎む?

[サクト]
お前らが世の戦を無理やり終わらせたから、
今でも悪がはびこってる。

[セイ]
お前の言う通り、悪人は死んでない。
その分、善人も死ななくなった。

[スオウ]
まあ、確かに辛い暮らしをしてる人だって
いるけどよ。
それでも死ぬよりマシなんじゃねえか?

[サクト]
お前たち、本当に戦神か?

[セイ]
ああ。

[スオウ]
ま、そうだな。お前と同じ、戦神だ。

[サクト]
ボクはお前たちとは違う。必ず正義が勝つような、
正しい戦乱を作りたかった。

[スオウ]
でもよ、悪いやつをどうこうするのに、
戦は必要ないんじゃねえか?

[サクト]
でもボクは戦神だ。戦がなくなったら、
何もできない……。

そう言って、サクトは深く肩を落とす。

[セイ]
周りを見てみろ。長く続いた戦乱で、土地も、
人もボロボロだ。

[スオウ]
俺たちは今、それをどうにかしようと
踏ん張ってんだ。

[セイ]
スオウは農具鍛冶の神みたいなことを始めたし、
俺は水車小屋とか水田の神みたいなことも始めた。

[スオウ]
ま、戦神だけじゃ食っていけないからな。戦の
後始末に必要なことなら何でも来いって感じでよ。

[セイ]
スオウは元々刀鍛冶が得意だったし、
俺は水に絡んだ策略が得意だった。

[スオウ]
お前には何がある? 戦のない世の中であっても、
正義の為にできること、あるんじゃねえのか?

[サクト]
正義の為……。

[セイ]
そうだ。お前の言う、正義を背負って戦って、
傷ついた人間が沢山いる。

[サクト]
ボクには、これしか……。

サクトは俯いたまま、手にした刀を見つめる。

[セイ]
炎と水を操る二刀流……か。

[スオウ]
アッツいのとツメったいのねえ……あ、そうだ!

と、スオウが何かに閃く。

[サクト]
なんですか? 何閃いたんですか?

[スオウ]
お前、いいお湯つくれるんじゃねえか?
その水をアッツい炎で温めてさ。

[セイ]
熱すぎず、温すぎない、いいお湯をつくるか……。

[サクト]
……やってみます!

サクトは焔狼刀と流狼刀を構える。

[サクト]
いでよ、いいお湯!

ふた振りの刀から迸る水と炎は宙で絡みあい、
瞬く間に3人の前に湯が溜まっていく。

[スオウ]
……おお、いい湯だ!

[セイ]
これなら、戦で傷ついた人々を癒せるぞ。

[サクト]
戦のことしか考えてこなかったボクに、
こんな力があったなんて……。

若き戦神サクト・オオガミは、
こうして「湯の神」となり、
多くの人々の心を癒すこととなった。

[スオウ]
今日もいい湯に入れそうだぜ!

[セイ]
自分で入ってどうすんだ?

[サクト]
沸け! 全ての疲れを癒す湯よ!

サクトの言葉に応えるように、
焔狼刀と流狼刀が吠える!

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ウィズセレクションストーリーズ 〜 願いのトリロジー:武器を作りて勇者を待つ

←お願い!お星さま!

リギット・ミリアン.jpg

とある異界のとある鍛冶屋──。

艶麗な女がひとり、

赤く滾る鉄を無心で打っている。

リギット.jpg

[???]
ふぅ……。

女の名はリギット・ミリアン。

かつて国一番と讃えられたその美貌は、
一匹の魔物の心を乱暴に奪い去った。

ガルグル.jpg

[???]
オマエ ウツクシイ……。

魔物の名はガルグル。

[ガルグル]
オマエ ヨメ ニ ナレ。
シアワセ ニ シテヤ──。

[リギット]
ふんっ。遠慮しとくわ。

突然現れた魔物からの唐突な求婚を、
彼女はキッパリと断った。

[ガルグル]
……ナゼ?

[リギット]
だって全然好みじゃないもの……。
というよりあれね。生理的に受け付けないレベル。

[ガルグル]
……!!

自分の好意を無下にする、ズケズケと刺すような
彼女の物言いに、魔物は身を震わせた。

怒りに震えたのではない──。
恋の、愛の、雷鎚に撃たれたのだ。

[リギット]
じゃあ、そういうことだから。

彼女は冷たくそう言い放つと、魔物に背を向けた。

[ガルグル]
……オマエ ゼッタイ ヨメ ニ スル。

だから"私"は彼女に呪いをかけた。

[リギット]
あ、あれ? 足が……動かない。

彼女はもう、私から離れることが出来ない。

それが私のかけた呪いだった。

[ガルグル]
アンシン シロ ヤクソク ハ マモル。

[リギット]
……こんなもんかしらね。

おや? どうやら嫁の仕事が一段落したらしい。

[リギット]
ねえ! お腹空いたんだけど!

仕上げたばかりの刀身を置いてから、
彼女は不機嫌そうに声を上げた。

[ガルグル]
ワカッタ イマ ヨウイスル。

私は予め準備しておいた食事を彼女の前に
並べていく。

私は約束を破らない。
嫁を幸せにするためにこうして尽くしてきた。

[ガルグル]
イイブキ デキタカ?

銀のカップに葡萄酒を注ぎながら、
私は彼女に声をかける。

[リギット]
ふんっ。自分で確かめてみなさいよ。
アンタを殺るために作ってんだから!

言うが早いか、彼女は手元の刀身を振り上げて
私に斬りかかる──

[ガルグル]
……タシカニ イイデキダ デモ イタクナイ。

しかし彼女の手によって
私が傷つくことはない。

[リギット]
バッカみたい。

それも呪いの持つ力のひとつだ。

[リギット]
それにしても、めっきりご無沙汰よね……。

工房内に並べられた数々の武器を眺めながら、
不満気な声をあげる。

そのひとつひとつが、
私を倒すために作られたものだ。

そしてそのどれもが、
歴史に名を残すであろう名品である。

[リギット]
アンタ、世界中の男たちが腑抜ける呪いとか
かけてんじゃないでしょうね?

[ガルグル]
……カケテナイ。

[リギット]
……たく。いくら武器作ったところで
扱うオトコがいなくちゃ話にならないじゃない。

私の呪いを解くためには、
彼女は私を討つ必要がある。

彼女の武器を使った勇者の手によって……。

私のところへ嫁に来て以来、
彼女は武器を作り続けた。

そしてその天性の嗅覚で、
勇者の存在を感じ取っては、
そのオトコに見合う武器を手渡すのだ。

[リギット]
あ、感じるわ! オトコの熱い鼓動が!
今にも歴史を変えそうな、勇者の鼓動が!

そう、こんな風に唐突に、
彼女は勇者の気配を感じ取るのだ。

[リギット]
何ぼやっとしてるのよ!?
早く連れて来なさいよ。
あんたの息の根を止める勇者のトコに!

[ガルグル]
……ワカッタ。

私は彼女を抱きしめて、勇者の元へと移動する。

私の力を以ってすれば、一瞬の内に世界中
何処へでも移動することができる。

例えそれが、私を討つかもしれない
勇者の元であっても……。

私は約束を破らない。

(道中)
喧嘩するほど仲がいいにゃ!

巨竜.jpg

[巨竜]
貴様、人の子の分際で、
主の私に逆らうつもりか!

タケル.jpg

[タケル]
ああ。ビクビクするのはもうやめだ。
俺は今から、お前を倒す!
勝って、俺が主になってやる!

[リギット]
あの彼ね。うん。ビリビリ感じる。
時代にその名を刻むであろう勇者のオーラを!

彼女が久しぶりに見つけた勇者は、
今まさに丸腰で巨大な竜と対峙していた。

[リギット]
丁度いいタイミングじゃない。ちょっと君、
私の武器で、歴史でも変えてみない?

[タケル]
……だ、誰だお前?

[リギット]
お兄さん、いい目してる。何かとても大きなこと
を成し遂げそうな……そんな目をしてるわ。

[タケル]
俺はただ、迷い込んだこの世界と向き合うことを
決めただけだ。

[リギット]
それで、その手始めに竜退治ってとこかしら?

[タケル]
だから、何の用だって──。

[リギット]
あんた、丸腰であの竜とやるつもり?

[タケル]
ああ、悪いかよ。

[リギット]
ねえ、私の武器、使わせてあげようか?

嫁はそういって、オトコの前に自慢の武器を
並べていく。

[リギット]
例えばさ、この片手剣なんかあんたに
ぴったりだと思うんだけど……。

[タケル]
必要ない。だいたい、
剣なんて一度も使ったことないし。

[リギット]
……うーん、じゃあこっちの槍なんてどう?
コレならあんな竜もこんな魔物もイチコロよ?

嫁はそういって、
さり気なく「私を倒せるアピール」を絡める。

いつものことだが、私の心はチクリと痛む。

[タケル]
……槍なんて、もっと使ったことねぇよ。

今回の勇者は、よほど武芸の心得がないのだろう。

嫁は次々と武器を提案していくが、
どれも受け取ろうとはしない。

[巨竜]
私のことを無視するなー!

そうこうしている間に、
巨竜が勇者に襲い掛かる。

[リギット]
ガルグル! 彼、今手が離せないんだkら、
あんたが相手してよ!

[ガルグル]
……ワカッタ。

[タケル]
おいっ! ちょっと待てよ!

(クリア後)

[巨竜]
な、なんだこの魔法は!
体が、体が縮んでいく……。

私の放った渾身の魔法を受けて、
巨竜はみるみる小さくなっていく。

私の力を以ってすれば、
巨竜を倒すなど造作も無いことだ。

[ガルグル]
トワ ニ ネムレ……。

そして私は、最後の一撃を見舞おうと
再び呪文を詠唱し始めるが──

[タケル]
ちょっと待て!

勇者の声が私を制した。

[タケル]
あんたがどれだけ強いか知らねえが、
その竜は俺の獲物だ! これ以上手を出すな!

[ガルグル]
……スマン。

[リギット]
そうよ、お兄さん。止めはあなたが刺すの。
私の武器、どれでも好きなの使って良いのよ。

[タケル]
そこまで言うなら、武器じゃなくてさ、そのおじ
さんが使ってる魔法、俺に教えてくれないか?

[リギット]
……は? 魔法? ガルグルの?

[タケル]
俺、直接攻撃より、魔法攻撃のが
性に合ってんだよ。まあ、ゲームの話だけど。

[リギット]
……なによそれ。

不貞腐れる嫁を尻目に、
私は彼に秘伝の魔法書を授けてやった。

[リギット]
……お兄さん、あんな竜なんて放っておいてさ、
私の武器で、この魔物倒してみない?

[タケル]
……なんで?

[リギット]
そうすれば、私は自由の身。
お兄さんとずっと一緒にいてあげるんだけどな?

パチリとウィンクを決める嫁だったが、

[タケル]
遠慮しとく。

勇者の決意は今回も揺らぐことは無かった。

彼は早速魔道書を開くと、
ものすごい速さで読み進めていく。

[タケル]
なるほどな……。結構簡単そうじゃねえか……。
なんとなく使える気がしてきたぜ!

[タケル]
……ってことで、ガルグルさん、だっけ?
あの竜、元のサイズに戻してくれよ。

[ガルグル]
……ナゼダ?

[タケル]
今から戦うからに決まってんだろうが!

[ガルグル]
……ワカッタ シンデモ シランゾ。

私は再び魔法を放つ。

[巨竜]
人の子よ、私に情けをかけたこと、
後悔させてやろう!

[タケル]
やってやるよ!
ラウンド・ワン、スタートだ!

魔道書を読みかじっただけの勇者が、
巨竜を凌駕する魔法を放つ。

[リギット]
な、何なのよあの子……。

[ガルグル]
アイツ オレヨリ マホウ ウマイ カモ……。

実際、私たちの目の前で、
勇者はあっさりと巨竜を倒した。

[タケル]
よっしゃ! 今日から俺がお前の主だ!

[巨竜]
仕方あるまい……。

そして、後に一国の主となるその勇者は、
巨竜を連れて私たちの前から姿を消した。

[リギット]
うう〜んまた振られた!
ねえ、私ってそんなに魅力ない?

[ガルグル]
オマエ セカイ イチ ウツクシイ。

[リギット]
……バーカ。帰るわよ。

そう言って、嫁は私の腕にしがみつく。

さて、今日の夕食は何にしようか……。

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ウィズセレクションストーリーズ 〜 願いのトリロジー:お願い!お星さま!

ハローラ・タクト.jpg

名もない小さな村に、
ひとりの少女がやって来ました。

ハローラ.jpg

[???]
ふぅ……。なんとか……はぁ……間に合った
みたいですね……。

おやおや? どうやらとっても慌てている
みたいですね。すっかり息を切らしています。

彼女の名前は、ハローラ・タクト。

たしか、ここよりずーっと南の方にある、
ラポリの里の出身です。

村の男.jpg

[村の男]
おいおい……。大丈夫かい、君?

[ハローラ]
はい、わたしは大丈夫です。
お気遣いいただきまして本当に──。

彼女はそう言うと、
男に向かって深々と頭を下げました。

……。

[ハローラ]
…………。

[村の男]
…………えーっと。

[ハローラ]
………………。

それはそれは長い長いお辞儀の後で、
ハローラはようやく頭を上げました。

[ハローラ]
それであの……もしご迷惑でなければ、
ひとつお尋ねしたいことがあるのですが。

[村の男]
なんだい? 何でも聞いてくれよ。

[ハローラ]
はい。今晩、この村で流星群を見ることが
できるという噂を耳にしたものですが……。

[村の男]
流星群? ああ、確かそろそろ見えるはずだけど。
君、流れ星を見るためにこの村へ来たのかい?

[ハローラ]
はい。と言っても「見る」ためじゃなくて、
「聞いてもらう」ためなんですが……。

[村の男]
聞いてもらう?

[ハローラ]
お願いごとです。流れ星に願いごとを
聞いてもらえると、それが叶うんです。

[村の男]
まさかそんなこと……。

[ハローラ]
ご存じない!? わかりました! 親切にして
頂いたお礼です。是非ご説明させて下さい!

ハローラはふんっと鼻から息を吐いて、
話し始めました。

[ハローラ]
では、まずは基本ルールの説明からさせてもらい
ます──。

[村の男]
あ、でも君、そろそろ流星群が──。

男の言葉を遮って、ハローラは話し続けます。

[ハローラ]
空から降ってくる流れ星が地上に落ちるまでに、
叶えたい願いを3回唱えると、あら不思議!

[ハローラ]
お星様がその願いを叶えてくれるのです。

[村の男]
願いを3回唱えるだけで、叶ってしまうのかい?

[ハローラ]
はい。でもそれは口で言うほど簡単なことではあ
りません。

[ハローラ]
想像してみてください。
流れ星がどれだけ速く落ちていくか。

[ハローラ]
一瞬ともいえる僅かな間に、
3回も願いごとを唱えるんです。

[ハローラ]
ですから、前もって心の準備をしておくことが、
とっても大切なんです。ちなみにわたしは──

そんな風にハローラが夢中になって
話していると──。

[村の男]
……あ!

夜空が突然明るくなって、
沢山の星々が降ってきたのです。

[ハローラ]
きゃ、わたしまだ心の準備が……。

突然の流れ星を前に、
ハローラはあたふたするばかり……。

[ハローラ]
わ、わたしラポリの里のハローラ・タクトともう
します……じゃなかった。えーっと……。

[村の男]
この村で流星群が見られるのは、ほんの短い間
だけなんだ。さあ、早く願いごとを──。

[ハローラ]
はい! ですからわたしの願いというのは……。
あ! 待ってくださいお星さま!

そうこうしているうちに、
流星は全て地上へ落ちてしまいました。

[ハローラ]
……はあ。また失敗してしまいました。

[村の男]
残念だったね。

[ハローラ]
いいんです……。どうせいつものことですから。

ハローラはがっくりと肩を落とし、
降ってきたばかりの星々を拾い始めました。

[村の男]
その星くずをどうするんだい?

[ハローラ]
きれいに磨いて、お守りにして、旅先で
お会いした人に配るんです。こんな風に──。

そう言って、ハローラはガラスの瓶から、
ピカピカに光った星くずをひとつ取り出し、
男に手渡しました。

[村の男]
ありがとう。
君は流れ星を探して旅をしているの?

[ハローラ]
はい、叶えたい願いがありますので、
いつも失敗してしまうんですけどね。

[村の男]
そうだ! ポポラの里には、星を降らせる
魔法使いがいるって聞いたことがあるよ。

[ハローラ]
星を降らせる? そんなことができれば、
願いを叶え放題ではないですか!

[村の男]
願いが叶うかはわからないけど、去年の終わりに
ものすごい数の星が降ったのは見たことがあるよ。

[ハローラ]
どこですか? そのポポラの里というのは?

[村の男]
ここからずっと北の方だよ。

[ハローラ]
ありがとうございます。

深々と頭を下げてから、ハローラは一路、
ポポラの里へと向かうことにしました。

(道中)
私も願いを叶えたいにゃ!

[ハローラ]
ここがポポラの里……。

[ハローラ]
星を降らせることができる魔法使い……。
そんな夢みたいな人がこの里に住んでいる……。

[ハローラ]
故郷の町を飛び出してから幾星霜……。
ここがわたしの旅の、終着地……。

[ハローラ]
いい、ハローラ? いつ流れ星がきても、慌てず、
素早く、3回よ。しっかり願いを唱えるの……。

そう自分に言い聞かせて、
ハローラが足を踏み出した時でした──。

大きな星がひとつ、
彼女に向かってまっすぐ落ちてきたのです。

[ハローラ]
来たっ! わたしの願い、唱えさせて頂きます!

そしてハローラは、
慌てず、素早く、願いごとを唱えはじめました。

するとどうでしょう?

ハローラの願いに応えるように、星は少女の姿に
形を変えて、声を上げながら落ちてきました。

キシャラ.jpg

[???]
きゃー!

おや? あれはポポラの里の魔法使い、
キシャラのようですね。

[キシャラ]
ちょっとどいてどいてー!

[ハローラ]
え? えええええええ!

(クリア後)

[キシャラ]
アイタタタ……。

[ハローラ]
空から……女のコ……?

[キシャラ]
大丈夫? 怪我はない? ごめんね。
「星けんけん」をしてたら足滑らせちゃったの。

[ハローラ]
はい。わたしは大丈夫です。
お気遣い頂きありがとうございます。

そう言って、ハローラは深々と頭を下げました。

[キシャラ]
いえいえこちらこそ……。

キシャラも慌てて頭を下げます。

[ハローラ]
……。

[キシャラ]
…………(チラッ)。
(まだ頭下げてる)

[ハローラ]
…………。

[キシャラ]
…………(チラッ)。
(なんて長いお辞儀なの!?!)

[ハローラ]
あの……。

長い長いお辞儀の後で、
ハローラはようやく口を開きました。

[キシャラ]
はい。

[ハローラ]
もしや、あなたは星を降らせることのできる
高名な魔法使い様では?

キシャラは照れくさそうに、はにかみながら、
コクリとうなずきました。

[キシャラ]
確かに「天の川☆フォール」で星を降らせたこと
はあるけど……。

[ハローラ]
やっぱり! お願いします。わたしのために
どうか星を降らせてもらえないでしょうか?

と、ハローラは
再び深々と頭を下げようとしますが……。

[キシャラ]
あ、ちょっと待って。ちょっと待って!

[キシャラ]
「天の川☆フォール」は、
あたしひとりで成功させるには難しい魔法なの。

[キシャラ]
それに、
星だってやっぱりお空に浮かんでいたいだろうし。

[ハローラ]
そうですよね……。

ハローラはがっくりと肩を落とします。

[キシャラ]
どうして星を降らせたいの?

[ハローラ]
叶えたい願いがあって、それで流れ星を探して旅
をしているんですけどいつも失敗ばっかりで……。

そう言って、ハローラはキシャラに星くずの
詰まった瓶を見せます。

[ハローラ]
これ、全部、わたしが願いを
唱え終わる前に落ちちゃった星なんです。

[キシャラ]
こんなにたくさん……。

[ハローラ]
それで、星を降らせる高名な魔法使いがいると
お聞きして……。

[キシャラ]
そっか。それで、どんな願いを叶えたいの?

[ハローラ]
わたし、子どもの頃から両親に甘えてばかりで、
ひとりじゃ何もできないんです。

[ハローラ]
それにすごい人見知りですし、内気ですし、
口ベタですし、そんな自分が嫌いでした。

[ハローラ]
そんな自分を変えたくて……。

[ハローラ]
ひとりでなんでもできて、明るくて、お喋りで、
友だちがいっぱいいて……。

[ハローラ]
そんな女の子になりたくて、流れ星に願いを
叶えてもらおうとしたんです。

[ハローラ]
でもやっぱりダメでした。

[ハローラ]
はじめはお家で流れ星を待っていたんですけど、
だんだん待ちきれなくなって、旅に出たんです。

[キシャラ]
流れ星を探すために?

ハローラはコクリと頷くと、
そのまま俯いてしまいました。

[ハローラ]
……でもダメですね。これだけ旅を続けて、一度
も願いを唱えきることができないんですから……。

[キシャラ]
叶ってるよ!

[ハローラ]
え?

[キシャラ]
だってハローラ、ひとりで旅してるんでしょ?

[キシャラ]
今だって、あたしとこんなにたくさん
おしゃべりしてるしさ。

[ハローラ]
……本当だ。

キシャラの言葉で、ハローラはようやく今の自分
に気が付いたみたいです。

[ハローラ]
流れ星に向かって、慌てず、素早く、3回、
願いごとを唱えることに必死で、
全然気が付きませんでした……。

[ハローラ]
故郷を出てからずっと、
わたしはひとりで生きてきました。

[ハローラ]
瓶に詰まった星の数だけ、わたしはいろんな場所
に行って、いろんな人と出会いました。

[ハローラ]
知らず知らずのうちに、成長してたってこと
だよね? すごいね、フローラ。

キシャラはそんな風に彼女を讃えますが、
ハローラは瓶に詰まった星くずをじっと見つめ、

[ハローラ]
お星さま、本当にありがとうございました。

と、深々と頭を下げました。

それはそれは長い長いお辞儀でした。

[キシャラ]
どうして星にお礼をいうの?
自分の頑張りでなりたい自分になったのに……。

[ハローラ]
でもやっぱり、お星さまがなかったら、
今のわたしはありませんから。

[キシャラ]
たしかにそうかも知れないね。

[ハローラ]
はい。やっぱりお星さまのおかげです。

[キシャラ]
ねえ、これから空に昇ってみない?
星のすぐ近くまで、連れて行ってあげる。

[ハローラ]
え? そんなことができるんですか?

[キシャラ]
うん。さあ、あたしに掴まって!

キシャラはハローラの手を掴むと、
オーロラに乗って空へ登って行きました。

そうして、ハローラは大好きな星々に囲まれて、
それはそれは楽しい時間を過ごしたのでした。

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posted by yamanuko at 21:51| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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