2016年09月29日

古の森の千年桜 〜 千年桜の噂

←絶妖級:季節は巡りて……

ヤヤコ・ミカグラ.jpg

その後のことは拍子抜けするほど
あっさりしてました。

喧嘩してたいはずの私たちも、気づいたら
いつも通りの私たちに戻っていました。

私たちの事件も、祭りの準備の忙しさに、
一部の人以外には知られないままです。

たしかに事件と呼ぶほどのことは
何も起きていません。

桜が咲いた以外は。

[ツツジ]
ヤヤコちゃーん!

[ヤヤコ]
今日は時間ぴったりだね。
さ、行こ。

[ツツジ]
でしょ。
私はあの時を境にして
生まれ変わったんだから。

[ヤヤコ]
それは認めるよ。
ツツジちゃん頑張ってるもんね。

桜の開花は、私たちにも変化を与えました。

ツツジちゃんは人が変わったように
真面目になりました。

[ツツジ]
あ!

[ヤヤコ]
どうしたの?

[ツツジ]
祭祀に使う神具忘れた!

ちょっと抜けているのは相変わらずですが。

[ヤヤコ]
私、先行ってるね。

[ツツジ]
うーん! あとで宮司様にも謝っておいて!

[ヤヤコ]
それは自分でやりなよ……。

ツツジちゃんなりに一生懸命頑張っています。

[マツリ]
花見団子はいかがですかー!
桜餅にお酒におつまみもありますよー!

[マツリ]
お。ヤヤコじゃない。
今日も踊りの練習? 精が出るねえ。

[ヤヤコ]
マツリちゃんこそ。お祭りが終わったのに、
まだ試験?

[マツリ]
違うわよ。千年に一度の開花よ。
遠くから見物客がわんさか来てるのよ!

[マツリ]
この機を逃したらサガミヤの名が廃る!
私の血が銭を稼げと滾るのよ!

[ヤヤコ]
そ、そうなんだ……。

マツリちゃんは例年以上に増えた
見物客のおかげで、うれしい悲鳴の
止む日がないらしいです。

いつも以上に鼻息の荒いマツリちゃんは、
正直ちょっと気持ち悪いです。

私も、桜のおかげで将来の目標が出来ました。

あの日、満開の桜の下で舞った喜びを
未来の踊り手に伝えたい。

そのために千年桜の舞を守り、
伝えていこうと思いました。

まずは人に教えられるくらいの踊り手になれる
よう、努力を重ねています。

[マツリ]
それはともかく、ヤヤコ。あの噂知ってる?

[ヤヤコ]
うん。知ってるよ。マツリちゃんは信じる?

[マツリ]
もちろん信じるわよ。
信じないわけないじゃない。

[マツリ]
考えただけでも血が滾るわぁ!

いま、街ではある噂が流行っています。

──千年桜は来年も咲くのか。

私たちは咲くって信じてます。
マツリちゃんが一番熱心に信じています。

もしかしたらマツリちゃんが噂を流した
のかもしれません。
マツリちゃんならやりかねません。

未来の私。

この手紙を読むとき、
あなたは私の知らないことを
いっぱい知っているはずです。

私はまだ泣き虫ですか?
踊りは上手になりましたか?
みんなと仲良くしていますか?

──桜は咲いていますか?

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posted by yamanuko at 00:16| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

古の森の千年桜 〜 古の森の乙女

←封魔人級:森の中の知恵者

フィオナ・カリーナ.jpg

その森にはふたりの乙女がいた。

ふたりはそれぞれ、
生命の芽吹きと生命の終わりを司った。

一方が目覚める時、もう一方は眠る。
まるで季節の循環をなぞるように、
ふたりは交互に眠り、目覚めた。

フィオナ.jpg

[???]
おはよう。

ひとりは春のように、
温かく天真爛漫な乙女だった。

アイシャ.jpg

[???]
おはよう……。そしてお休み。

もうひとりは、その影のように
悲しげな乙女だった。

  *  *  *

春の乙女の名はフィオナと言った。

[フィオナ]
あ。オモテさん、おはよう。
尻尾いつもふわふわだね。

[オモテ]
私をその名で呼ぶのはお前さんだけだ。
まあ、構わない。

[オモテ]
また、いつものように心地の良い
陽気を森に運んでおくれ。

[オモテ]
私はそこで昼寝をしたいのだよ。

[フィオナ]
うん。私も眠るの大好きだよ。

  *  *  *

冬の乙女の名はアイシャと言った。

[アイシャ]
……。

だがその名を呼ぶものはいなかった。

あるものは彼女を"終わり"と呼び、
あるものは彼女を"死"と呼んだ。

彼女は自らを、

[アイシャ]
悪……私は悪。

と呼んだ。

たしかに彼女は森に冬をもたらし、
多くの生命は厳しい時を過ごさねば
ならなかった。

それでもそれは、森に必要なものだ。
とは誰も言ってくれなかった。

ある冬。
森の知恵者を自負する梟が言った。

[ユング]
あなたが眠らなければいけないと、
いったい誰が決めたのですか?

[ユング]
理とは、破るためにあるのです。

[ユング]
……彼女を目覚めさせなければいい。

[アイシャ]
でも……フィオナに悪い。

[ユング]
一度だけ、たった一度だけです。

[アイシャ]
……。

彼女のひどい思い込みは、
梟の自尊心を満足させるために、
利用されてしまう。

[アイシャ]
あの子がいなくなれば、
私も必要とされるかもしれない。

その些細な出来心は森の季節を奪った。
そして──

きまぐれな案内人が森の道を閉ざし、
ささやかな冷気は融けることのない
凍てつきとなる。

森の知恵者は自らの辞書に新たな項目を
書き足して、悪びれなかった。

やがて森は何者も寄せ付けぬ場となり、
ついには忘れ去られた。

[アイシャ]
私が望んでいたものは、
これじゃない……。

それは彼女も理解できた。

けれども理解できたからと言って、
再び春の乙女を目覚めさせる気には
ならなかった。

それはいまよりももっと悲しいことに
思えたからだ。

すると暖かい風が吹いた。
森が長い間失っていた風。
それに色彩も。

[アイシャ]
あ。桜……。

  [フィオナ]
  おはよう、アイシャ。

  [フィオナ]
  おやすみ、アイシャ。

冬の乙女は、
かつて自分の名を呼ぶ者が
あったことを思い出す。

一年に一度、せわしなく交わされる
「おはよう」と「おやすみ」

彼女は自分をとらえる悲しみの理由が
ようやくわかった気がした。

  [フィオナ]
  アイシャ。また次の春に会おうね。
  きっと、きっとだよ。

  [フィオナ]
  それまで……おやすみ。

[アイシャ]
ごめんね、フィオナ。

[アイシャ]
私の名は"終わり"であり、"死"であり、
"悪"なの。ごめんね。

舞い落ちる桜の花びらは、
彼女の傍までくると枯れていった。

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古の森の千年桜 〜 千年桜の少女

←中級:森の案内人

マツリ・サガミヤ.jpg

小さい頃、おばあちゃんが私のことを幸せだ、
と言ってくれました。

年に一度、春を祝う春日祭では、
毎年17歳になる巫女が
桜花の儀の御勤めを担う。

ちょうど千年桜が開花の時を迎える年、
私は17歳になる。

だから幸せだ、と。

そして私は御勤めに選ばれた。

[ツツジ]
きっと咲く。
千年桜が私の願いを叶えてくれるんだ。

[ヤヤコ]
それもいいけど、ツツジちゃん。
今日も桜花の儀の練習遅れたでしょ。

[ヤヤコ]
そっちの方が大問題なんだよ。

[ツツジ]
大丈夫、大丈夫。
御勤めは絶対成功させるから。

[ツツジ]
ヤヤコちゃん、
昨日言ったこと覚えてるよね?

[ヤヤコ]
黒猫を連れた魔法使いが桜を咲かせて
くれるって話?

[ツツジ]
うん。それ、私が夢で見た魔法使い。
私、いまからその人を探しに行こうと
思ってるんだ。

[ツツジ]
ヤヤコちゃんも一緒に魔法使いを
探しに行くでしょ?
儀式の時、桜咲いた方が良いもんね?

[ヤヤコ]
それ、三日続けて遅刻した後に言うこと?

[ヤヤコ]
夢で見たとか、桜が咲くとか、
……どうでもいいよ。

[ヤヤコ]
私、ちゃんと練習がしたい。
せっかく踊り手として選ばれたから、
立派に御勤めを果たしたい。

[ヤヤコ]
ツツジちゃんは、そういうこと考えないんだね。

[ツツジ]
や。違……。

[ヤヤコ]
私はこの日のためにずっとずっと努力してきた。
それがツツジちゃんのせいで台無しになったら。

[ヤヤコ]
私、ずっとツツジちゃんを許せないと思う。

[ヤヤコ]
桜の花なんてどうでもいい。
ツツジちゃん、迷惑だよ。

夢では、暗くて冷たい森の中で、
女の子が濃い影たちに囲まれて眠っていた。

きっとあの子は千年桜だ。
私は自然とそう思った。
間違っているなんて微塵も考えなかった。

二日続けて同じ夢を見た次の日。
同じ夢の中に黒猫を連れた魔法使いの
後ろ姿が見えた。

[ツツジ]
だからその黒猫を連れた魔法使いが、
きっと千年桜の花を咲かせてくれるはずだよ。

[マツリ]
……ツツジ、ごめんね。
春日祭の時……それは勝負の時なの!

[マツリ]
千年に一度咲く千年桜。
今年は花が咲くという千年に一度の年。

[ツツジ]
じゃあ……マツリちゃんも花咲いた方が
いいよね?

[マツリ]
それは違うわ、ツツジ。
花なんてどうでもいいの。

[マツリ]
重要なのは物語よ!
人は物語にお金を払うの。

[マツリ]
幼い我が子に千年に一度の光景を見せようとする
親たち。……素敵。

[マツリ]
人生の想いでに、と千年に一度の花を見に来る
老夫婦。……素敵。

[マツリ]
千年に一度の花の下で永遠の愛を誓いあう
恋人たち。……とても素敵。

[ツツジ]
ま、マツリちゃん?

[マツリ]
みんな、千年に一度の物語を信じてやってくる。
とても……とても多くの人たちが!

[マツリ]
まさに一攫千金!
この機会に巡り合えた幸運に……

[マツリ]
私に流れる商家の血が! 魂が!
──滾る!!

[ツツジ]
お、ぉうん。

[マツリ]
サガミヤの者にとって祭りは試練の日なのよ。
売って売って売りまくる。それしかないの。

[マツリ]
そういうわけだからツツジ。
魔法使いとか言ってないで大人になりなさい。

[マツリ]
私はもう行くね。
タイム・イズ・マネー。

[ツツジ]
……。

  *  *  *

でもそんな話、誰も信じてくれなかった。

夢ばかり見るな。そんなふうに言われた。

夢見ることはそんなにいけないんだろうか?

気づいたら私は桜の木の前に立っていた。
小さい頃からやっていたように、
私は木の幹に手を置いて語りかけた。

[ツツジ]
あなたは千年待っても咲かない木なの?
それとも千年に一度咲く木なの?

[ツツジ]
私は信じてあげるよ。
千年に一度なんだから、信じてあげる。

[ツツジ]
でもごめん。私だけなの……

そして心地のよい春風が吹き、
私の頬に流れる涙を拭った。

たぶん私はそのまま眠ったんだろう。
夢の始まりには、黒猫を連れた魔法使いがいた。

上級:激闘!氷の女王→

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