2017年01月09日

大魔道杯 in ドルキマス 〜 エピローグ

大魔道杯inドルキマス.jpg

[ウィズ]
キミ、お疲れ様にゃ。

きみもウィズにお疲れ様、と言って、
大きく息を吐いた。

あたりは熱狂の余韻に包まれている。

[ウィズ]
これからディートリヒのところに戻るにゃ。

わかってるよ、と君は言う。

散々な目に遭ったけれど、
今、戻る場所はひとつしかない。

だからこうしてその道のりを歩いている。

[ウィズ]
こんな大変な思いをするのは
当分は勘弁してほしいにゃ。

君は、そうだね、と口にした。

ほどよい疲労感に体を委ねながら、
だけど少しだけ軽い足取りで、
君とウィズは帰路についた。

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posted by yamanuko at 23:51| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

暁の千鬼夜行 ミオ・ツヅラオリ

ここは和ノ国。
カラッと晴れた青空の下、街道脇の茶屋で、ミオ・ツヅラオリは大いにはしゃいでいた。
「ハヅキさんハヅキさんハヅキさん!!」
彼女が話しかけているのは、大量の剣を抱えた女剣士。名をハヅキ・ユメガタリと言う。
「はい、はい、はい……」
心底面倒くさい、と言わんばかりの表情で団子をぱくつきながら、ハヅキは呼ばれた名前の数だけ返事を返した。
「で、ミオ。なんか用か? あと呼び捨てで良いって何度も言ってんだろ」
「あわわわわ……!!」
「は? ……いや、だから何の用なんだよ」
「ハヅキさんに名前を呼ばれました……! 名前を呼ばれました!!」
隠す素振りも見せず、ハヅキはめんどくせぇー、とわかりやすく顔に出しながら大きなため息をついた。
二人が知り合ったのは、およそひと月ほど前。あらくれ者たちに絡まれていた彼女を、ハヅキが気まぐれに助けたことから、ミオのつきまといに近い絡みが続いている。
彼女はその体験により、ハヅキに憧れて剣を習い始めようとしたが、たくさんの剣を腰と背中に差したら身動きが取れなくなってしまったため、しぶしぶ都の魔学舎へ入学し、現在に至っている。
「私を助けてくれたハヅキさんには、本当に本当に感謝してます! ありがとうございますハヅキさん!」
真正面から感謝の言葉を受け、ハヅキは一瞬きょとんとしてから、唇を尖らせて少し頬を赤くした。
「だ、だからよ、呼び捨てで良いって。さんとか様とかそういうのくすぐってぇんだよ」
「いーえ! 命の恩人を呼び捨てになんてできませんよハヅキさん!」
「はぁ……まったく、勝手にしろぃ」
「ふふっ、なるほどー。ハヅキの弱点みーっけ」
ぷいっと横を向いたハヅキの横に、盆に乗せた団子とお茶を運んできたのは、ツバキ・リンドウ。彼女は団子とお茶を二人に渡すと、上品にハヅキの隣へと腰掛ける。ちょうどハヅキを挟むような形で、長椅子には女子三人が並ぶ形になった。
「それで、ミオちゃん。魔学舎での勉強は順調?」
「あ! それはもう順調です順調です!」
ミオはツバキにそう言うと、グッと力を込めて、魔力を手に集める。それから空中にするすると模様を書くと、そこからぽん、と小さなカエルが現れた。その額には、今しがたミオの書いた模様がついている。
「おおー、すごいわねミオちゃん。ねえ、ハヅキ。カエルよカエル」
「ヒィ!」
「ん? どうしたんですハヅキさん」
「い、いや……カエルは苦手なんだよ……」
「えー、可愛いじゃないですか可愛いじゃないですかぁ」
そう言い、次から次へとカエルを召喚していくミオを見て、だんだんとハヅキの顔色は真っ青に変わっていく。
ツバキはそんなハヅキを見てイタズラな笑みを浮かべると、彼女の耳にこうつぶやいた。
「ゲコッ」
「ぎゃーー!! いーーーーやーーーー!!」
ハヅキの叫びとともに、トンビがひとつ高く鳴き、さらにそれを合図にしてハヅキは全力疾走を始める。
「あーん! 待ってくださいよハヅキさんハヅキさーん!!」
ミオはハヅキを追いかけ始め、その様子を眺めながら、ツバキは残された団子を黙々と食べていた。
「今日も平和ねぇ……」
和ノ国の空は、今日も今日とて、青く、高い。彼女たちの日常は、これから先も、まだ続く。

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 23:34| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

二輪の銀閃花 ツバキ&ハヅキ

城下の西はずれ、刈り取りを待つ田圃を越えた丘の麓に、その屋敷はあった。
よく手入れされた道がまっすぐ突き刺さる門には「リンドウ」と書かれた表札があり、斜めになっているそれを直しながら、屋敷の主であるツバキ・リンドウはため息をついた。
「立ち寄る時は、手紙のひとつくらい寄越してね、とあれほど言いましたよね」
「悪い悪い、ちょっと近場で用事があってな」
ムスッとした表情のツバキに対し、満面の笑みを浮かべているのは、友人のハヅキ・ユメガタリ。背中と腰に差した無数の剣を自慢気に鳴らしながら、彼女は無作法に屋敷の敷居をまたいだ。
「勝負事はほどほどに、そのうち身を滅ぼしますよ?」
歩きながらハヅキの剣を受け取り、ツバキは不満げに口を尖らせる。
「それに何ですかその格好は。あなたは器量はいいんですから、おしとやかにしなさいとアレほど」
「だーっ! わかったわかった、とにかく、今は眠くて仕方ないんだ、客間借りるぞー」
「……もう!」
飄々と身を躱すハヅキに、ツバキは地団駄を踏む。だが、ツバキはふっとその表情を柔らかくし、思い出すように空を仰いだ。
「……ホント、台風みたいな人なんだから」
ツバキは、ハヅキが初めて道場に来た時のことを思い出す。
剣の道を極めんがため、道場破りをしに来たあの頃のハヅキは、それこそ抜身の刀のように気を立たせていた。今では、あの頃のハヅキのことが少し懐かしく感じる。


「んが……」
「寝てるし」
客間へと向かったツバキは、勝手に出された布団の上で大の字になっているハヅキを見て、本日二度目のため息をついた。脱ぎっぱなしになっている服を畳みながら、ツバキは眠ったままのハヅキに話しかける。
「まったく……お腹出して寝てると風邪ひきますよ?」
「んー……」
「ヨダレたれてます」
「んあ……?」
「目が半開き。かわいくないです」
「あー……」
まるで母親のように話しながら、ツバキはテキパキとハヅキの周辺を片付ける。この片付け好きも性分だなぁ、と思いながら、ツバキが次の仕事にかかろうと立ち上がった──その時だった。
「おい、ハヅキとかいう女剣士はここに居やがるか!」
響く怒号。察するに玄関の門からこの大声は聞こえている。同時にバタバタと誰かが屋敷へと入ってくる音も聞こえた。しかも土足で。
「……ハヅキ、お客様がいらっしゃってるわよ、あなたに」
「待ってました!」
バタバタと騒がしい足音に反応したのか、ハヅキは素早くヨダレを拭くと、着のまま剣の束を掴み部屋を飛び出す。
それを見て、ツバキは三度目になるため息をつくのであった。

庭へと飛び出したハヅキに向け、屈強な男たちが数名で睨みを利かせている。頭目と思しき男は一歩前に出ると、そのままの勢いで剣を抜いた。
「おいテメエ! 昨晩は色々世話になったな! ウチの若いもんをシコタマぶちのめしやがって!」
叫ぶ彼の顔には、目のあたりを横切る真新しい青あざがクッキリと残っている。おそらくは刀の鞘で思い切り殴られたのであろう、ツバキはその跡を眺めたあと、ハヅキをジットリと睨んだ。
「あれ、やったの昨日のあなたでしょ」
「先に光りモン抜いたのは向こうだ。自業自得ってヤツ?」
「あきれた」
「喧嘩はこの街の華だぜ、楽しめよツバキ!」
言いながら、ハヅキは自慢の剣たちを空へ撒く。ひとつひとつの剣はひとりでに鞘から抜け出ると、意思を持ったようにハヅキを中心にして放射線状に地面へ突き刺さった。
「本当、いつも騒がしいんだからハヅキは」
その刃の円の中へ、ツバキは言いながら音もなく足を運ぶ。腰に下げた長大な剣を一息で抜き放ち、その切っ先を男たちへ向けた。
「……やろうってのか。こっちは十人は居るんだぜ」
「こっちだって十本くらいは剣がある。一人一本ずつ相手してやろうか」
「めっ、挑発しないの。弱い人ほどよく吠えるんだから、そっとしておいてあげなさい」
「はーいツバキ先生」
「〜〜ッ!! やっちまえ!!」
激高した頭目の合図とともに、飛びかかる数名の男。だが、剣を構え、互いに背中を預けたハヅキとツバキに、切れぬものは無い。
「行くぜツバキ、遅れんなよ!」
「ハヅキこそ、私の間合いに入らないで欲しいですね!」
庭のけやきの木は、赤い葉をつけ始めている。そんな秋めいた騒がしいリンドウ屋敷の庭で、二つの銀閃がきらめいた。

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 23:32| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

賀正の花喧嘩 ハヅキ・ユメガタリ

「んが……」
朝、雀が鳴き始める頃、ハヅキ・ユメガタリは行きつけの小料理屋で目を覚ました。
それを見て、小料理屋の大将はぬるいお茶漬けをハヅキの前にドンと置く。
「あー、悪いなぁ朝飯まで作ってもらって。漬物くれよ」
「サッサと帰れって意味なんだけどな?」
「いいから漬物くれよ、塩味がねぇとそもそも箸が進まねぇだろ」
 言いながら、ハヅキは箸でチンチン、と皿を叩く。大変行儀が悪い行為であるが、もう大将はそれを止める気すらない。
「つーけーもーのー!」
「あぁもう、うるせーな! 新年だってのに全くよぅ……」
 ぼやきながら、ぬか床を漁る小料理屋大将。その次の瞬間だった。
「新年ン!?」
 叫び声とともに椅子を跳ね飛ばし、さらに腰に下げた刀の柄を机に引っ掛けぶっ倒し、手を付けていないお茶漬けを周囲にまき散らしながら、ハヅキは勢い良く立ち上がった。
「うわぁ馬鹿野郎! 冷や飯とはいえ食いもん粗末に──」
「大将、折り入って頼みがある」
 ハヅキは突然真剣な表情になり、大将を見据えて言う。その豹変ぶりに、彼はゴクリとツバを飲んだ。
「お、おう……なんだよ急に」
「……ツケといてくれ!」
「お前ぶっ飛ばすぞ! 待てコラァ!」
 大将が止める間もなく、ハヅキは入り口の扉を勢い良く開け、賭場の方向へと全力で走り始めていた。彼女の目的は賭け事ではない、そこで行われる──

「喧嘩だァ!」
叫び声とともに、賭け事長屋から勢い良く飛び出してくる男たちの集団。集団は外に出るとふたつに別れ、互いが互いを睨みつけた。片方は町人連中、そしてもう片方は入れ墨をいれたあらくれ者たちだった。
「おうおう、新年一発目の運がねえからって突っ掛かるとはどういう了見だァ?」
 賭け事長屋の元締めである『みずち屋』両右衛門が大見得を切りながら、町人たちへと大きな声を上げる。 
「何言ってんだ、サイコロ4つのチンチロなんか聞いたことねえぞ!」
「そうだそうだ! お前ら下手くそなんだから素直にサイコロ振ってろ!」
 いつもの調子でヘタなイカサマがバレたのだろう、そんなヤジが大きく飛び、両者の間に熱が入り始める。責められ続け、涙目になった両右衛門は腕まくりをすると、ついに喧嘩の口火を切った。
「いい加減にしやがれ! こうなったらやってやらぁ!」
 あらくれ者たちは一斉に短刀を抜き放ち、町人たちにその切っ先を向ける!

 だが、その時!

「その喧嘩買ったーー!!」
 群衆を飛び越え、両右衛門の前に飛び出てきたのは、ハヅキ・ユメガタリ!
「待ってましたァ!」
「来ると思ってたぜハヅキちゃーん!」
 町人たちの声を背中で受け、腰の剣をシャランと抜くと、ハヅキは両右衛門にニヤリと笑いかける。
「あけましておめでとう、みずち屋!」
「て、てめえ急に出てきて何様のつもりだ!」
「お年玉ください!」
 ハヅキのあっけらかんとした答えに、ついに両右衛門の堪忍袋の緒が音を立ててキレる。
「ふっざけんな、おめえら、やっちまえ!」
「おおおお!!」
 こうしてハヅキの新年はみずち屋相手の大喧嘩で始まった。

ちなみに、両右衛門が目のあたりを横切る盛大な青あざを作り、喧嘩疲れした彼女がリンドウ屋敷に行くのは、もう少しあとのこと。

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 23:29| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

暁の雪月花 ハヅキ・ユメガタリ

剣の道を極めるため、故郷を飛び出したのはもう何年も前のこと。
いくつもの道場を訪ね、師範を打倒し、看板を叩き割り……ただ「最強」の座を追い求め、生きてきた。

異界「和ノ国」で異能の剣士として畏れられるハヅキ。
八の刀を自由自在に振りこなし、千の敵を瞬く間に斬り伏せ、己の百倍ある背丈の怪物ですら無数の欠片に刻み斬る。
一人歩きした噂は尾ひれはひれで豪華絢爛、いつしか彼女は都で知らぬ者のいない存在となっていた。

そんなハヅキにもただ一人、互角と認める存在がいる。
稽古場へ土足で立ち入ったハヅキをたしなめ、道場破りの決闘を正面から受けて立ち、臆すことなく真剣で斬り結んだあの女。
夕闇から暁まで斬り合ってすら決着つかず、二人同時に大の字で倒れ込んだあの日のことを、彼女は今でも強烈に覚えている。

そう、思えば「ワカ」なる遊びもあの時初めて教わったのだ。

「春の夜に 揺れる貴様を 微塵切り! ……いや、何か違うな……?」

剣の力は互角でも、「ワカ」の技術が追いつくその日は──たぶん、来世になりそうだ。

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posted by yamanuko at 23:27| Comment(0) | メインストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紅赤に彩る恋花 ツバキ・リンドウ

「はい、これ、ツバキにプレゼントだよ」
異邦の友人エトワールは、そう言って綺麗な小箱を私に差し出しました。
「ありがとう! たしか……『ばれんたいん』っていうんだっけ?」
「そうそう。大切な人に『チョコレート』を贈る日さ」
『ばれんたいん』に『ちょこれいと』……。
異国の言葉には、いつも独特な響きがあって、その不思議な風情に、私はいつも興味をそそられます。
「よかったらツバキも、誰かにチョコを贈ってみたらどうかな?」
「そうね……私もやってみようかな!」
誰かに贈る──そう言われて私の脳裏に浮かんだのは、喧嘩っ早い、めんどくさがり屋の顔でした。

私は、エトワールから教えてもらって作った『ちょこれいと』の箱を手に、あの子──ハヅキの姿を探します。
……あ、いました。
「お、ツバキじゃねーか。なんだ、アタシと果し合いでもしに来たのか?」
開口一番、物騒なことを言って不敵な笑みを浮かべるハヅキ。
「それはまたの機会にでも。今日はあなたに……」
私は、丁寧に梱包した箱をハヅキに見せました。
「なんだこれ? ……アタシにくれるってのか?」
「はい。今日は『ばれんたいん』といって、友達に『ちょこれいと』をあげる日なんですよ」
私の言葉に、ハヅキはきょとんとした様子で、
「ばれ……? ちょこれ……? はあ……お前って、ほんとハイカラなモンが好きだよな」
「まあ、そう言わずに。とても美味しいですよ」
「んじゃ遠慮なくもらうぜ。ちょうど小腹が空いてたとこだしな!」
ハヅキは、私の手から『ちょこれいと』の箱を奪い取ると、乱暴に包装を破り、中の『ちょこれいと』を鷲掴みにします。
「あ、こら! そんなに一気に食べたらもったいないじゃない!」
「うっさいなー、どう食おうとアタシの勝手だろ?」
そう言ってハヅキは、鷲掴みにした『ちょこれいと』を、まるでおにぎりを食べるかのように、一気にパクパクと食べ始めてしまいました。
「おお、案外うまいじゃねえか! ちょっと甘すぎる気もするが、これはこれで……うぐっ!?」
「ハ、ハヅキ!? どうしたの?」
するとハヅキは、みるみる顔が赤くなっていきました。
「な、なんひゃこれ……妙に、酔ってひたぞ……きゅう……」
「ハヅキっ! い、一体どうして……あ!」
そこで私は、エトワールから教わった材料である「洋酒」を、多めに入れたことを思い出しました。
あの洋酒、とても美味しかったからついたくさん入れちゃったけど……さすがに多すぎたかな?
ひとまず私は、酔ったハヅキを膝枕しました。
しばらくして、ようやく酔いが醒めた様子のハヅキは、
「……あ〜、ひでえ目にあったぜ」
「う……ごめんなさい……」
私が謝ると、ハヅキはおもむろに口を開いて、
「……なあ、その、ちょこなんとかってやつ……ダチにあげる菓子なんだって?」
「ええ、そうですよ。エトワールからそう教わりました」
「ふ〜ん……そっか」
それだけ答えると、ハヅキは何やら考え事をはじめ、ぽつぽつと言葉を紡ぎます。
「……あいにくアタシは、ちょこなんとかを持ってねえから、お前にやれるものはない」
別にお返しを期待してたわけじゃないけど、そんなはっきり言わなくてもいいじゃないですか……。
「……だから今度、アタシの行きつけの甘味処に連れてってやるよ。それで貸し借りなしな」
それだけ言って、ハヅキは私から顔をそむけました。
「もう、素直にありがとうって言えないんですか?」
「ふん、アタシがそういう柄じゃねえって、お前が一番よくわかってるだろ?」
「……まあ、そうなんですけどね」

『ばれんたいん』……たまにはこういう日もいいものね。
エトワールに感謝しなきゃ!

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ラベル:謹賀新年2017
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闇夜の閃斬/聖夜に瞬く斬煌 ツバキ・リンドウ

異界「和ノ国」より舞い降りし剣姫

春の夜に
赤椿一つ
ここに咲く

  *  *  *

年の暮れ、深く白雪の積もった、とある夜。
吐く息が凍りそうな夜気の中、華やかな衣装をまとった人影二つ。

異界「和ノ国」に、今年もこの季節がやってくる。

宮廷で初めて催される聖なる夜の遊宴。
煌びやかに彩られた広間、異国から招かれた「おーけすとら」の演奏、着飾った紳士淑女が優雅に踊る「だんす会」……

生まれて初めて届いた招待状。
ある幼き天才魔道士が教えてくれた遊宴の内容は、どれもツバキの心を躍らせる。

高まる鼓動を抑えきれずに、ツバキは軽やかに走り出す。

「ほら、早く行こうっ。遅れたら……一刀両断だよ!」

宮廷から、「りはーさる」の旋律が聞こえてくる。
一夜限りの夢の舞台が今、幕を開く──

  *  *  *

聖なる夜の遊宴も終幕を迎え、帰路につく人影二つ。

冬の夜の寒さも忘れて微笑みあう二人。
「おーけすとら」が奏でた音色は、今もまだ余韻となってツバキの心を離さない。

「また、来年も一緒に……だよっ」

踊るように舞うように、歌を口ずさみながら……。
幼き魔道士の指先が描く"光の軌跡"は、いくつもの色鮮やかな紋章を空に描き出す。
粉雪舞う夜空の街で、幻想的な輝きがツバキを包む。

特別な夜は、もう少しだけ続く──

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 23:24| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

陰と陽を司る者 トウマ・アマノ

絹のように柔らかく長い髪に、涼しげな眼差し。
透き通るように長く伸びた指先には、輝き放つ1枚の護符。

流麗な動きで護符に念を込め、己が法力で魔を払う。
彼の者は"人々に害なす闇の一族「鬼」"と戦う討伐者が一人。

「さぁ、お仕置きの時間です」

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謹賀新年2017 キュウマ編 〜 鬼斬りキュウマの大一番

←「赤火」

湯屋の暖簾をくぐり、キュウマは番台に
一言告げる。

[キュウマ]
「鎌鼬」だ。

景気の好い返事とともにこっそりと渡された
木札を持って行くと、奥の間に通される。

そこで待っていた人物にキュウマはひとつ
頭を下げてから始めた。

[キュウマ]
トウマ、湯屋で会うのが、
都では流行っているのか?

トウマ.jpg

[トウマ]
そう言わないで下さい。
アマノ家の指揮をまたぐよりも、
人目につかないでしょう。

[トウマ]
湯屋なら誰が来てもおかしく
ありませんからね。

[キュウマ]
面倒なんだよ、当主様は。
それよりも本題を。

[トウマ]
そうですね。

途端、世間話の時間は終わって、
お互い仕事の眼になる。

[トウマ]
最近、都の所々で小さな鬼門が開く事件が
起こっています。

[トウマ]
そう簡単に鬼門が開くわけもなく、
誰かが開いているとしか考えられない。

[キュウマ]
赤火か……。

[トウマ]
確かな証拠はありません。
ですが、おそらくは。

[フウチ]
俺たちは「鎌鼬」だ。
匂いでわかる。

[フウチ]
俺の鼻は赤火の匂いを感じるぜ。

[キュウマ]
俺もそう思う。

[トウマ]
そうですか。
ではもう少し調べましょう。

[トウマ]
この時期に事を起こして欲しくないですね。

差し迫る年の終わりと新年の始まりを指す
トウマの言葉を、キュウマは否定する。

[キュウマ]
だからそこあいつは動く。

遠くに響く年の瀬の喧騒の中に、
あの夏の祭り太鼓が混じって聞こえた。

最後に聞いた里の音色を。

  *  *  *

[フウチ]
相棒、赤火はどう出ると思う?

[キュウマ]
あいつは追われる身だ。

[キュウマ]
俺たちはおろか他の討伐者たちからも
命を狙われている。

[キュウマ]
だからこそ、一番目立つ時期に事を
起こしてくるはずだ。

[キュウマ]
あいつなら、大晦日の夜を狙う。
大晦日の人の集まる場所で鬼門を開く。

[フウチ]
社なら人はわんさかいるな。

[キュウマ]
ああ。俺たちがそう読んでくることも承知の上だ。

[フウチ]
つまりこれは俺たちを誘ってるってことだな。

[キュウマ]
そうだ。里を守れなかった俺たちへの当てつけだ。

[フウチ]
……ったく趣味が悪いぜ。どうすんだ?

[キュウマ]
もちろん、赤火が売ってきた喧嘩を買う。
守れなかったモノを守ってみせる。

決意の言葉にフウチも黙って頷いて見せた。
ふと、長年の相棒に尋ねておきたいことを
尋ねてみる気になる。

[フウチ]
なあ、相棒。

[フウチ]
赤火のヤツ、どうして里一番の使い手である
お前を生かしたと思う?

[フウチ]
命を狙われるには、もっとも厄介じゃねえか。

[キュウマ]
里を襲うために、
俺を里から離したかっただけさ。

そんなことを訊きたいわけではなかった。
宿敵と戦うために、本当に必要な答えを
フウチは求めていた。

[フウチ]
兄弟だから……とは思わないのか?

[キュウマ]
……思わない。

[キュウマ]
仮にそうだったとしても、俺はあいつを殺す。

  *  *  *

大晦日の夜、気の早い初詣客で
すでに参道は埋まっていた。

[フウチ]
相棒、どうする?

[キュウマ]
片隅でその様子をみつめるキュウマ。
その肩に乗るフウチが心配して囁いた。

[キュウマ]
俺たちは「鎌鼬」だ。

[キュウマ]
姿を見せず、人に知れず。
鬼を斬る。

[キュウマ]
それだけだ。

風が参道を吹き抜けた。

  ◆  ◆  ◆

(道中)
負けてられないにゃ。

「鎌鼬」は眼にも止まらぬ速さで走り、斬った。

年明けを告げる鐘の数は半分を過ぎていた。

徐々に増える鬼を、参拝客に気づかれぬ間に
始末する。

終わりも見えず、たったひとりで全てに
対処するのは至難の業である。

徐々にキュウマも疲れが見えてきた。

[キュウマ]
はぁ、はぁ……。

[フウチ]
相棒、こりゃなかなか酷だぜ。

[キュウマ]
言うな、フウチ。
最初からわかっていたことだ。

[フウチ]
だけどよ、鬼門を閉じても閉じても
次から次に開きやがる。

[フウチ]
参拝客を守りながらじゃ、無理だぜ。

もう一仕事、鬼を斬りに行こうと
一歩踏み出して、背後の気配に気が付いた。

[ハヅキ]
いやいや、やたら殺気混じりの風が吹くと
思ったら、お前かよ。

[ハヅキ]
喧嘩なら手伝うぜ。
この前の借りもあるからな。

[キュウマ]
これは俺の戦いだ。
加勢は無用だ。

[ハヅキ]
生憎、ここはアタシの街だ。
遠慮は無用さ。

[ミオ]
無用ですよー。

[ツバキ]
私もハヅキも、あとミオも。
ここで黙って引き下がるなんてできませんよ。

[フウチ]
相棒、どうやら我を張るのはやめた方が
いいかもしれないぜ。

[キュウマ]
わかった。それなら参拝客の安全を。

[ハヅキ]
よし、きた!
だけど、見かけた化けもんは
切り捨てていくぜ?

[キュウマ]
勝手にしろ。

その言葉を聞いて、剣士は散っていく。

[キュウマ]
よし、フウチ。
この場の鬼門を一気に閉じるぞ!

[フウチ]
任せな相棒!

  ◆  ◆  ◆

(クリア後)

年越しも徐々に近づいてきて、
鐘の音も百を超えた。

いまだ大小さまざまな鬼門が開き続けていた。

キュウマたちが閉じても、すぐに新しいのが開く。

堂々巡りに際限のない戦い。

剣士たちに託した参拝客の方もどこまで持つか
わからない。

そんな状況に、キュウマは笑う。

[キュウマ]
勝ったと思うか、赤火の?

最後の鐘の音が鳴り終わると、
月がいつもより青い光でキュウマを照らした。

その夜の月は、見事な満月。

毎年、訪れる十二回の満月よりも一回多い
十三回目の満月である。

その満月は年を跨ぐ瞬間にだけ、
青い光で輝いた。

この夜、普段以上にツクヨの神の力が満ちる時。

特に蒼火と呼ばれるキュウマの炎に、
青い月の力はとりわけ大きく作用する。

最初からキュウマの勝負は
この一瞬に賭けられていた。

[フウチ]
こいつのために大掛かりな普請をしたんだ。
充分、ご利益いただこうぜ。

[キュウマ]
もちろんだ。

キュウマは特殊な札を自分の周りに配置する。

[キュウマ]
五光!

[キュウマ]
桜に、月に、雨、鶴、鳳!

配置した札が発する蒼炎が、
あたりの餓鬼どもを飲みこんでゆく。

[キュウマ]
行くぞ、フウチ。

[フウチ]
任せろ相棒!

フウチの巻き起こす風の刃が、
蒼の炎をさらに遠くに運んでゆく。

[キュウマ]
魂絶法!

[ふたり]
無塵!

突風が運ぶ退魔の炎が、
鬼門を閉じたり開いたりさせる
不安定なその場の妖気を一気に消し飛ばした。

[キュウマ]
赤火の、これが俺の答えだ。

  *  *  *

夜が明け、今年初めての日が
冷たい空気に透き通るように輝いていた。

[ハヅキ]
はっくしょん! いやあ夜通しの喧嘩は
流石に骨身を冷やすぜ。

[ツバキ]
もう荒っぽいんだから。

結局、参拝客は8本の刀を振り回すハヅキを見て、
ほとんど逃げてしまった。

皮肉なことにそれが幸いして、
参拝客に被害はなかった。

[ハヅキ]
キュウマのヤツ、どっか行っちまいやがった。

[ツバキ]
そういう性分なんでしょ。
さ、私たちも元旦を祝いましょ。

例年以上に人のいない参道に風が吹く。

風は都を見下ろす山の上に吹き抜けていった。

[フウチ]
相棒、赤火は見つからずじまいだぜ。

[キュウマ]
ならまた探す。

[キュウマ]
それだけさ。

風はやむことなく、吹き続ける。
赤い火を追い、いつでも、どこでも。

そう決められていた。

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 23:04| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

謹賀新年2017 キュウマ編 〜 「赤火」

←それを「鎌鼬」という

その日、キュウマとフウチは人里に鬼が出た
という報せを受け、その場へ急行していた。

[フウチ]
嫌な予感がするぜ、相棒。

[キュウマ]
お前はいつもそういうじゃないか、フウチ。

キュウマの肩に乗ったフウチは後ろを振り返り、
太鼓や笛の音が遠ざかっていくのを聞いた。

[フウチ]
里が祭りの最中だってのに廻番だ。
嫌な予感しかしないぜ。

[キュウマ]
こういう時のための役目だ。
今日はたまたま運が悪かったのさ。

たまたま運が悪かった。

勝負の世界に運の良し悪しはない。

キュウマはそのことを忘れていた。

  ◆  ◆  ◆

報せにあった里に、人影はなかった。

[キュウマ]
どういうことだ。

里の家々の戸は開け放たれて、
土間の向こうにねっとりとした闇が見えた。

フウチがすんすんと鼻を鳴らして、
風の匂いを嗅ぐ。

[フウチ]
血の匂いがする。乾いた血の匂いだ。

フウチの鼻は犬よりも鋭く、
特に血の匂いには異常な反応を見せる。

血を好む鎌鼬の習性である。

[キュウマ]
どのくらい古い?

[フウチ]
昨日今日の話じゃねえ。

[キュウマ]
それなら俺たちは……。

木々が揺れた。
夏の湿った風が獣に似た匂いを運んでくる。

キュウマとフウチには覚えのある匂いである。

この匂いを追うのが自分たちの仕事だ。

[キュウマ]
それなら俺たちは、罠に嵌められたってことか。

匂いとともに流れてくるぬるい風が、首元に
まとわりつく。

死の気配が首を絞めるように。

  ◆  ◆  ◆

[フウチ]
喰らいやがれ!

フウチの鎌が鬼の顔を風のように撫でる。
するときれいに傷がぱっくりと開く。

悶える鬼の死角にキュウマが滑り込む。

[キュウマ]
鬼よ、去れ。

横一文字に薙ぎ払われた大鎌が、
その刀身に刻まれた「滅」の文字通りに、
鬼の体を両断し、滅した。

[フウチ]
やったな、相棒!

[キュウマ]
フウチ、浮かれるな。

[フウチ]
わかってるって……。
胡散臭くて騒ぐ気にはなれねえ。

[キュウマ]
鬼門が開いていた。しかも人の手でだ。

誰がやった? 考えられるのは自分たちと同じ
退魔の仕事をする者だ。

専門の知識が無ければ鬼門を開くことは不可能だ。

頭の中にあらゆる可能性が渦巻き、
脳髄をかき混ぜる。

その嵐の終わりを告げたのは、
遠くに上がった大きな赤い火柱だった。

[フウチ]
キュウマ! ありゃあ……!

[キュウマ]
ああ……。里だ。

赤い火柱が、
ひとつの答えをキュウマの心に刻みつける。

[フウチ]
キュウマ! 里が、里が……!

里を焼く炎を見て、
キュウマは心に刻みつけられた
名を呟くことしか出来なかった。

[キュウマ]
赤火……。

キュウマたちが駆けつけた時には、
里の全てが燃やし尽くされていた。

生き残っている者は誰もいなかった。

燃え残った柱に打ち付けてあった紙片には
こう書かれていた。

通う血と 同じ鬼火のあかよろし
赤い蝶舞う 青きふるさと

  *  *  *

ミオ.jpg

[???]
ハヅキさーーん!
ハ ヅ キ さーん!


少女が大声でハヅキの名を呼びながら、
駆けつけてくる。

往来の注目を集めるその姿を見て、
ハヅキは片手を額に当てた。

[ハヅキ]
おい、ミオ。やめろ。

抱きつこうとする少女の顔面を掴んで、
その勢いを止める。

[ミオ]
ふえぇぇー、どうしてですか?

顔を覆われたまま、少女は尋ね返す。

[ハヅキ]
子供じゃないんだぜ。

ツバキ.jpg

[???]
久しぶりにハヅキが帰って来たから、
ミオもうれしいのよ。

[ハヅキ]
ツバキ、お前までやめてくれよ。

[ツバキ]
ところで、この方は?

[キュウマ]
キュウマだ。
ハヅキとは妙な縁から道連れとなった。

[ツバキ]
ツバキ・リンドウです。

[ミオ]
ミオでーす。

[ハヅキ]
どうだ、キュウマ。
どうせ宿のあてもないんだろう。

[ハヅキ]
しばらくの間。
ツバキのうちに世話になったらどうだ?

[ハヅキ]
安心しろ、アタシも世話になってる。

[キュウマ]
いや、遠慮しておこう。
俺たちが社に泊まるのにも訳があるんだ。

[ハヅキ]
そう言や、そうだったな。

[キュウマ]
それにまずは湯屋に行かないといけない。

そう言って、キュウマはその場を立ち去った。

[ハヅキ]
なんだ、えらくきれい好きじゃねえか。

鬼斬りキュウマの大一番→

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 23:03| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

謹賀新年2017 キュウマ編 〜 それを「鎌鼬」という

風が木々の間を吹き抜ける。

ひらりひらりと舞い落ちる木の葉が
風に持ち上げられて宙にとどまった。

拍子、スパッと木の葉は真っ二つに両断される。

フウチ.jpg

[フウチ]
相棒、この調子だと都に辿り着くのは
夜半を過ぎちまうぜ。

キュウマ.jpg

[キュウマ]
その様子だと休みたいようだな、フウチ。

[フウチ]
バカ言え。相棒の体を気づかってやってんだよ。

[キュウマ]
お前は優しい奴だな。

森を駆け抜けるふたりが足を止めると、
風も止んだ。

人は知らぬうちに皮膚に裂傷を負うと、
姿を見せぬ物の怪の仕業と理解する。

それと同じように姿を見せず、知られず、斬る
異能の者たちを人はこう呼んだ。

「鎌鼬」と。

ただし、彼らが斬るのは「鬼」であった。

旅に疲れた体を休めるため、キュウマとフウチは
山奥の社を訪れた。

「鎌鼬」は旅から旅と渡り歩く。
けして一つ所に留まらない彼らは
道中の社に寝泊まりすることが多い。

[キュウマ]
さて、始めるか。

[フウチ]
まずは一息つこうぜ相棒。
そう焦んなくてもここの主は怒らねえよ。

[キュウマ]
一息つかせてもらうために、
まずは仕事だ。

[キュウマ]
ここは分祀のようだが、
ずいぶん長いこと手が入っていない。

[フウチ]
まったく普請のし甲斐があるぜ。
そこらで木材を調達してくるよ。

自前の鎌をギラリと光らせ、
嫌味っぽい台詞を吐くと、
フウチは風のように山へ消えて行った。

キュウマもさっそく腐りかけた床板を剥がす。

「鎌鼬」は訪れた社の普請をするのが常だった。

それは一宿の恩とは別の理由があっての
ことである。

  *  *  *

翌日、ふたりに朝を知らせたのは、
朝陽のまばゆさでも、雀のさえずりでもなく、
見知らぬ何者かの気配であった。

察した瞬間、体を起こして傍にある得物を
手に取る。

[キュウマ]
誰かいるようだな。

ゆっくりと気配のする方へ向かうふたり。
社の戸を開けると、

[フウチ]
いるっつーか……寝てるぜ。

ハヅキ.jpg

[???]
んが……? おや? もう朝か……。

[???]
……って、なんだお前ら!?

[キュウマ]
それはこっちの台詞だ。

[???]
なんだよ……。先客がいたのか。
騒がしちまったね。

[ハヅキ]
アタシはハヅキってんだ。
見てのとおりの剣客さ。

[キュウマ]
気にするな。俺たちも客だからな。

[キュウマ]
俺はキュウマ。
こっちはフウチだ。

フウチを見て、ハヅキはおや?
という顔をする。

[ハヅキ]
妙な取り合わせだね。

[フウチ]
何か文句があるか?

[ハヅキ]
いや。アタシも人のことを言えた義理じゃねえ。
深くは問わないよ。

立ち上がり、腰や背中に8本の刀を差しながら
ハヅキは笑って言った。

[ハヅキ]
で、お前らはどこに行くんだ?

[キュウマ]
……都だ。

[ハヅキ]
お、アタシもだ。
これもなんかの縁だ。
道連れといこうじゃないか。

キュウマとフウチは顔を見合わせて、
どうしたものかと合図する。

話した限りでは、このハヅキという剣客。
豪放磊落というか、ざっくばらんというか。

あるいは大雑把というか。細かいことは気に
止めない性格のようだった。

ふたり、こくりと小さく頷いて。

[キュウマ]
ま、都までならいいだろう。

  ◆  ◆  ◆

(道中)
にゃ? 風が吹くにゃ?

ある日、旅を続けていたキュウマの元に、一葉の
紙片が舞い込んでくる。

まさきく意思を持ったように手元へと滑り込んだ
紙片を見て、キュウマは呟いた。

[キュウマ]
トウマからだ。

正確にはトウマの同門のキリエの術だが、
そこに書かれた言葉はトウマのものである。

「みやこにあかのおにびあり」

[フウチ]
なんて書かれてんだ、相棒。

[キュウマ]
……都に赤火がいる。

以来、風は都に向かって吹いていた。

  *  *  *

[ハヅキ]
で、アンタは都に何の用なんだい?

[キュウマ]
古い友に会いに行くんだ。

[ハヅキ]
なるほど明日は大晦日だ。
正月くらいにしか顔を合わせない奴も
いるからな。

[キュウマ]
……そういえばそんな時期だったな。

[キュウマ]
旅ばかりの生活で、
そういう感覚が薄れてしまった。

[ハヅキ]
良くないねえ。ま、アタシも人のことは
言えねえけどな。

[ハヅキ]
そういうのによく気がつくのが
いるから「なるほど」ってなってるだけさ。

しばらくすると、たき火で暖を取っている
連中を見かけた。

火を囲む者たちの中にはふたり揃って、
地面とにらめっこしている者がある。

皆、そのふたりの様子を見て、時には歓声を
上げている。

[フウチ]
何してんだい、あれは?

[ハヅキ]
ありゃ、野良の双六勝負だ。
面白え……。

と言って、浮足立ってその場に向かうハヅキ。

[ハヅキ]
よっ。アタシもひと勝負混ぜてもらうぜ。

と、あっという間にその輪の中に加わってしまう。
それにはキュウマもフウチもやれやれと顔を
見合わせるしかない。

しかし一刻ほどすると、
小首を傾げながら頭を掻くハヅキの姿が
輪の中心にあった。

勝負を挑んだものの、
連戦連敗でハヅキは苦り切った顔である。

気の利かない負け惜しみを言うのがやっとだった。

[ハヅキ]
イカサマじゃねえのか?
どうも話がうまくいきすぎるぜ!

もちろん元締めはそれを鼻で笑い、相手にしない。

[キュウマ]
俺に勝負させてもらってもいいか。

[ハヅキ]
お前……。

とキュウマが元締めの前に座る。
そして懐から布包みを取り出して、
目の前に置いた。

ずしりと金属的な重みをその音で知らせると、
一同の顔色が変わった。

これを聞いて、元締めも良いぜと言わざるを
得ない。

何より勝ち運は自分にあるのだから。

ところがキュウマは不敵に笑ってみせる。

[キュウマ]
勝てると思うか、アンタは?

まるでこちらを見透かすように、
ギラリとその眼が光った。

  ◆  ◆  ◆

(クリア後)

[ハヅキ]
まさかあの大勝負勝っちまうとはな。
すげえ運を持ってるじゃねえか。

元締めの泣き顔を背に、
一行は再び都へ向かっていた。

もちろん道中での話は、
あの大勝負のことに尽きる。

[キュウマ]
勝負に運はないさ。
勝てると踏んだから勝負した、それだけだ。

[ハヅキ]
馬鹿を言えよ。
賽の目は思うようにはいかないぜ。

[フウチ]
それが思うようにいくんだよなあ。

[ハヅキ]
どういうことだよ?

[キュウマ]
今朝発ったあの社。
あれは必中の神を祀る社だ。

[キュウマ]
俺たちは社に泊まる時は、
そこを普請するのさ。

[ハヅキ]
へえ、良い心掛けじゃねえか。

[キュウマ]
いや、そうすることで、
社のご利益を頂くんだ。

[ハヅキ]
ご利益を頂く?
そんなことが出来んのかよ。

[キュウマ]
俺たち一族の生きる知恵さ。

[ハヅキ]
つまり、必中の神様のご利益があったから、
勝てたのか。

[ハヅキ]
最初から価値が決まってたら、
勝負がつまらないぜ。

[キュウマ]
だが、ご利益の効果は一回だけだ。
無駄遣いはできない。

[キュウマ]
その効果を最大に利用する方法が
必要になる。

[キュウマ]
だから俺は、相手が自分に分があると思っている
時にこそ勝負を仕掛ける。

[キュウマ]
俺の戦いの常套だ。

[ハヅキ]
イカサマの常套の間違いじゃねえのか。

キュウマは懐から例の布包みを取り出し、
ハヅキに投げ渡した。

[ハヅキ]
なんだよ?
大事なもんだぜ、無暗に扱うなよ。

[キュウマ]
そうでもないさ。どこでも手に入る。
開けてみろ。

言われてハヅキは布包みの中を確かめる。

[ハヅキ]
なんだこりゃ! 釘じゃねえか!

[ハヅキ]
大したイカサマ師だよ、お前は……。

[キュウマ]
でもそれのおかげで勝てたんだ。
いろんな意味でな。

  *  *  *

やがて都が近づいてくると、
街道沿いの宿場の間隔が短くなってきた。

独特の華やいだ気配とともに、
街は年の瀬を迎えつつあった。

[フウチ]
賑やかだ。まるで祭りじゃねえか、相棒。

[キュウマ]
そうだな。

ふたりの間の「祭り」という言葉には、
別の意味がある。

空が薄暗い笠をかぶり始めると、
点々と提灯の灯りが花のように咲いた。

その花は、キュウマにある忘れえぬ光景を
思い出させた。

あれは夏の盛りを越えた祭りの夜だった。
鮮やかな花の様な赤い炎が。

キュウマの里を焼いたのは。

「赤火」→

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 23:00| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

謹賀新年2017 アーデ&メモリア編 〜 初日の出に照らされて

←怪盗アーデ

アーデは、ひとり夕日を見つめていた。

首に嵌められた魔法刑具は、
四六時中アーデを縛り付けている。

このチョーカーが外れない限り、
アーデは最愛の人と会うことができない。

名前を呼ぶことも、身体に触れることもできない。

[アーデ]
(まるで、思い出を作ることを
禁止されているみたいだ)

でも、このチョーカーを嵌められたことで、
改めて気付かされた。

[アーデ]
(この国は、僕たち落ちこぼれにはとても厳しい。
それがよくわかった)

王国への復讐……ではないが、
盗賊団をはじめたことは後悔していない。

アーデが捨てられ、育った島は、
盗みでもなんでもやらないと生き抜けない、
過酷な場所だった。

[アーデ]
(それでも……盗賊なんかに身をやつした
と知ったら、あの子は、
失望するかもね……)

しかし、アーデもいまやひとりではない。

同じように落ちこぼれの烙印を押された
子どもたちは、
アーデを頼りにしている。

今は彼らに対する責任も生じてきた。

[アーデ]
(お陰で、金貨と思い出は腐るほど貯まった。
でも、まだ足らないんだ……)

なにもない両手を見つめる。

ついこの前まで、手の中に幸せがあった。でも、
失って……。この手であの子を抱きしめることが
もうできないんだと気づいた時。

失ったものの大きさに、
改めて気付かされた。

[アーデ]
(冷たい……。
どれだけ陽に当ろうと、
僕の心は冷たいままだ……)

今はまだいい。
この先、この冷え切った心が
当たり前になってしまう日がいつか来る。

[アーデ]
(その時こそ、本当の僕は
この世界から消えてしまうんだ。
そんなの嫌だ……怖い…)

むさぼるようにして、
アーデはなにもない空間を掻き抱く。

どれだけ強く抱きしめようと
あの暖かで、優しかったメモリアの感触は、
どこにもない。

[アーデ]
(既にぬくもりを忘れてしまった……。
次は、なにを失ってしまうのだろう?)

身体は、離ればなれになっていても、
心だけは繋がっていたい……
繋がれると信じていた。

[アーデ]
(いつかあの子の中からも、
僕の存在も消えてなくなるんだろうか?)

それだけは嫌だった。

忘れて欲しくない……その一心で、
アーデはなにもない虚空をつかもうと
手を伸ばす──

  *  *  *

どこの村に行っても、
まるでメモリアの先回りをするように──

謎の集団によって思い出の泡が、
全て買い取られていた。

[メモリア]
(そんなことをする人は……ひとりしかいません)

頭の中に、ずっとアーデの姿が浮かんでいる。

[メモリア]
(1日たりとも、忘れたことはなかった。
でも、アーデはなにも言わずに連れて行かれた)

[メモリア]
(私がいくら泣き叫んでも、
戻ってくる事はない)

[メモリア]
(だから、私は自分の使命を
優先する道を選んだ……)

[メモリア]
(巫女としての役目が終われば、
きっとアーデに付けられた
魔法刑具は解かれるはず──)

かすかに繋がっている希望の糸。

メモリアは、それを離すまいと
必死に握り続けていた。

[メモリア]
(アーデと死に別れたわけじゃない。きっと将来、
以前のように笑って過ごせる日が来る)

そう思っていたのに……。

1日、1日が終わるごとにメモリアの手から、
少しずつ少しずつ……こぼれ落ちていくものが
あることに気付いた。

[メモリア]
(どんなに強く想っていても、
どんなに失いたくないと願っていても……)

時の流れは、
容赦なくメモリアの大事なものを
引きはがなしていく。

[メモリア]
(巫女としての役目を終えるのはいつ?
1年後? 5年後? 10年後?)

それまで、メモリアの心が
耐えられるのだろうか?

アーデへの想いを
抱え続けられるのだろうか?

[メモリア]
(怖い……。この気持ちが、
すり減って小さくなってしまうのが……)

もう一度……
あと、一度でいいから、
抱きしめて欲しい。

きっとすり減った心の傷が、
少しだけ癒やされるだろう。

[メモリア]
(でもそれは無理。アーデは、ここにはいない。
私の想いは届かない……)

  *  *  *

[ゼドー]
ん? なんだ、この音は?

[ティシカ]
蹄の音……?

火だーー!

どこかで誰かの悲鳴が聞こえた。
周囲はあっという間に黒煙に満ちた。

砂塵を巻き上げて
向かってくる野盗の集団。

彼らは、力のない者たちに
容赦なく襲いかかった──

  ◆  ◆  ◆

(道中)
果たしてふたりは、再会できるのかにゃ?

野盗たち──彼らも王国の方針で
"落ちこぼれ"と判断された者たちである。

弱者と決めつけられた彼らは、
社会から疎外され……徒党を組む。

そして、自分たちよりも
さらに力のない者から
食糧などを奪って去って行く。

それは、一種の災害であった。

[メモリア]
(傷ついた人たち……。焼け焦げた家屋……)

[メモリア]
(まだ、焼けた匂いが辺りに立ち込めている)

[メモリア]
(一晩で、村の様子が
なにもかも変わってしまった)

醜い村の有様を見て……
なにも出来なかった無力さを抱えているのは、
メモリアだけじゃなかった。

[ゼドー]
……無力だな俺たちは。

[ティシカ]
……言わないで。悲しくなるだけだから。

王都自慢の魔道兵たちは、
誰一人駆けつけてこなかった。

王族や貴族の連中は、
痴呆の小さな村の危機などに
興味がないのだ。

[メモリア]
(なんの罪もない人たちが……。
どうしてこんな目に遭うの?)

[メモリア]
(大勢の人が悲しみを背負うと、
その分、悲しい思い出も
沢山発生してしまうのに……)

[ゼドー]
やっぱり降ってきやがった。
思った通り、どの泡も濁ってやがる。

[ティシカ]
メモリア、これ全部回収しないと……。
できる?

[メモリア]
大丈夫です。すぐに、取りかかります。

無力さを打ち棄てるためにも、
メモリアは己の役目に没頭することにした。

ティシカたちも怪我を負った人の手当や、
生き残った人たちの捜索に手を貸している。

[長老]
王は、なぜわしらを助けてくれなかったのじゃ?

[若い男]
どうせ棄民だらけの村だから、
見捨てても構わないって思ったんだろう。連中は
俺たちのような落第者を人間扱いしてないのさ。

村人たちの怨嗟の声が、
あちこちから聞こえてくる。

[ティシカ]
……まずいわね。

悲しみが度を超すと、それはやがて怨みになる。

怨みはいつしか、
黒く濁った思い出の泡となって降り注ぐ。

[ティシカ]
(これから、益々忙しくなるわ。
それまでメモリアの心と体が
もってくれるといいんだけど……)

(メモリア倒れる)

[ゼドー]
メモリア! どうした、しっかりしろ!?

[ティシカ]
(あーもう、言わんこっちゃない……)

  *  *  *

[シャボンヌ](赤)
過労だってさ。無理しすぎるから……。

[シャボンヌ](青)
僕たちが、メモリアを困らせてばかり
だったからだ。うわあああん!
メモリア、死なないで!

[シャボンヌ](ピンク)
死ぬわけないでしょ。
2、3日休んでいれば大丈夫だって
ティシカもいってたし……。

[メモリア]
……みんなごめんね。
すぐに……ううっ!
……復帰するから。

[シャボンヌ](黄)
無理しちゃダメだよ。
僕たちメモリアに迷惑かけてばかりで、
心労を溜めちゃってたんだろうけど……。

[シャボンヌ](青)
メモリア! これから僕たち、良い子になるから!
絶対に死なないでよ!

[シャボンヌ](ピンク)
こらー! あなたたち、静かにしなさい!
メモリアがゆっくり休めないでしょうが!?

ふと……借りた家屋の外が、
にわかに騒がしくなった。

野盗が再び現れたのでは……ない。
漏れ聞こえてくるのは、人々の喜びの声だった。

[メモリア]
なにが、あったのでしょうか?

絶望に打ちひしがれていた村人たちが、
こんなに歓喜するなんて……。

[子分]
ちゃんと並んで! 慌てなくても、
全員分用意してるからね。

外から来た少年が、
村人たちになにかを配っている。

それは、食料や傷薬。
……そして、大量の金貨だった。

[長老]
救いの神とは、まさにあなた方のこと。
本当に感謝します。
お陰で村も復興できそうです。

[子分]
なに、困った時はお互い様だよ。
うちの団にも、この村の出身者はいるからね。

と、謎の一団と和やかに話す長老や村人たち。

[アーデ]
僕たちには、これぐらいしかできないけど……。
どうか受け取ってください。

窓から外の様子を伺っていたメモリアの目は──
まるで運命に操作されたように、
その人の姿を捉えていた。

[メモリア]
(ど……どうしてアーデがここに……!?
どうしよう、どうしよう!)

[若い男]
あんたが、義賊団の団長か?
噂は聞いている。
どうか、俺もあんたたちの仲間に入れてくれ!

[アーデ]
義賊って……
僕らは、そんな立派なものじゃないよ。

[メモリア]
(ああ……アーデ。
元気そうで……よかった……)

[メモリア]
(そこにアーデがいる。
アーデの声が聞こえる……)

[メモリア]
(会いたい。直ぐに駆けていって、
アーデを抱きしめたい)

だが、唐突に村の中が騒然としはじめた。

[ムスティン]
ついに尻尾を捕まえたぞ! コソ泥どもめ!

[長老]
あれは、王都の警備魔道兵団!?
どうしてこんな辺鄙な村に……?

[若い男]
俺たちが野盗どもに襲われている間、
なにもしてくれなかったくせに!
今更なにしにきやがった!?

[ムスティン]
私は、コソ泥を捕まえにきたのだ。
お前たちは、関係ない。下がっていてもらおうか?

[アーデ]
つまり……用があるのは、僕だけってことだね?

[ムスティン]
シェムニールで、私のズボンの裾をつかんで
泣きべそをかいていたのは、
小僧貴様だったな?

[アーデ]
よく覚えてるね。王都のエリート様は、
僕のことなんて、
眼中にないと思ってた。

[ムスティン]
コソ泥風情がよく喋る……。
即刻引っ立ててその生意気な口、
きけないようにしてやろう!

[子分]
兄貴、大丈夫?
加勢しようか?

[アーデ]
この男とは、多少因縁があるんだ。
だから加勢はいらない。
すぐに片付けるから下がってて。

ムスティンは、腰にぶら下げていた銃を
引き抜いた。

[ムスティン]
こしゃくな小僧め!
我が魔道弾の餌食となれい!

  ◆  ◆  ◆

(クリア後)

[ムスティン]
肉片ひとつ遺さず、この世から消え去るがいい!

ムスティンが構えた拳銃から、
魔道弾が発射される。

[アーデ]
無駄だよ。

アーデの姿が、突然消えた……
いや、消えたように見えた。

[ムスティン]
なっ!?

気がつくと、アーデは先ほど立っていた場所とは、
違う場所にいた。

[ムスティン]
消えた……?
そんなバカな! ありえない!

ムスティンはムキになって、
何度も引き金を引く。

しかし──結果は、同じ。
撃った時には、すでにアーデはそこにはいない。
全てかわされていた。

[アーデ]
お前たちが、
「落ちこぼれ」と呼び、蔑んでいる僕だけど……。

アーデには、魔道の素質がない。
だが、素質がないのは魔道に関する部分だけで、
他人より秀でているところも当然ある。

[アーデ]
遅いっ!

それは、身のこなしの素早さ。
アーデの動きは、ムスティンの目では
捉えられないほど素早く──

[ムスティン]
ぐはっ!?

腹部を蹴られ、
狼狽えた瞬間に、
手に持っていた銃を蹴り飛ばされた。

[アーデ]
道具に頼る人ってさ……
自分の長所と短所を同時に
さらけ出しているようなものだね。

メモリアと引き離されてから……。
アーデは、自分を見つめ直した。

これまで素質のない魔道に、
必死にしがみついてきたけど……。

お前は落ちこぼれだと、改めて断罪された瞬間。
自分でも驚くほどあっさり
魔道を捨て去ることができた。

[ムスティン]
うぐぐぐっ。お前たち、なにを見ている!?
とっととこのコソ泥を捕まえろ!

手詰まりとなったムスティンは、
引き連れてきた部下たちに
アーデを捕らえさせようとした。

[アーデ]
残念だけど、もうあんたの相手をしてる
場合じゃない。

[アーデ]
いい加減……消えろ。
目障りだ──

またしても
ムスティンの視界からアーデが消えた。
次の瞬間、背後に気配を感じた──

後頭部を強打されたムスティンは、
地面に倒れ、その場でのたうち回る。

これで当分は、起き上がって来られないだろう。

[アーデ]
時間を取られた。次の村に急ごう。

[若い男]
や、やっぱりすげぇあの人は……。

[若い男]
待ってくれ! 俺も連れてってくれ!
あんたを今日から、兄貴……
いや、団長と呼ばせてくれ!

[アーデ]
来る者は拒まない。好きにしたらいいよ。

[メモリア]
(どうしよう……アーデが行ってしまう。
話がしたい……一言だけでも)

[メモリア]
(でも、言葉を交わすと、
アーデに付けられた刑具が
魔力を発動させてしまう)

[メモリア]
(それにいまのアーデ……以前とどこか
雰囲気が変わってる)

[メモリア]
(私が知ってるアーデじゃないみたい)

[メモリア]
(私のせい……だよね。
アーデが、魔法刑具を嵌められることに
なったのも……全部)

[メモリア]
(会わない方がいい……。
アーデだって言葉を交わすことができない
相手と会いたくないはず……)

メモリアは、頬を伝う温かいものを感じた。
しばらくして、それが自分の涙だと気付く。

己の気持ちを自覚した瞬間、
メモリアはいてもたってもいられなくなり……
自然とアーデを追いかけていた。

そして、村からそう遠くない場所で、
アーデに追いついた。

[アーデ]
…………。

夕日を浴びながらこちらを振り返るアーデ。
彼の目にも、メモリアの姿が捉えられていた。

けれどアーデは、なにも言わなかった。
どんな表情なのかすらわからない。

ただ、手を前に出して、
それ以上、近づかないように警告している。

[メモリア]
(や、やっぱり迷惑だったかな?)

[メモリア]
(そうだよね。アーデは、
私に近づくこともできないから……)

[メモリア]
(でも、姿を見れただけでよかった)

[メモリア]
(アーデが、私を覚えていてくれたことが
わかっただけで嬉しかった……)

もっと傍に近付きたかった。
積もる話もあった。

だが、この世界は、ふたりの関係を引き裂いた。

「魔道に生きる少女」と
「魔道に素質のない落ちこぼれ」という形で、
ふたりの運命は引き裂かれてしまった。

[子分]
兄貴、なにしてるんだよ!
さっさと次の村に行こうぜ!

[メモリア]
(ああ……アーデが行ってしまう!
ここで見失ったら、
次はいつ会えるかわからないのに!)

[アーデ]
(メモリアがいる……。
でも、いまの僕には……どうすることもできない)

[アーデ]
(できることなら、直ぐにでも駆け寄って、
心配ないよって言ってあげたいのに……)

苦悶。

なにもかも忘れて
メモリアを強く抱きしめられたら、
どれだけ幸せだろう?

しかし、そんなことを考えるだけで、
首に嵌ったチョーカーがざわざわと蠢く。

[アーデ]
(残念だけどメモリア……。
いまの僕には、なにもしてあげられない。
苦しいけど……)

未練を断ち切ろうと、
アーデはメモリアに背を向ける。

だが、そこにいたのは──

[ゼドー]
アーデ……。
お前は、今でも俺のことを
兄貴だと思ってくれてるか?

[アーデ]
……な、なに言ってるんだよ。
当然じゃないか。
僕は、今でもゼドーの弟だ。

でも、ゼドーの目を真っ直ぐ見ることができない。

義賊……いや、盗賊として
巷を騒がせていることは、
ゼドーには言ってないからだ。

[ゼドー]
俺をまだ兄貴だと思ってくれてるならそれでいい。
俺はなにがあろうと弟のお前を守る。

そう言ってゼドーは、
背後にいた人物の背中を押す。

[ゼドー]
俺からお前に、新年のプレゼントだ。
受け取れよ。

リューリュー.jpg

[リューリュー]
はーい! あたし登場!

リューリュー・ブック。
魔道研究所に所属する魔道士で、
ティシカの妹だった。

[リューリュー]
君がアーデ君ね?
どれどれ? 首に嵌められたっていう
魔法刑具を見せてご覧なさいな。

[アーデ]
え……? これ、だけど……?

[リューリュー]
あー、はいはい。このタイプか……。
こりゃまた雑な仕事してるわね。

[リューリュー]
古い魔法刑具といえど、嵌め方を知らないと
正しく動作しないのにねぇ……。

と、言いながら、
リューリューは、インフェルノチョーカーを
いじり回す。

軽い音を立てて、アーデの首から
魔法刑具があっさりと外れる。

[アーデ]
え……? 外れた……?
えええええええっーー!?

[リューリュー]
それを付けたのは、落第者排除局の連中だね?
奴らみたいな、半端な魔道士に
正しく扱える代物じゃないのに……。

[リューリュー]
素人が半端に手を出すぐらいなら、
最初からあたしみたいな専門家に依頼すれば
いいのに。そう思わない?

リューリューの言葉は、
アーデの耳に入っていない。

チョーカーの取れた、なにもない首筋を
何度も触って、解放された自分の首を
確認している。

[アーデ]
あの……。
これ、取っちゃって……いいんですか?

[リューリュー]
簡単に取れちゃうように雑に付けた方が悪いのよ。
あとでバレないように、似たようなチョーカーを
探して嵌めとけばいいさ。

[ゼドー]
よかったなアーデ。
お前は、もう自由だぜ。

背後を指差すゼドー。
そこには──

[アーデ]
メモリア……。

[ゼドー]
行ってこいアーデ。
今まで溜め込んできた感情、
全部吐き出しちまえ!

どん、とアーデの背中を押して送り出す。

アーデはメモリアに向かって駆けた。

でも……。

[メモリア]
アーデ!?
ダメ……こっち来ちゃダメです!

魔法刑具が外れたことを知らないメモリアは、
必死に逃げて、アーデから離れようとする。

[アーデ]
待ってくれ! もう大丈夫なんだ!
聞いてよ、メモリア!

そんなメモリアを必死に追いかけるアーデ。

[リューリュー]
はい、ティシカお姉ちゃん。
約束は果たしましたよ。
それで……。

[ティシカ]
はいはい。もう逃げられないわね……。
来月の姐さんたちとの会食に、
私も参加するって伝えといて。

ギロッと、隣にいるゼドーを睨み付ける。

[ティシカ]
この借りは、
ゼドー……あんたに付けておくからね?

[ゼドー]
好きにしろ。
あのふたりが喜ぶ姿を見てたら、
なんだってよくなってきた。

[ティシカ]
ま、そうね。
アーデがメモリアの心労を軽減してくれるなら、
今後の思い出の回収も順調にいくもの。

[ティシカ]
私たちにとって、
それがなによりね……。

[ゼドー]
その通りだ。
排除局の連中がなにか言ってきたら、
その時は俺が相手になってやる。

[ティシカ]
その威勢が、
口だけじゃなきゃいいけどね……。

[ゼドー]
ティシカ……。

[ティシカ]
なによ?

[ゼドー]
ありがとうな。

[ティシカ]
う、うるさい!
生意気にもイケメンオーラ出そうと
してるんじゃないわよ!

遠くで、アーデがメモリアに
追いついたのが見えた。

勢い余って、ふたりは抱き合ったまま、
転んでしまった。

やがてどちらからともなく起き上がる。
メモリアは、アーデの首輪が
外れていることに気づいた。

アーデは、もう大丈夫だよ、と告げた。
たちまち、メモリアの両目が潤みはじめる。

[ゼドー]
(キスか!?)

[ティシカ]
(ここは、再会のキスね?)

[リューリュー]
(キスだわね)

邪な想像を膨らませる大人たち……。

それに対して、
まだ未熟な子どもふたりは──

[メモリア]
よかった……もう一生、こうして
アーデに触れられないのかと思ってたから……。

[メモリア
本当によかったです……。
ううううっ……ひっ、くっ。
う……っ。うああああああんっ!

[アーデ]
心配かけて悪かった。
ごめんね……ぐすっ。
もう、離れないから……。

手を取り合ったまま、
ふたりは子どもらしく泣いていた。

いつまでも、いつまでも泣いていた。

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ラベル:謹賀新年2017
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謹賀新年2017 アーデ&メモリア編 〜 怪盗アーデ

←罰によって引き裂かれる

その日、王都から少し反れた貧しい村に、
思い出の泡が降った。

[女の子]
見て、父ちゃん! また泡が降ってきたよ!

[父ちゃん]
やれやれ、空からこんな奇妙なものが
降ってくるなんてな……。
けったいなこった。

[女の子]
なんか不気味だよね。

[父ちゃん]
こっちは、明日食うパンにも困ってるって
いうのによぉ。せめてこの泡が食えりゃあなぁ。

豊かに暮らせているのは、
王都の中央に暮らす貴族や、
一部の商人たちだけだった。

王国中は、慢性的な不景気で、
仕事を失い、困窮する者が大勢いた。

[子分]
おや、珍しいこともあるもんだね兄貴。
空から泡が降るなんてさ。

そんな村にぶらりと現れたアーデと子分たち。
まるで、空から降る思い出の泡を初めて
見たかのように驚いている。

[父ちゃん]
どうせ食えねぇんだ。
珍しけりゃ、もっていっていいぜ。

[アーデ]
そう? いらないなら、
遠慮なくもらっていこうかな。
おーい、お前たち。仕事だよ。

と、アーデは腰にぶら下げた袋を開いた。

シャボリーヌ.jpg

[シャボリーヌ]
なに? お仕事〜?

シャボリーナ.jpg

[シャボリーナ]
まだ眠いよぉ……。

[アーデ]
文句言わないで、ほら、泡を回収してよ。
僕の目が光っているうちは、さぼったり、
悪戯したりは許さないからね。

にこやかな笑顔。しかし、その笑顔の奥には、
有無を言わさない迫力がこもっている。

[シャボリーヌ]
こわ! そんな睨まなくてもいいのに〜。

[シャボリーナ]
厳しいメモリアのところから逃げ出せて、
再就職できたと思ったのに〜。
話が違うよ〜。

[アーデ]
お前たちは今まで好き勝手に生きてきたんだ。
償いだと思って、これからは仕事に
専念するんだね。

メモリアが造り出したシャボンヌたち
と接触するのは、魔法刑具の禁止事項には
抵触しないらしい。

そうとわかったアーデは、
ひとつの作戦を実行に移した。

[シャボリーヌ]
はいはい。
じゃあ、いくわよ。あわあわ〜。

2匹のシャボンヌは、
それぞれの場所に散って、
降ってくる泡を捕まえはじめた。

[女の子]
あなた、何者なの? あの生き物はなに?

アーデはなにも答えず、
優しく微笑むだけだった。

[アーデ]
そうだ。この村に降った泡を
タダでもらっていくのも悪いから、
これ……。

[アーデ]
少しだけどお礼。受け取ってよ。

[父ちゃん]
お礼ったって別にこの泡はうちのもんじゃ……
……て、これ、本物の金貨じゃねえか!
こんな沢山……もらっていいのかよ?

[アーデ]
泡の代金だ。遠慮しないで。
あ、そうそう──

[アーデ]
近くに同じように泡が降った場所があったら、
教えて欲しい……。
泡は全部買い取りたいんだ。

[父ちゃん]
お、おお……もちろんいいぜ。
きっと、隣の村の奴らも喜ぶはずだ。

[女の子]
あなたたち、一体何者なの?

[子分]
通りすがりの怪盗団さ!

[子分]
痛いっ! 殴ることないだろ?

殴ったアーデは、涼しい顔で……。

[アーデ]
さてと、次の村に向かうよ。
急げば、この周辺の思い出は、
全て回収できそうだ。

  ◆  ◆  ◆

[シャボンヌ](黄)
思い出の回収が終わったよー。

[シャボンヌ](赤)
ふう、今日のノルマは達成だね。
ご褒美に、メモリアの魔力を吸わせて
もらおうっと。

[シャボンヌ](青)
吸わせてもらうのは、僕が先だよ!

[シャボンヌ](ピンク)
あんたずっとサボってた癖に、
なに言ってるのよ!?

一方メモリアは、通りすがりの旅人から、
思い出が降っていそうな
場所の情報を集めていた。

[旅人]
泡が降っている場所なぁ……。

[メモリア]
どこか思い当たる場所があったら
教えて欲しいのですが……。

[旅人]
そういえば、変な話を聞いたぜ。
降ってくる泡を買い取ってる
物好きがいるらしいんだってさ。

[メモリア]
泡を……お金を出して買っているんですか?
どうしてそんなことを……。

[旅人]
それも、かなり高額な値段でな。
お陰で、その村の住人たちは、飢えることなく
新年を迎えられそうだと喜んでたぜ。

[メモリア]
……一体誰が。

そんな物好きなことを……?

[メモリア]
(第一、泡はシャボンヌちゃんたちにしか
つかめないはず。買い取ったとしても、
持ち運ぶことはできないのに……)

  *  *  *

メモリアの旅に、
護衛として同行しているゼドーとティシカ。

もちろんふたりは、
魔道士研究所からメモリアを監視するように
言い含められている。

もう二度と追憶の巫女に、
余計な虫を近寄らせないようにと──

[ゼドー]
(アーデとメモリアを強引に引き裂いといて、
余計な虫扱いは酷いよな……)

[ゼドー]
(だけど、わかっていながら、
なにもしてやれない自分も情けねぇ)

[ティシカ]
なに、難しい顔してるの?
バカなあなたに
考え事なんて似合わないわよ?

[ゼドー]
そうだな。
俺には、考え事なんて似合わないよな。
考えるより、まず動けだ。

[ティシカ]
まさか、
変なこと考えてるんじゃないでしょうね?

[ゼドー]
……もうすぐ新年だ。新しい年が来たって
ことで、1日……1日でいいから、
メモリアとアーデを会わせてやれないかな?

[ティシカ]
1日だけ、アーデの罰を解いて
やれないってこと?

[ゼドー]
囚人だって新年の1日目は、
労働を免除されるだろ?

メモリアはなにも言わないが
アーデと引き離されてから、文句ひとつ言わずに
頑張っている。

その健気さは、
側で見てて痛々しいほどだった。

[ティシカ]
そんなことでメモリアが喜ぶかしら?

ろくに別れの挨拶を済ませられないまま、
アーデの首には魔法刑具が嵌められた。

強引に引き裂かれたことに関して、
今までメモリアは泣き言ひとつ言ってない。

[ゼドー]
他にやれることがあれば、教えてくれよ。
今、アーデがどこでなにを思っているのか──

[ゼドー]
考えただけで、胸が苦しくなる。
いっそ、研究所に乗り込んで──

そこまで言った所で、
ティシカは慌ててゼドーの口を塞いだ。

[ティシカ]
私には、もっといいアイディアがあるわ。
あなたが、筋肉を振り絞って考えた案よりも、
よっぽどマシなね……。

[ゼドー]
アイディアあるのか!?
だったら言ってくれよ!

[ティシカ]
でも、実現する可能性は限りなく低いわ。
あまり期待しないで。

[ゼドー]
わかってるよ。
それでも、俺の案よりもマシなんだろ?

ティシカは、珍しく真面目な顔でうなずいた。
そして、口を開く。

[ティシカ]
貴方の親戚のラスメティーと同じように、
私の知り合いにも、昔から魔法刑具の
研究をしている魔道士がいるの。

[ティシカ]
彼女にお願いすれば……
ひょっとしたらインフェルノチョーカーを
無効化できるかもしれないわ。

  *  *  *

ムスティン.jpg

[ムスティン]
はあ……。特務諜報員であったこの私が、
たった一度の失態で、
王都の警備部隊に左遷されるとは。

[ムスティン]
本来であれば、
私は追憶の巫女と共に、
この世界を牛耳っていたはずなのに!

[ムスティン]
しかし、まだ諦めてはおらん!
巫女さえ私のものにすれば、
この王国を乗っ取ることなど造作もない!

[警備魔道士]
隊長! 奴らが出ました!

[ムスティン]
奴らとはなんだ!?
具体的に言わんとわからんぞ!

[警備魔道士]
このところ巷を騒がせている
迅速燕尾の怪盗団です!

[ムスティン]
怪盗だと? 単なる盗人だろうが!?
我々の相手ではない、とっとと捕まえろ!

  ◆  ◆  ◆

メモリア一行は、思い出の泡が降った
と言われている村に立ち寄った。

しかし、その村に降った思い出は、
謎の集団によって
全て回収されたあとだった。

[ゼドー]
この村もか……。
いったい誰が、思い出を回収してるんだ?

[ティシカ]
それも、わざわざお金を払ってまでね……。

メモリアは、村人たちからの話を聞き、
買い取っていった人物の情報を
集めることにした。

[メモリア]
リーダーは、若い男……ですか?

[村人]
ええ。かなり若い男だったねぇ。
ちょうどあんたとお似合いぐらいの……。

[メモリア]
…………。

[村人]
その男は、子どもを何人も引き連れてて、
兄貴とか、親分とか呼ばれて慕われてたわよ。

そして男は、泡を買い取らせてもらったお礼だ
といって、この村にも金貨を
1000枚置いていったという。

[ゼドー]
どの村も同じだな。
思い出を持って行く代わりに、
必ず金貨を1000枚支払っている。

[ティシカ]
代金としては法外ね。
金貨1000枚なんて、魔道研究所の
給料1年分だわ。

[メモリア]
あの、その人は泡をどういう方法で
回収していったのでしょうか?

[村人]
さあ、私にはよくわかんないけど、
なんだか小さい生き物のようなものに
回収させていたわ。

[メモリア]
小さい生き物とは……まさか、こういうのですか?

メモリアは、シャボンヌを村人に見せた。

[シャボンヌ](ピンク)
あらやだ!
さっきお化粧落としたばっかりなのに〜。

[村人]
そうそう!
その生き物……って、これって魔物かい?

[村人]
魔物扱いは失礼だわ!
私たちは、魔法生物。
魔物なんかと、一緒にしないでよ!

[村人]
まあなんでもいいけど、私たちにとっては、
救いの神さ。貰った金貨のお陰で、
なんとか年が越せそうだよ。

  *  *  *

[子分]
よし、誰もいないな。おい、みんな……。
いまだ!

無事、貴族の屋敷に
忍び込むことができた。

[子分]
ここの屋敷の主は、俺たちのような
棄民を奴隷として他国に売って
私服を肥やしてるんだ。

[子分]
遠慮はいらないぜ!
洗いざらい、奪い取るぞ!

合図と同時に子供だけの怪盗団は、
宝物庫に向かって突き進んでいった。

音もなく進んでいく少年たち。
だが──どこかおかしい。
と、違和感に気付いた直後だった──

[???]
よく来たな、コソ泥ども!

どこからともなく声が聞こえたと同時に、
王国の警備魔道兵たちが一斉に
怪盗団を取り囲む。

[子分]
ちっ──。待ち構えられてたか……。

[ムスティン]
お前たちが、噂の怪盗団か。
……なんだ、ガキばかりじゃないか。

[ムスティン]
まあいい。お前たちを捕らえて、
諜報部復帰のための手柄とさせてもらおう!

ムスティンの合図で、
大勢の警備魔道兵たちが動きはじめる。

[子分]
兄貴! さすがにやばいかも──

[アーデ]
大丈夫だ。ここは、僕に任せて、
お前たちは、宝物庫に。

子分たちを先に行かせて、
アーデは腰の袋を開く。

[シャボリーヌ]
え? 悪戯してもいいの〜?

[シャボリーナ]
こういう時のために、
思い出を沢山集めてたんだものね!

袋の中から、双子のシャボンヌが
元気よく飛び出してきた。

[シャボリーヌ]
そーれ、嫌な思い出、はがゆい思い出、
黒歴史、はずかしくなる思い出、
なんでもあるよー!

2匹の極悪シャボンヌたちが、
魔道警備兵たちに思い出を
植え付けていく。

[警備魔道兵]
なんだ……。
急に昔のことを思いだして……やめろ!
これ以上、恥ずかしい過去を思い出させるな!

[ムスティン]
お前たち、いったいどうしたの言うのだ!?

様々な思い出を植え付けらえた兵たちは、
いたたまれなくなり、
仕事どころではなくなっていた。

[シャボリーナ]
新しい想い出をあげた代わりに、
君たちの思い出をもらっていくね。

[警備魔道兵]
……あれ? 俺はどうしてこんなところに?
怪盗団? それってなんだっけ?

[シャボリーヌ]
ぬふふっ。成功成功。
あの思い出を抜かれてぼけーっとした顔、
最高に笑っちゃうね!

[アーデ]
俺たちに関する思い出を
抜き取るだけでいい、
あまりやり過ぎるなよ?

[シャボリーヌ]
はーい!

[ムスティン]
小僧、貴様……!?
貴様の顔、忘れたことはない!

[ムスティン]
貴様が、盗人どもの頭目なのか!?

[アーデ]
……。

アーデはなにも言わずに、
ムスティンの前から去って行く。

今は盗みが目的であり、
誰かと戦うのが目的ではないからだ。

[ムスティン]
あ……あの小僧、
私など眼中にないかのように無視しおって!

[ムスティン]
おのれ!
この私をコケにしおって、絶対に許せん!

怒りに全身を戦慄かせるムスティン。

持っていた指揮棒を
怒りに任せてへし折った。

初日の出に照らされて→

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ラベル:謹賀新年2017
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謹賀新年2017 アーデ&メモリア編 〜 罰によって引き裂かれる

人は生きている限り、なにかを見て、感じて、
そして、それを思い出にする。

様々な感情が詰め込まれた思い出は、
かけがえのない人と共に過ごした
大切な時間を振り返らせてくれる。

だけどもし、新たな思い出を抱えることが
出来なくなったら──

果たして、誰かを大切に思う気持ちを
繋いだままにしておくことが、
できるだろうか?

  *  *  *

シャボンヌ(赤).jpg

[シャボンヌ](赤)
そういう時は、僕たちにお任せ!
さあ、いくぞみんな! お仕事だ〜。

シャボンヌ(黄).jpg

[シャボンヌ](黄)
泡をつかめ〜。あわあわ〜。

魔法生物シャボンヌ。

彼らは、人では手に触れることができない
思い出の泡をつかむことができる
不思議な生き物だ。

シャボンヌ(青).jpg

[シャボンヌ](青)
あーあ、みんな真面目に仕事してて
詰まんないなっ。
どこかに楽しいことないかなー?

メモリア.jpg

[メモリア]
もー、そこぉ!
またサボってますね? 減点1ですよ!

[シャボンヌ](青)
ええ、待ってよメモリア。
僕、ちょっと休憩してただけなのに……。

[メモリア]
言い訳無用です。サボってるのを見つけたのは、
これで2度目です。今回は見過ごしませんよ?

悪戯好きでぐーたらな
シャボンヌたちを生み出し、管理する
追憶の巫女メモリア。

[シャボンヌ](赤)
メモリアって変わったよね……。
昔はもっとゆるかったのに……。

[シャボンヌ](黄)
やっぱり、あのことがあって、
変わったんだと思うよ。
あんなことがあったんじゃねぇ……。

[メモリア]
そこもっ! お仕事中のお喋りは禁止です!
早く終わらせないと、日が暮れてしまいますよ。

[シャボンヌ](黄)
そんなー。ちょっとぐらい見逃してよー。
メモリア、厳しすぎだよ!

[シャボンヌ](赤)
(メモリア、少し焦ってるわね。
世界中に思い出を拡散させちゃった
責任を感じているのだろうけどね……)

[メモリア]
(1個でも多くの思い出を回収して、
はやくこの現象を終わらせないと……。
アーデのためにも……!)

かつて、古代都市シェムニールにだけ
降っていた思い出の泡だが──

ある事件を切っ掛けに
世界中に振るようになった。

メモリアは、思い出が降り続ける限り、
回収し続けなきゃいけない。

そういう使命を持って生まれた子だった。

  *  *  *

[シャボンヌ](赤)
メモリアは変わったよ!
昔は、もっと僕たちに優しかったのに!

シャボンヌ(ピンク).jpg

[シャボンヌ](ピンク)
そう言わないで……。思い出の回収が、
思うようにはかどっていないのは
事実なんだから……。

[シャボンヌ](ピンク)
それにメモリアだって、不眠不休で働いているわ。
私はむしろ、メモリアが過労で倒れちゃう
ことの方が心配だわ。

[シャボンヌ](黄)
それは心配ないよ。だってメモリアは……。
鉄の女になったんだよ。

[シャボンヌ](青)
どういう意味?

[シャボンヌ](黄)
男を捨てて、仕事のみに生きる女として
生きることを決めたってことさ。

[シャボンヌ](青)
やっぱりそれって……
アーデがいなくなったから?

[シャボンヌ](赤)
男に捨てられて、
仕事に生きる女になったってことか……。
切ない話だね。

[シャボンヌ](ピンク)
それ以上は言っちゃダメ。
アーデのことは、メモリアが一番
気にしているんだから。

[シャボンヌ](黄)
そろそろ寝ようよ。
ふあ〜あ。……明日も5時起きだ。

[シャボンヌ](青)
そうだね。寝よう寝よう。

おしゃべりに疲れたシャボンヌたちは、
眠りに就いた。

  *  *  *

少し離れた場所では、
寂しげな表情でじっと星空を
見つめるメモリアがいた。

[メモリア]
この辺り一帯は、全て回収が終わりました。

[メモリア]
でも……。
まだ先は長いです……。

その場にいない、誰かに向かってつぶやく。

夜空を見上げていた視線を戻し、
自分の小さな手を見つめる。

その表情は、どこか虚ろげだった。

  ◆  ◆  ◆

優秀な魔道士が所属する魔道研究所は、
王国から独立した研究機関である。

研究所に所属する魔道士は、人類の発展と、
世界の安定へ寄与することが求められる。

そして魔道研究所の
方針に逆らった魔道士には、
容赦なく処罰が下される。

ゼドー.jpg

[ゼドー]
すまないアーデ。兄貴分として、
最後までお前を守ってやりたかったんだが……。

ティシカ.jpg

[ティシカ]
姉さんたちにも頼んでみたけれど……
事が事だから何事もなくとはいかなかったの。
自分の力不足を痛感しているわ……。

暗い顔をしているふたりとは対照的に
アーデは、どことなく
あっけらかんとしていた。

アーデ.jpg

[アーデ]
しょうがないよ。世界中に思い出が
降るようになったのは、僕のせいだ……。
だから、ふたりとも顔を上げてよ。

[ゼドー]
でもよ。アーデにだけ、どうして
こんな重い罪が科せられるんだ?
理不尽だろうが。

古代都市シェムニールの最深部にある
魔法陣破壊事件。
その結果として──

アーデは、思い出の巫女メモリアを
"そそのかし"本来の職務を放棄させた
罪人として、罪に問われた。

魔道研究所査問委員会が
事件の関係者を調査し、
そして出した結論、それが──

「アーデ・トゥインの見習い魔道士としての
資格を剥奪。および魔道士研究所から
の除名」だった。

[アーデ]
僕に魔道士の才能がないのは、わかってた。
けど、僕なりに懸命にやってたんだけどな……。

魔道士研究所から除名されるということは、
アーデがこれから先、メモリアと
行動を共にする資格がなくなるということだ。

それが、唯一の気がかりだった。

……だが、アーデに与えられた罪は、
これだけではなかった──

アーデたちがいる王国は、
魔道の素質がない者に対する差別が激しい。

魔道士としての素質が限りなく小さく、将来的に
世界の発展に寄与しないと判断された者は、
「落ちこぼれ」の烙印を押される。

落ちこぼれの烙印を押された子どもは、
王国から「棄民」として扱われ、
孤島や地方の寒村に捨てられる。

王国の「落第者排除局」は、
アーデがこの「落ちこぼれ体質」
であることを問題視し──

魔道研究所に
さらなる厳罰を科すように命じたのだった。

  *  *  *

[ゼドー]
誰がなんと言おうと、アーデは俺たちの仲間だ。
追放は、なんとしても撤回させてみせる!

[ティシカ]
でも、アーデが研究所に来たのは、
研究としての検体としてよ。
それを覆すことは……できないわ。

アーデは、本来、研究対象として、
魔道研究所にやってきた。

それが、メモリアの一言で救われ、
同じ魔道士見習いとして研究所に
所属できることになった。

[ティシカ]
本来あるべき形に戻ったとも言えるわね。
この方がお互い幸せなのかも……。

ゼドーは、荒々しくティシカの襟首をつかむ。

[ゼドー]
本気で言ってるのかよ!?
アーデのこと、弟みたいに可愛がってるって
言っていたのは嘘だったのかよ!

[ティシカ]
……なによこの手は?
放しなさいよ、筋肉ゴリラ。

[ティシカ]
わめき散らしたいのは、私も一緒よ。でも、
そんなことをしてもなんの解決にもならない
から、そうしないだけなの。おわかり?

[ゼドー]
くっ、……ちくしょう!

研究所所属の一魔道士の身分では、
王国からの圧力をどうすることもできなかった。

ティシカやゼドーは、やれるだけのことは
したが、魔道研究所の下した判断を
覆すには至らなかった。

歯痒さを感じているのは、
ゼドーだけではないのだ。

  *  *  *

「落第者排除局」から、
アーデに科せられた第2の罰。

それは、今後一切
追憶の巫女メモリアへの接触を
禁止するという重い罰だった。

[局員]
落第者排除令、特別法第13条に従い、
これからアーデ・トゥインに魔法刑具
着用の刑を執行する。

[局員]
以後、半永久的に貴様の行動を
制限させてもらう。
制限事項は、次の通りだ。

1、追憶の巫女との会話を禁ずる。

2、追憶の巫女との身体的接触を禁ずる。

[局員]
もし、この禁止令を破った場合、首に巻かれた
魔法刑具「インフェルノチョーカー」が
お前の命を奪うだろう。

[アーデ]
…………。

[局員]
異存はないか?

[アーデ]
……ありません。

  ◆  ◆  ◆

[アーデ]
ん、ちょっと苦しいかな……。

アーデは、チョーカーに触れた。

まるで、あつらえたようにぴったりと
肌に密着するチョーカーの感触は、
ぞっとするほど冷たかった。

[アーデ]
魔法刑具……。
他人に嫌がらせするためだけに
作られた道具だよね、ほんと……。

ラスメティー.jpg

  [ラスメティー]
  無理に外そうと思わない方がいいだろう。
  そのチョーカーには、名前のとおり対象者を
  焼き尽くす魔力が込められている。

  [ラスメティー]
  普段生活している分には、なんの影響もない。
  君が罪を犯さなければ、死ぬまで
  そのチョーカーは静かにしているだろう。

  [ラスメティー]
  魔道研究所が開発したものかだって?
  当然だ。そのような精密な魔法刑具を作れるのは、
  我が研究所にいる魔道士ぐらいのものだ。

  [ラスメティー]
  ただ、研究は続けているが作ってはいない。
  君の首のソレは、1000年以上前に
  作られたものだ。

  [ラスメティー]
  何で知ってるかって?
  魔法が込められた魔道具は、
  私の研究対象のひとつだからだ。

  と、告げたあと、ラスメティーは
  失言した自分を責めるように頬を叩く。

  [ラスメティー]
  すまない。君の気持ちも考えずに……
  つい、自慢気に話してしまった。

  [ラスメティー]
  私も、ゼドーたちと共にその魔法刑具が
  1日でも早く外れるように努力しよう。

  [ラスメティー]
  ゼドーは、出来の悪い従兄弟だが、
  あれだけ熱心に頭を下げられたんじゃ
  こっちも断れないからな。

  [ラスメティー]
  なにか分かったらすぐに連絡するから、
  それまで我慢してくれ。

[アーデ]
(刑を受けることを拒絶して、
逃亡することもできた……)

[アーデ]
(でも、僕がこのチョーカーを嵌めるだけで、
シェムニールの魔法陣を破壊した件が
丸く収まるなら──)

[アーデ]
(あの子に害が及ばないのなら──。
そう思って、僕は刑を受け入れることにした)

だが、心の中に空洞が出来ていた。
あらゆる感情が、その空洞の中に
流れ込んでいくかのようだった。

[アーデ]
(覚悟はしていたはずなんだ。
でも、どうしてこんなに心が冷たいのだろう?)

もっと、己の苦境に歯がみしたり、
他人を呪ったりするかと思ったけど、
案外心は冷静だった。

そんな自分に少しだけ、失望したりもした。

[子分]
アーデ! アーデの兄貴! もう、準備万端だぜ。

[アーデ]
しっ。声がでかい。
僕たちは、陰の存在なんだ。
事をなす前に、人に気付かれたらどうする?

[子分]
おっとやべえ。
根がお喋りだからさ、勘弁してくれよ。

アーデは、それ以上叱ることなく、
むしろ優しい笑みを浮かべて
少年の話を聞いた。

この少年も、アーデと同じく王国の
落第者排除局によって、先天的な「落ちこぼれ」
と認定されて棄民となった子だ。

少年の後には、同じように王国から
"落ちこぼれ"として排除された子どもたちが、
何人も付き従っていた。

[子分]
ねぇ、兄貴。
そろそろ、怪盗団を名乗っていいんじゃない?
新入りが増えて組織も大きくなったしさぁ。

[アーデ]
怪盗団?
おいおい、僕は"盗人"になったつもりはないよ?

[子分]
冗談やめてよ。
兄貴は、貴族たちに復讐するために
"怪盗"になったんだろ?

[子分]
俺たちをのけ者にした奴らに
一泡吹かせたい……。
兄貴も志は一緒のはずだぜ!?

[アーデ]
だから、君は声がでかいって。
漢なら大望は軽々しく口にせず、
胸に秘めておくものだ。いいね?

[子分]
漢……。
うん、俺も兄貴みたいな立派な漢になりてぇ!

[アーデ]
その心意気は、仕事で見せてくれればいい。
さあ、みんなをまとめてくるんだ。
今夜の仕事を始める──

貴族の屋敷や強欲な商人たちから盗みを
繰り返す「怪盗団」が頻繁に出没する
ようになったのは、この前後からだった。

王都警備魔道士たちの目をかいくぐり、
神業のごとく盗みを繰り返しながら、
まるで燕のように尻尾をつかませない。

いつしか、王都の人々は、
その謎の一団のことを「迅速燕尾の怪盗団」と
呼ぶようになった。

[アーデ]
決して人を傷つけるな。
そして、貧しい者からは奪うな。

それは、アーデが作った鉄の掟。
従う者には、掟を徹底させている。

[アーデ]
(これは、王国への復讐なんかじゃない。
そして、魔道研究所を追放された
腹いせでもない)

[アーデ]
(僕はいまでも、あの子の味方だ。
どんな境遇に置かれても、
それだけは変わらない……)

アーデは、もう一度、
首に巻きついたチョーカーに触れた。

禁止事項を破れば、たちまち魔力が発動し、
アーデを焼き尽くす忌まわしき刑具。

[アーデ]
(あの子の姿を想像するだけで、
このチョーカーは生き物のように蠢いて
反応する)

[アーデ]
(こんなものを嵌められるくらいなら、
殺された方がマシだろうね)

[アーデ]
(でも生憎、僕は普通じゃない。
あきらめの悪さだけは
世界一だと自覚している)

[アーデ]
(どんな状況になっても、
僕はメモリアとの約束を果たす──。絶対に)

怪盗アーデ→

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 22:50| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

謹賀新年2017 イーニア編 〜 最初で最後の怪獣退治

←イーニアの決意

[イーニア]
ふむ……。

魔道士を目指した頃、
そして魔道士になった頃は、
強くなりたいという一心でいっぱいだった。

いつしかその思いを心の奥底にしまいこんで、
世のため人のため……そして多くの魔道士のため、
自分のできるかぎりのことをしてきた。

巨凶と呼ばれた悪の魔道士と渡り合い、
多くの大魔道士を率いて魔道士協会も設立した。

心身ともに充実していた、
イーニア・ストラマーにとっての
全盛期だったのかもしれない。

[イーニア]
違う。今このとき──
今まさに私は全盛期を迎えるのだ。

倒したいやつがいて、
倒したいと思える自分がいて、
その感情が芽生えたそのときが全盛期なのだ。

自分をも上回る大魔道士たちには、感謝している。

実力以上の力を、発揮させてくれるのだから。

[イーニア]
待っていろ、アリエッタ。
最初で最後の怪獣退治だ。

  ◆  ◆  ◆

(道中)
アリエッタをやっつけるにゃ!

日々、新たな発見があるのは魔道士ゆえだろう。

魔法の使い方ひとつとっても、
それは気づきと学びから作られていると知る。

幼いころ、魔道士なんて職は、
それこそ大道芸と思われていた時代もあった。

ある程度の地位と市民権を得たのは、
それでも諦めなかった魔道士たちの
努力によるところが大きい。

イーニアも例外ではなく、
だからこそ多くの魔道士たちは、
未だに彼女という存在に畏敬の念を抱く。

[イーニア]
…………。

いや、魔道士のみならず──だ。

彼女は魔道士としての地位のみならず、
世界中の人々からの羨望を集めていた。

だけどそれは、己を殺すことで得たもの。

[イーニア]
私は、誰よりも強くなりたかったんだ。

  *  *  *

アリエッタ.jpg

[アリエッタ]
えー……。

魔道軍手をしてタオルを首に巻いたアリエッタが、
中腰のまま振り返り、あからさまに嫌な顔をした。

[イーニア]
どうして穴を掘ってるんだ、お前は。

[アリエッタ]
そろそろ年が明けるからね。

[エリス]
年明けと穴に何の関係があるのよ。

[アリエッタ]
えー……。

[エリス]
なによその顔は。

[アリエッタ]
正直、空気読めよって思ってます。

あからさまに嫌そうなアリエッタを前に、
しかしイーニアは一歩も引かない。

[イーニア]
お前は、私に負けるような魔道士ではあるまい?

[イーニア]
だが──お前を倒すことが、
多くの魔道士たちの目標なのだ。

[アリエッタ]
おっけー。

[アリエッタ]
小さいやつなんて地獄に叩き落としてくれる!

[エリス]
いや……言葉遣い言葉遣い。

スコップを片手に立ち上がったアリエッタが、
自分より少し小さいイーニアを見て、
そんなことを漏らした。

[イーニア]
挑ませてもらうぞ、アリエッタ!
だからお前も本気でこい!

  ◆  ◆  ◆

(クリア後)

魔力の奔流に押され、イーニアはよろめく。

魔法ではなく"魔力"だ

アリエッタから溢れる魔力を前に、
心ではなく体が恐怖を抱いていた。

[アリエッタ]
かかってこい!

ヤバイと思っている自分の体を叱咤して、
イーニアは魔法を展開する。

複数の魔法を力任せに撃ち込み、
イーニアは杖を掲げてさらに詠唱する。

[エリス]
これは本当にまずいわ。先生、本気すぎる……!

[イーニア]
どうした、アリエッタ!
お前の力はこんなものか!?

[イーニア]
手加減はしないと言ったぞ。まだまだこれからだ!

イーニアが1歩ずつ、
着実にアリエッタとの距離を詰めていく。

──戦って、勝つための覚悟。

今のイーニアには、その覚悟があった。

[エリス]
(先生──押し切れます。このまま!!)

強烈な魔法の数々に、アリエッタが後ずさる。

好機と見るや、イーニアが
さらにアリエッタへ近づいた。

だが──

[イーニア]
にょわぁぁぁーー!?

ずん、という音とともにイーニアが姿を消した。

……イーニアが消え去ってしまった。

[エリス]
え、ええ……?

イーニアは魔法を展開し、攻撃していた。

なのに突然、そこには何もなかったように……
消え去ってしまった。

そしてそこには、
まるで深い闇のような穴があいていた。

[アリエッタ]
……ふぅ。死ぬかと思った。

[エリス]
え、ええ!? 先生は!?
アリエッタ! 先生、どこにやったの!?

[アリエッタ]
穴に落ちた。

[エリス]
はあ? 何言ってるの?

[アリエッタ]
穴に落ちた。

[イーニア]
ぐ、ぐぬぬ……。

アリエッタが掘っていたらしい穴から、
呻くような声が聞こえてきた。

[アリエッタ]
イーニア! イーニア!

穴を覗き込みながら、アリエッタが呼びかける。

[イーニア]
死ぬかと思ったぞ、いや、本気で……
足首がぐきっとなったからな……足首が。

[アリエッタ]
年明けって魔物がねー、暴れるでしょー?

[アリエッタ]
街のひとにねー、
一気にやっつけてほしいって言われたんだー。

[アリエッタ]
だから魔物を勝手に吸い込む穴を掘ってみた。
最初に落ちたのはイーニアだったね。わはは!

[アリエッタ]
魔物が入るたびに魔道障壁が展開されるから、
重ねがけされてどんどん強固になっていくよ!

[アリエッタ]
吸引式だね、あはは──

ずん、という音とともにアリエッタが姿を消した。

[イーニア]
ぷぎゅん──!?

[イーニア]
こら……アリエッタ……!

吸引式の穴に、アリエッタが吸い込まれ、
イーニアの上に落下したようだった。

[イーニア]
なんなんだお前は……。

イーニアは嘆息する。

アリエッタを正面から押し切った。

しかし最後に落ちてきたアリエッタに
肘打ちを食らったせいで、もう戦う気力はない。

[イーニア]
あれだけ魔法を撃ち込んだのに、
どうしてお前はこんなに元気なんだ……。

だというのにイーニアは
晴れ晴れとした表情をしていた。

[イーニア]
ふふ、頂はこんなにも遠いのか。
まだまだ届かないじゃないか。

今になって、
こうしてこのような思いを抱けることが、
何故だか妙に嬉しくなった。

[アリエッタ]
エリス、イーニアが笑ってる!

[エリス]
う、打ちどころが悪かったのかしら……
その……先生って見た目に反して、
あの……結構、あれだから……。

[イーニア]
失礼なことを言うな!

アリエッタの頭をぽんぽんと叩いて、
イーニアは再び笑った。

[イーニア]
私は、まだまだ強くなれる。
気づかせてくれてありがとう、アリエッタ。

気づきを与えられれば、
魔道士は立派に育っていく。

この立場、この年齢になっても、
こうして気づきを得られることに感謝していた。

[イーニア]
はぁ……しかし、年明け早々、痛い目を見たな。

悪いことの暗示でないことを祈るばかりだ──
そう思い苦笑しながら、
イーニアは空を仰ぎ見ていた。

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 22:42| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

謹賀新年2017 イーニア編 〜 イーニアの決意

←掌の上で踊る会議

[イーニア]
黒猫の魔道士の所在は掴めたか?

[エリス]
……いえ。

[イーニア]
アリエッタと違って、
どこにいるかすらわからないとはな。

[イーニア]
魔道士協会にぜひほしい。
──絶対にほしい逸材だが、
神出鬼没だな、あの魔道士は。

[エリス]
あー……はは……。

エリスはもう笑うしかない。

探せども探せども見つからない。

だけどまたいつかふらっと現れる。
そんな気がしていた。

[イーニア]
さて、エリス。お前に少し話があってな。

街を歩きながら、イーニアは言う。

[エリス]
……はい?

[イーニア]
エリス。お前、私のあとを継げ。私は楽隠居だ。

[イーニア]
引き継ぎも必要ないだろう。
何かあれば全てメリィに聞け。

[イーニア]
ああ、そうだ。連中には気をつけろよ。
ああいう手合は隙を見せたら、
面倒なことになるからな。

[エリス]
えっ、ちょ……先生、あの……。

[イーニア]
ん?

[エリス]
先生、い、引退なさるんですか?

[イーニア]
しばらくは協会に残るが、実務はもうやらないぞ。

イーニアはこともなげに頷いてみせる。

[イーニア]
世界は広い。だけど私には、
世界を見渡せるほどの力はもうない。

[イーニア]
そろそろ私は休もうと思う。

[エリス]
そんな……。

エリスはかけるべき言葉が見当たらず、
内心で慌てふためいていた。

[イーニア]
年が明ける前に、私はこの役を降りる。
そう決めていたのだ。

[イーニア]
世代交代だな。ふふ、いったいいつまで、
ここに居座っているんだって話だが……。

[エリス]
先生……。

[イーニア]
私は決めていたんだ。
今の立場を任せられる逸材が出てきたら、
ここを譲ろう、とな。

[エリス]
ですが、仮に降りるとしても、
それを引き継ぐのは私では──

エリスが歩みを止める。

[イーニア]
お前の功績は素晴らしい。
怪獣を押さえつけて被害を最小限にとどめている。

[イーニア]
何の気まぐれか、
今は穴を掘っているようだしな。

[エリス]
……はい。山奥に籠っているので、
人にも迷惑はかけていません。

[イーニア]
あれの監視はお前にしかできないが、
私の代わりもお前にしかできない。

[エリス]
何故、今になって……。

[イーニア]
やりたいことがあるんだ。

[エリス]
……やりたいこと?

イーニアは頷いた。

[イーニア]
私は恐らく世界でいちばん魔道士を見てきた。

[イーニア]
言ったように天才も多くいたし、
そういう連中が作った道を歩んできた。

[イーニア]
何度となく後塵を拝し、屈辱を味わった。

[イーニア]
必死に努力したさ。勝つために。
実際に多くの魔道士に打ち勝ってきた。

空を仰ぎ見ながら、イーニアは言う。

それは彼女の、
誰にも語ったことのない本音だった。

[イーニア]
大魔道士にも勝った。
天才だの麒麟児だの、褒め称えられる連中にも、
死ぬ思いをしながらそれでも勝ってきた。

[イーニア]
どうして私は、戦ってきたと思う?

[エリス]
私にはわかりません……。

[イーニア]
いつの時代も彼ら彼女らには花があった。
羨ましい。かっこいいとも思う。

[イーニア]
だが……それ以上に嫉妬していたんだ。
華やかな舞台に立ち、格好良く魔法を使う……
そんな大魔道士たちに。

[エリス]
魔道士の教育に励む先生の言とは思えません。

エリスは苦笑いを浮かべて、
イーニアの顔を見た。

[イーニア]
魔道士は人のためにあるべき。
人に奉じ、世界の発展のため、生きるべき。

[イーニア]
今もその思いは変わらない。
だが嫉妬をおさえることはできない。

[イーニア]
人間は感情の生き物だ。
心と体に宿る熱意を……。

[イーニア]
私はおさえることができそうにない。

  ◆  ◆  ◆

[イーニア]
世界は大いに発展した。街を見ろ、エリス。

[エリス]
はい。

魔法の歴史は、数百年も進んだと言われる。

たったひとりの魔道士が、
魔法体系まで変えてしまうのは、
イーニアですら経験したことがなかった。

[イーニア]
──アリエッタを倒すぞ、私は。

[エリス]
えっ。

[イーニア]
何を驚いている。

[エリス]
えっ、いや……えーっと……?

[エリス]
つまり……アリエッタと戦うんですか?

[イーニア]
ああ。当然だ。

[イーニア]
いつ以来だろうな。
魔道士協会の立場を離れ、自由になった。

[イーニア]
私は……私のやりたいことをしてみたいんだ。

イーニアには、魔道士としての思いがあった。

魔道士である以上は、誰しもが抱く。

自分が最も強く、
最も素晴らしい魔道士であるという感情。

[イーニア]
あれは間違いなく頂点の魔道士だろう。
やることなすことスケールが違いすぎてな。
最近は胃が痛いのを通り越して痛快ですらある。

[イーニア]
だがどうだ? 私はアリエッタに負けているか?

[イーニア]
私が学んできた魔法と、魔道という道のりは、
たった十数年しか生きていないあの子より
劣っていると思うか?

身長は少し……と思ったエリスだが、
その思考を打ち消してかぶりを振った。

[イーニア]
勝ち負けではなく、己の魔法を納得のいく形で
極めていけばいい。そう教えていたのにな。

[イーニア]
私は負けなくない。誰にもだ。

[エリス]
先生……でも何故、今なんですか?
それにアリエッタが戦ってくれるとは、
到底思えません……。

アリエッタは子どもである。

気まぐれだし、
人のことを考えているのかいないのか、
好きなように魔法を使う。

結果的に魔法の歴史を
ひとりでひっくり返したと言われるものの、
地位や名誉に頓着する性格ではない。

[エリス]
あの子の功績は誰もが認めるところです。
魔力の少ない一般の人々ですら、
今はよりよい生活ができているのも事実。

[エリス]
稀代の大魔道士であることは、
否定のしようがありません。

様々な魔法の発明や魔法の使い方、
魔道医学界に革命を起こし、
ハーネット商会の設立にも深く携わった。

魔道士たちが辿った道のりをひとりで打ち壊し、
何ものにも及びつかない魔法の可能性を
アリエッタという少女が示してみせた。

しかし──

[エリス]
しかし、それ以上に、
魔法の歴史とともに歩んできた先生の偉業は、
色褪せるものではありません。

[エリス]
その偉大な歴史の前に、
勝ち負けなんて瑣末事じゃありませんか。

[イーニア]
今まさに大魔道士と呼ばれる若い力を見て、
戦おうという気持ちが前に出てこない連中は多い。

[イーニア]
今日の会談を見ただろう?
ある程度の立場につけば魔道を極めることより、
地位を守る、そんな保身に走る奴らばかりだ。

[イーニア]
私にはそれが我慢ならない。
倒すと決めたんだ。絶対にやるぞ、私は。

辣腕とも称されるイーニアは、
こうと決めたら頑として譲らない。

魔道士協会をその細腕で引っ張ってきた、
自信と自負がそうさせるのだろう。

だがエリスには不安があった。

あれは年上だからとか、相手の強弱が云々とか、
そいうったことを考えて行動する子ではない。

さすがの先生も……
アリエッタにやられてしまうのでは?

そんな不安が。

  ◆  ◆  ◆

[イーニア]
年が明けたら私はアリエッタと戦う。
そのための修行をしなければならないな。

[エリス]
もう数日とありませんが……。

[イーニア]
うむ。だが私はやるぞ。

[エリス]
無理はお体に障ります……よね。

[イーニア]
む。なんてことを言うんだエリス。
私は体は小さいかもしれないが、
こう見えてなかなかヤングなところがある。

[イーニア]
スイーツが好きだしな。

[エリス]
……そうですか。あはは。

[イーニア]
策を弄して勝つことはできるだろう。
恐らくああいう手合はこっちの攻撃を
あまり避けようとはしないからな。

[イーニア]
だが──それではダメなのだ。
正面から勝負を仕掛け、勝たなければ。

[エリス]
……あの子の魔力は無尽蔵です。
いくら先生でも、正面からというのは。

戦うのは問題ないにしても、
相手はあの怪獣である。

真正面から挑んで死にかけた連中の多いこと。

あのモンスターは、
魔法を直撃させても耐えうるだけの頑丈さがある。

そこが問題である。

[イーニア]
魔法をぶつけてもぶつけても、
それでも耐える頑丈さ。

[イーニア]
だが魔法の撃ち合いで倒さなければ、意味がない。

そう……何かしらの策を使えば、
容易ではないにしろ
アリエッタを倒すことぐらいできる。

しかし正面から魔法を撃ち合うのは、
互いの魔力の問題から、
こちらがジリ貧になるのは目に見えていた。

こちらの魔力が枯渇する前に倒さなければ、
持久戦では圧倒的不利である。

[イーニア]
……私はしばらく修行してくる。
あとのことは全て頼んだぞ。

[エリス]
えっ、嘘ですよね、先生……。

[イーニア]
魔道士協会にはメリィもいる。大丈夫だ。頑張れ。

それだけを言い残して、
イーニアは夜の街へと姿を消した。

最初で最後の怪獣退治→

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 22:39| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

謹賀新年2017 イーニア編 〜 掌の上で踊る会議

イーニア・ハーメティック・ソルルスト・
ラクトリティシア・ウォルヴィアラ・
メメスリスムルナ・ストラマー3世は覚悟した。

思えば長い人生である。

巨凶と呼ばれた古代の魔道士と渡り合い、
多くの大魔道士を牽引し魔道士協会を設立。

魔道士協会の最古参理事として、
数多の魔道士育成に力を注いできた。

大魔道士になった教え子は数え切れないほどで、
世界中から大先生と尊敬と羨望の眼差しを集める。

イーニア.jpg

[イーニア]
ふぅ……。

そんなイーニアの覚悟が、
目の前の少女に伝わっているだろうか。

いや──それはないだろう。

なにせ彼女は、魔道士協会に籍を置きながら、
魔道士協会を悩ませる怪獣なのだから。

[イーニア]
お前を懲らしめると決めたからには、
私は一切手加減をしないぞ。

[イーニア]
一線を退いたとはいえ、
お前に後れをとっているとは思っていない。

[イーニア]
覚悟しろ、アリエッタ。
お前には一番キツい魔法をお見舞いしてやる。

  ◆  ◆  ◆

[イーニア]
お歴々には、わざわざご足労願って悪かったな。
よく集まってくれた。

サネー.jpg

[サネー]
嫌ですわ。
先生のお呼び出しとあらば、
我々はどこへでも馳せ参じますのに。

[イーニア]
くだらないおべっかはよせ、サネー。
その序列が嫌だから、
お前は魔道士協会を出ていったのだろう?

イーニアは、サネーを一瞥してニヤリと微笑んだ。

[イーニア]
今や「魔道士評議会」の幹部だというではないか。
対等な立場なのだ。へつらうことはないのだぞ。

この世界には、
魔道士たちが所属する大きな団体が
およそ4つほど存在している。

もっとも古くから存在しているのは魔道士協会。

所属する魔道士は最多。
世界への影響力も大きく、
何より大魔道士たちに絶大なタレント性がある。

[サネー]
確かに我々、「魔道士評議会」は、
魔道士協会を抜けた者が多く所属していますわ。
しかし、先生を慕う者はとても多いのです。

[サネー]
数百年もの間、魔道士協会に所属し、
そして魔道士育成に尽力する先生を
尊敬しないものなどこの世界にはいませんわ。

「魔道士評議会」は当時、魔道士協会にいた
数名の魔道士たちが抜け作った団体である。

「魔法は魔道士のためにある」を理念とし、
魔法の研究に力を注ぎ続けている。

[イーニア]
まあ、そんな話はいい。
お前たちに集まってもらったのはほかでもない。

[イーニア]
この世界には多くの魔道士がいるが、
最近、魔道士たちのモラルの低下が顕著だ。

[イーニア]
世界中で魔道士同士のいさかいが絶えず、
多くの一般市民も困惑している。

[イーニア]
成長につながるもの、娯楽として楽しめるもの、
そういったものであれば気に留める必要はない。

[イーニア]
しかしどうだ?
今、魔道士たちがやっているのは、
まるで子どもの喧嘩ではないか。

[イーニア]
だからこそ今一度、我々が共通認識を持ち、
警笛を鳴らすべきなのでは──
と考えている次第だ。

えらそうな人.jpg

[えらそうな人]
ふん、イーニア先生ともあろうものが、
言葉の選び方が悪いのではないか?

[えらそうな人]
魔道士協会は、"最も危険なもの"を
扱いきれていないではないか。

[イーニア]
ぐぬ……。

「魔道士機構」に所属する老齢の男性が、
イーニアの最も痛い部分を的確にえぐる。

[えらそうな人]
「魔道士機構」は最強たれ。
これこそが我々が掲げる最大の標語であり、
我々の存在意義である。

[えらそうな人]
争いは結構なことではないか。
戦い、強くなり、そしてさらなる強敵を求む。
それこそが魔道士たらんとする理由である。

[サネー]
その最強を掲げる「魔道士機構」の魔道士は、
ただのひとりを数十人で囲んだと
もっぱらの噂ですわよ。

[えらそうな人]
ふん、噂は噂に過ぎん。

「魔道士機構」には、好戦的な魔道士が多くいる。

相手が魔道士だと知るや、
襲いかかるような危険な連中だ。

[イーニア]
こんな場所で言い争ってどうする。

[イーニア]
いいか? 魔道士がつまらぬ争いをしていれば、
いずれ人々は魔道士を疎んじるようになる。

[イーニア]
人に奉じる魔道士が嫌われでもしてみろ。
世間の声に潰され、消えざるを得なくなるのだぞ。

イーニアの言葉に、
集まった皆が神妙な顔を浮かべる。

[イーニア]
確かに、うちには少し手を焼く魔道士がいる。

[イーニア]
だがあの子の功績は、ここにいる連中──
いや、たとえ百万の魔道士を集めようとも
決して乗り越えられるものではない。

[イーニア]
いつかのように数十人で襲いかかってみるか?
それとも金で買収するか?

[えらそうな人]
ぐっ……。

えらそうな人が歯噛みする。

[イーニア]
最強を目指すのは結構だが、
素行の悪さで目立つのは本意ではあるまい。

あのイーニア・ストラマーに凄まれては、
たとえどのような魔道士であろうと、
そうそう言い返せるものではない。

えらそうにふんぞり返っていた老齢の男性が、
今や借りてきた猫のように縮こまっている。

[イーニア]
さて、各団体が抱える素行不良の魔道士を
リストアップした。エリス。

エリス.jpg

[エリス]
はい、先生。

魔道士協会最年少理事──エリスが、
席を立ち、それぞれに紙を配っていく。

[イーニア]
ゆっくりと目を通してくれ。
それが我々が抱える問題点でもある。

  ◆  ◆  ◆

議論は白熱した。

やれ若い魔道士はダメだの、
教育がなっていないだの……。

歴史を持ち出し、魔道士とはかくあるべきと
馬鹿の一つ覚えのように語りだす者までいた。

エリスはかなり呆れていた。
集団での会議や議論はいつもこうだ。

行き着く先はわかりきっているのに、
その答えに辿り着くまでの道のりが長い。

容易に導かれる結論が全く見えていない、
あるいは理解していない者が多いこと。

結果を言えば、"取り締まりを強化する"とか、
そういうところに落ち着くのだ。

皆が納得し、理解し、行動できる範囲での、
最もわかりやすい帰結である。

"お前たち、睨まれているぞ"と
一言添えておくだけでしばらくは大人しくなる。

この場にいる全員が、イーニアの手の上で
踊らされているという事実に全く気づいていない。

[エリス]
(わざわざ先生が出るまでもないのに……)

その反面、イーニアの姿には、
感嘆を禁じえなかった。

[イーニア]
お前たちは自身の行いに
何ひとつ誤りがなかったと言いたいのだな?

[イーニア]
しかし実際に、
我々は魔道士を管理できていないではないか。

[イーニア]
幸いにして一般の人間には被害がない。
だが文化財や遺跡が魔法で破壊されている。

[イーニア]
山が吹き飛んだぐらいで何だという。
地形が少し変わった程度で何だという。

[イーニア]
歴史や教育の前に、我々こそが今一度、
原点に立ち戻るべきなのだ。

[イーニア]
若いものは我々を見て道を知る。
道を知れば歩むことができる。
歩むことができれば学ぶこともできる。

[イーニア]
知るということはつまり、
様々なことに気づけるということだ。

[イーニア]
気づきを与えてやれば、
魔道士は立派に育っていくだろう。

[イーニア]
今回、最も重要視すべきは、
そういうところにこそあるのではないか?

イーニアの言葉を聞いた彼らは、
一様に押し黙り目を伏せた。

何が悪いかを糾弾するのではなく、
己の姿勢を正すべきだと彼女は説く。

[エリス]
(さすが先生……言葉だけで、
ほかの大魔道士たちを黙らせてしまった)

[エリス]
(そしてひっそりとアリエッタの暴走を
正当化しようとしている……)

[エリス]
(でもダメです、先生……
たとえ我々が姿勢を正したとしても、
アリエッタは同じ道を進んではくれません)

  *  *  *

イーニアが椅子に深く腰掛けて、
大きくため息をついた。

[エリス]
先生がいなければ、各団体の魔道士は
ひとつにまとまることができないでしょうね。

[イーニア]
私はそうは思わない。
本来、私のようなものは、
隠居でもしているべきなのだ。

[イーニア]
ああは言ったがな。若いものこそが、
道を切り開いて進まなければ、
魔道は成長しないだろう?

[エリス]
道は、100人の魔道士ではなく、
ひとりの天才が作るものだと、
いつかどこかで聞いたことがあります。

エリスは苦笑しながら、そんなことを言う。

[イーニア]
ふふ、面白いことを言う。

[イーニア]
今まで多くの天才と呼ばれた魔道士を見てきた。
だが彼らと同じところを私は歩めなかった。

[エリス]
何故でしょう……?

エリスは悩む素振りを見せる。

アリエッタならここで、
イーニアが小さいから! と答えるだろう、
と思った。

[イーニア]
我々、凡人はな、100年も経たなければ、
天才の進む道が道であったと気づけない。

[イーニア]
言い魔道士はたくさんいる。
中には大魔道士もいるだろう。

[イーニア]
私は道を切り開くことができなかった。
天才たちが作った魔法や魔道を、
必死に噛み砕き、そして理解する。

[イーニア]
そして皆がわかるように教えてやる。
それが精一杯だった。

[イーニア]
私はそういう道しか進めなかった。
だから羨ましいよ。
悩むことなく、己の道を進める者が。

[エリス]
先生……。

イーニアの言葉には、数百年と生きた者の
特別すぎる重みがあることをエリスは知った。

[イーニア]
そういえば、アリエッタはどうしてる?
元気にやっているのか?

[エリス]
え、ええ……そのー……まあ、そのー……。
あのー……えっとー……はは、ははは……。

[イーニア]
最近、悪さをしていないようじゃないか。
どうしたんだ? ついに封印したのか?

[エリス]
最近、穴を掘っています。

[イーニア]
は?

[エリス]
私も……正直もうわかりません……
でも……穴を掘っています……。

イーニアはその言葉を聞き、頭を抱えた。

いつの時代も、天才というのは、
何をするのか何がしたいのか、
理解することができない。

[イーニア]
大人しくしているぶんには……
まあ、いいのか……?

イーニアの決意→

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 22:38| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

謹賀新年2017 ファム&フェルチ編 〜 出来ました〜!試食会です

←早速、作ってみましょう!

ブレド.jpg

[ブレド]
なあ、カルテロ。
ファムが、なんかすごいものを作ってるらしいぞ。

カルテロ.jpg

[カルテロ]
知ってるよ。
今回は、香水じゃなくて料理らしいな。

[ブレド]
ファムの作った料理か……。
食べてみたいな。

[カルテロ]
でも、それが結構複雑な料理らしくて、
色々な食材を天上岬中から
集めているんだってよ。

[ブレド]
なに!?
食材が足りないなら、うちのパンを提供するぞ!

[カルテロ]
バカ! パンが材料になるかよ!?
それに、いつも食い慣れたパンなら、
苦労して作る必要ないだろうが!

[ブレド]
それもそうか……。
でもファムの料理、食べてみたいなー。

[カルテロ]
まったくだぜ。

  *  *  *

[アネーロ]
ファム様に頼まれた「空洞だらけの白い茎」
ようやく見つけることが出来たわ。

早く工房へ戻ろうと、
アネーロは工房への帰路を急いでいた。

ベアード.jpg

[ベアード]
アネェェェーロォォォー!!

[アネーロ]
うわ! びっくりした……。
なんだ、お父さんか。

[ベアード]
親に向かってなんだとはなんだ。
しかし、水くさいぞアネーロ!

[ベアード]
探したい植物があるのなら、
植物学者であるこの父を
なぜ頼ってこないのだ?

心底うんざりした顔で、
アネーロはため息をつく。

そして、今摘んできたばかりの植物を突き出す。

[アネーロ]
私は、ファム様みたいな調香師を
目指してるの。このぐらいの素材、
ひとりで採れて当たり前なの。

[ベアード]
だ……だが、
私に頼めば、生息地など直ぐに……。

[アネーロ]
それじゃ、意味ないのよ。
それにファム様は、この天上岬にある素材に
ついてなんでも知ってるわ。

[アネーロ]
それこそ、お父さんが知らない
稀少花の場所までね。

[ベアード]
ぐぬっ! た、確かに……
ファムくんの才能は、私も認めるところだが……。

[アネーロ]
私は一歩でもファム様に近付きたい……。
だから、お父さんの力は借りないって
決めたの!

[ベアード]
そ、そうか……。

がっくりと肩を落とす。
その背中には、父親の哀愁が宿っている。

[アネーロ]
けど……。ありがとう。
気にしてくれて……。

[ベアード]
アネーロ? 今、ありがとうと言ったか?
アネエエエエエエエロオオオオオオッー!

[アネーロ]
あーもう、うるさい!
大声で名前叫ぶのもうやめてよ!

  *  *  *

素材は一通り集まったので、
ファムとエテルネは、
早速調理を開始する。

作業台の上に置かれた重箱風の木箱に、
完成した色とりどりのおせちが、
詰め込まれていく。

[ファム]
エテルネ。
そっち茹であがりそうですか?

[エテルネ]
はい、あと少しです。

[ファム]
では、あとはこうして……こうして……。

あまり料理は得意ではない
と言っていたファムだったが、
木箱の中のおせちは見栄えがよかった。

[エテルネ]
(お母様すごく真剣……)

[エテルネ]
(こんな真剣な表情を見せるのは、
香水を調合する時以外になかった……)

[エテルネ]
(おせち作りは、お母様にとって
いい刺激になったのかも)

[ファム]
ふう……ようやく完成です。

[エテルネ]
できましたね。

あとは、新年が来たら
みんなに食べてもらうだけだ。

ファムとエテルネが、
丹精込めて作ったおせち料理。

果たしてみんなは、
どういう反応をしてくれるだろうか?

  ◆  ◆  ◆

快晴の下、テーブルと椅子を並べて、
おもてなしの準備は大体整った。

天上岬には、これまでにないくらい
沢山の人が集まっている。

[ナルナ]
明けましておめでとう。今年もよろしくね?

[ルィナ]
今後とも、良きおつきあいをお願いしますわ。

至る所で、新年の挨拶がかわされていた。

[ロサ&ロレシャ]
今日が新年ですってね。
今年こそ、リリー姉妹に勝ってみせるわ。

[フェルチ]
どうぞ、お手柔らかに……。

[ロサ&ロレシャ]
それと……今年もよろしく。
べ、別に挨拶ぐらいしてもいいでしょ?
そんなびっくりしないでよ。

しばらくして、ファムとエテルネが
完成したおせち料理を持ってやってきた。

[ファム]
お待たせしました。
皆さんの力をお借りして出来た
見よう見まね風おせち料理です!

[エテルネ]
お口に合うかわかりませんけど……。
お召し上がりください。

[ブレド]
ボクはファムの手作り料理が
食べられるなら、それでいいや。

[カルテロ]
オイラだって!

机の上に並べられた重箱の中には、
多種多様な料理が、華やかに彩られて
入っている。

[ベアード]
ほう、これは見事なものだ。

[アネーロ]
ファム様は、料理の腕も素晴らしいのですね。

[ファム]
盛り付けが綺麗なのは、
エテルネが上手くやってくれたお陰なのです。

[フェルチ]
えー。盛り付けや色のセンスは、
ファムよりも勝ってるかもね。

[エテルネ]
そんな……私なんてまだまだです。

見てるだけじゃ、飽き足らない。

目の前のおせち料理を見て、
みんなそわそわし始めた。

[ロニール]
和ノ国の文献を元に
再現されたおせち料理……。
僕は今、とても感動しています。

[ヤネット]
でも食材は、ほとんど代用品ですから、
食べてみるまでわかりませんよ?

フェルチが、重箱の中のおせちのひとつを
見て首を傾げている。

[フェルチ]
ねぇ、この穴の空いた食べ物はなに?

[ファム]
それはですね……スバス! という料理です。
和ノ国では、レンコンという野菜を
使って作るそうです。

[エテルネ]
けど天上岬には、レンコンと言う野菜が
なかったので、「空洞だらけの白い茎」で
代用しました。

[リグス]
この……粉々になっている黄色いものはなんだ?
まるで、野獣が握りつぶしたような
雑な物体にしか見えないのだが……。

[ゴゴング]
うほっほっ!

[エテルネ]
「いいから黙って食え」と言ってます。

[リグス]
……。

[エテルネ]
あと「お前なかなかいい男だな」
とも言ってます。

[リグス]
ひぃっ!

[ナルナ]
この小さなつぶつぶが集まっているのは?

[ロニール]
これは、おそらく「カズノコ」ですね?
天上岬にある「小粒すぎる葡萄」を使って
上手く再現されてますよ。

[ナルナ]
どんな味がするのか、
まったく想像つかないわ。

そんなナルナにファムは、
2本の小さな棒を差し出した。

それは「箸」という和ノ国の食器のひとつだった。

[ファム]
見てるだけじゃ、つまらないですよね?
遠慮せず、頂いてください。

[ファム]
私もお腹空きましたし……。

[カルテロ]
食べよう食べよう!
オイラ、とっても腹ぺこ。

みんな、慣れない箸に苦戦しながら、
ファムとエテルネが作ったおせちを口に運ぶ。

[ナルナ]
ん? この「カズノコ」っていう食べ物……
酸っぱくて……それにとても甘い!

[ヤネット]
和ノ国でカズノコは、
子宝に恵まれますようにという願いを
込めてみんな食べるそうですよ。

[リグス]
こちらの「ダテマキ」は卵料理か……美味いな。

[ハナス]
よかったのう。キッキー殿。

[ロニール]
僕は「コンブマキ」を頂きます。
なんでも、それを食べると知識に
恵まれるそうですね。

[ブレド]
これがファムの作った料理か……。感動だ。

わいわい騒ぎながら、
みんな喜んでおせちを食べてくれている。

ファムとエテルネは、目を合わせて
……そしてにっこりと微笑んだ。

本場のおせちとは
多少趣が違っただろうけど……
それでも喜んで食べてくれているのは嬉しい。

頑張って作ったかいがあったというものだ。

  ◆  ◆  ◆

苦労して作ったおせち料理。

食材はすべて天上岬のものだが……。

集まってくれたお客たちは、
ワイワイ楽しそうに食べている。

[エテルネ]
よかったですね、お母様。
みなさん、満足してくださってるようです。

[ファム]
食材それぞれに
人の様々な願いを込めた多様な料理か……。
うーん。

[エテルネ]
どうしました?

みんなの様子を見ながら、
ファムはひとしきり唸ってた。
そして──

[ファム]
エテルネ、明日から香水作りに取りかかります。
手伝ってくれますか?

[エテルネ]
王様に献上する香水のアイディアが
浮かんだのですね?
もちろんお手伝いします!

  *  *  *

ファムはエテルネとふたりで、
工房にこもった。

香水作りに必要な素材が、
大量に作業台の上に置かれ、
調香器具を動かす音が鳴り止まない。

[エテルネ]
(ふう、手が疲れちゃった……)

素材を粉状にする引き臼を回す手を止めて、
エテルネは隣にいる母親の背中を
見つめる。

[ファム]
……。

ファムは、さきほどから一言も発さずに、
素材の調合と言う一番大事な作業を
行っている。

香水作りにおいて、素材をどの分量で
配合するかは、香水の出来を決める
大事なポイントである。

調香師の経験と勘。
そして才能がものを言う作業だった。

[エテルネ]
……。

作業中の母はなにも言わない。
……呼吸すら止めているのではと、
思うほどの静けさ。

現在のファムは、調合素材の粉末を
一粒単位で調整している最中だった。

集中したファムには、エテルネであっても、
気軽に声をかけられない。

[ファム]
エテルネ……。こっちに来てください。

[エテルネ]
はい。

[ファム]
私の手元をよく見ててください。
私は、教えるのが得意じゃないので……。
あの……実際に見て、私から盗んで欲しいです。

そんなことを言われたのは初めてだった。

[エテルネ]
はい!

でもエテルネは、嬉しかった。
ファムとはじめて、弟子と師の関係に
なれたような気がしたからだ。

新しく生まれた絆。
エテルネは、この絆をいつまでも大切に
繋げておきたいと思った。

[エテルネ]
覚えます。お母様のやること全て……。
何一つ、見逃しません。

それを聞いたファムは、娘であり
愛弟子であるエテルネに満面の笑みを
浮かべるのだった。

[フェルチ]
(もう、私が口を挟まなくても大丈夫みたいね)

[フェルチ]
(エテルネという自分の背中を追いかけてくれる
子ができて、やっとファムも成長できた
……いえ、せざるを得なかったってところかしら)

[フェルチ]
(でも、ファムが立派になってくれたのは、
嬉しい反面。
……ちょっと寂しいかも)

  *  *  *

それからしばらくして、ファムは完成した
香水を持って王城を訪れた。

王や居並ぶ重鎮たちの前で披露した香水は──

[ファム]
じゃーん! これぞ名付けて、
ファムのよくばり香水セットです。

一つの箱の中に、小さな香水のビンが、
20種類近くも並んでいる。

[ファム]
王様の不安を取り除くには、
まず暗い顔をされている、周りの人々の
不安を取り除くことが先決だと感じました。

[ファム]
そこで私は、色々な悩みを吹き飛ばす
効果を持つ香水を何種類も作りました。

[ファム]
まずこちらの香水ですが、
親と子の気まずさを解消する香水です。

詰め込まれた香水を、
ひとつひとつ説明していくファム。

様々な祈りや願いが込められた
食材の詰まったおせち料理を見て
ファムが編み出した香水のアソートメント。

香水は、たったひとりの悩みを解決する
ものではいけない。周りの
人たちのことも救わなければ──

おせち作りを通して、ファムが
新たに感じた思い……。

それが、このアソートメントに
込められている。

王や、居並ぶ重臣たちは、
食い入るようにファムの説明を聞いていた。

のちにこの王国では、お祝いの日に
様々な効能を持つ香水の詰め合わせを
贈り合う習慣が生まれた。

その中でも、ファム・リリーが
自ら香水をチョイスし、製作した
「よくばり香水セット」は──

家族全員の幸せを願って送られる
定番の品として──

長くいつまでも人々に愛されたのだった。

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 22:33| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

謹賀新年2017 ファム&フェルチ編 〜 早速、作ってみましょう!

←おせちってなんですか?

ロニール.jpg

[ロニール]
この文献にありますとおり、
どこか遠くにある「和ノ国」では。

[ロニール]
お祝いに関する行事がとても沢山あり──

奇跡の香水製作の旅で知り合った
ロニールは、その後もたびたび
研究と称して天上岬を訪れていた。

[エテルネ]
凄いですね。こんな古い文献を
すらすら読めるなんて。

[ロニール]
僕も研究者の端くれですから。
この文献に載っているおせち料理も、
研究対象にしたいぐらいです。

[ファム]
その"おせち料理"とは、なんでしょうか?

ロニールは、
軽く咳払いしてもったいつけてから……。

[ロニール]
和ノ国の正月文化のひとつですね。
新春のお祝いに、様々な効能を持つ料理を
多種多様に揃えて……。

[ロニール]
それをみんなで食べたり、
お客様にお出ししたりして、
新しい年の健康や幸福を祈るんです。

[ナルナ]
マテリアルを求めて各地を旅してるけど、
「和ノ国」なんて聞いたことないな。
リグスは?

[リグス]
ない……。

ナルナたちも知らないとは……。
よっぽど遠くにある国なのだろう、
とファムたちは噂する。

[エテルネ]
そのおせち料理とは、
食べて祈るだけですか?
特別な効能があるわけではないのですか?

[ロニール]
効能があるかは、
文献には明言されていないですね。
あくまで縁起物として食べてるようです。

香水のレシピじゃないと知って、
ファムは隣でがっくり肩を落としている。

[アネーロ]
ファム様、香水のレシピじゃなくて
残念でしたね。

[ヤネット]
でも、たまには気分を変えて
料理作りもいいんじゃないですか?

[ファム]
香水作りに比べて、
料理は、あまり自信ないのです……。

[ファム]
でも、せっかくナルナさんたちが
来てくださったのです。
お家に寄ってってください。

[エテルネ]
あ、お母様。
こういう時、おせち料理で
お客様をもてなすんじゃないですか?

なるほどと言うように、
ファムはぽんっと手を打った。

[ナルナ]
あまり気を使わなくてもいいよ。

[リグス]
俺たちは、新年の挨拶に立ち寄っただけだ。
去年色々と世話になったしな。

[ファム]
まあまあそれはご丁寧に。
……で、「しんねんの挨拶」ってなんですか?

[リグス&ナルナ]
え!?

天上岬という場所は、
他とは違う特徴を持っていた。

その一つ──天上岬には、夜が訪れない。

しかしファムもいくつかの旅を経て、
夜というものを体験した。

日が落ち、日付が変わる概念が
あることを知ったファムだったが……。

世間は365日周期で新しい年に切り替わる
……ということまでは、
今一理解していなかった。

[エテルネ]
ふむふむ。
世間一般の人たちは、
新年を迎えるたびに──

[エテルネ]
今年もいい年にしましょうね、
とお互いに挨拶をするんですね?

[ナルナ]
知らなかったの?
そんな人たちがいたなんて、びっくり。

[ヤネット]
まあまあ、
それが天上岬育ちって奴ですよ。

[ファム]
作ってみましょう、おせち料理!
ナルナさんたちと一緒に、新しい年が
いい年になるようにお祝いしたいです!

[エテルネ]
でもお母様、
香水作りはいいんですか?

ファムは一瞬躊躇ったが──

[ファム]
き、気分転換ですよ……。
おせち料理を作ると、
いいアイディアが浮かぶような気がします。

  ◆  ◆  ◆

おせち料理を作ってみることにしたファムたち。

調香技術を学ぶために工房を訪れていた
駆け出しの調香師たちも、
調理を手伝ってくれるという。

[ファム]
まず、食材集めですね!

材料や作り方は、全て文献に書いてある。

「クリキントン」や「クロマメ」、「カズノコ」、
「カマボコ」などの魅力的なおせちが、
完成図とともに載っている。

[エテルネ]
でも、お母様。文献に載ってる食材は、
どれも天上岬では
手に入らない物ばかりです。

[ファム]
なんと!?
いきなり壁にぶつかってしまいました!

[ロニール]
待ってください。
ここに書かれている食材を
完璧に用意しなきゃいけないことはないそうです。

[ロニール]
たちえばおせちのひとつクロマメは、
マメな働き者になれるように
という願いを込めて食べるらしいです。

[フェルチ]
あら、ファムにぴったりの料理じゃない?

姉の言葉に、
ファムは露骨にカチンと来た顔をする。

[ロニール]
似たような食材であれば、
代用可能らしいです。

[ファム]
このクロマメというおせちは、
黒くて豆らしい食材で代用しても
いいってことですね?

[ロニール]
そうですね。
あと、大事なのは。、
甘く味付けすることらしいです……。

ファムは深く深くうなずいた。

どうやら、クロマメの代用品を探し出すのに、
自信があるみたいだ。

  *  *  *

シスル.jpg

[シスル]
この「タタキゴボウ」という料理、
まるで木を削って出来たような
料理ですね。

[エテルネ]
うーん。あまり美味しそうに見えないですね。

当然、天上岬には「ゴボウ」
という食材はない。

[ファム]
これは、裏庭に生えている
「春を待ちわびる根」で
代用できそうです。

[エテルネ]
なるほど。完成図と似てますしね。

[シスル]
よーし! では早速、この2本の剣で、
その根を切り取ってきます。

[シスル]
うりゃあああああっ!

と、シスルは両手に持った剣を
ぶんぶん回しながら、
裏庭に飛び出していった。

  *  *  *

[エテルネ]
次の料理は……クリキントンですか。

[エテルネ]
クリに似たような木の実はありますが、
どうしますお母様?

[ファム]
この文献の完成図を見る限り、
食材をすりつぶして作るようですね。

しばらくファムは、考えていたが……。

[ファム]
そうだ。これは、森にある
「石より堅い木の実」をすり潰して
代用できないでしょうか?

[エテルネ]
お母様。あの木の実は、
堅すぎて加工できない
と以前言ってませんでした?

ゴゴング.jpg

[ゴゴング]
うほ! うほ!

[エテルネ]
え? ゴゴングさんが……。なにか仰ってます。

[ゴゴング]
「堅い木の実は、私に任せて。
力だけはあるの」
……え、いいんですか?

[ゴゴング]
うっほっ! うっほっ!

[ファム]
では、加工はお願いします!
場所は私が教えますので!

[ゴゴング]
うほほっ、うほっ!

元気よく工房を飛び出すファムとエテルネ。

その背後から、子どもたちを背負った
ゴゴングが追従する。

こうしてみんなの協力を得ながら、
おせち料理の調理を
進めていくのだった。

  ◆  ◆  ◆

ロサ&ロレシャ.jpg

[ロサ&ロレシャ]
あのファムが、とても斬新なものを
作ってるらしいわ。

[ロサ&ロレシャ]
なんでも、今回は香水ではないらしいわね。
香水を越えた、なにか……とか。

ルィナ.jpg

[ルィナ]
あら、そこにいるのは、
芳風の調香師と呼ばれている
ロサとロレシャではありませんか?

[ロサ&ロレシャ]
そういう貴方は、
うっかり調香師のルィナさん
じゃないの。

[ロサ&ロレシャ]
あなたもファムが作っているものが気になって
見に来たのかしら?

[ルィナ]
いえ、単に気が向いたので。
ふらっと立ち寄っただけですよ。

[ルィナ]
そうそう。
ちょうど、新作の香水ができたのです。
試しに香いでみませんか?

[ロサ&ロレシャ]
え、遠慮するわ……。
あなたがうっかり屋さんなのは、
みんな知ってるから……。

[ルィナ]
そんな酷いです……。

  *  *  *

工房では、いまだにおせち料理の食材集めに
悪戦苦闘していた。

天上岬に咲く植物や、生息する生き物は、
他にはない特別なものばかり。

逆に天上岬以外では
当たり前のように手に入るものも、
ここでは入手しづらかったりする。

[エテルネ]
この「チョウロギ」という料理は、
どうしましょう?

[ファム]
それは、「曲がりくねった夏の名残り草」で
代用できそうですね。

[ファム]
でも困りました。
「ダテマキ」という料理を作るためには、
どうしても卵が必要です。

[エテルネ]
どんな卵でもいいのでしょうか?

[ヤネット]
味さえしっかりしていれば、
どんな卵でもいいんじゃない?

[ナルナ]
一旦、天上岬から降りて、
卵を調達してこようか?

[ファム]
そんな!
お客さんを働かせるわけにはいかないです!

[ナルナ]
でもさ、じっと待ってるのも暇で暇で……。

その時、工房の隅にいた謎の鳥がキキーッと
けたたましく鳴きだした。

ハナス.jpg

[ハナス]
どうしたキッキー殿?

手の取りを乗せた
高貴な少女──ハナス。

彼女もまた、調香師の腕を磨くために
身分を隠してこの天上岬に
来ている見習いのひとりだった。

[ハナス]
なに? 産まれる?
卵か……卵が生まれるのか!?

[ハナス]
誰か! お湯を用意せい!
それと綺麗な布を沢山もってくるのじゃ!

  *  *  *

[ハナス]
でかしたぞ、キッキー殿。
この卵、よかったら使ってくれい……
とキッキー殿が申しておる。

[ファム]
そんな……。
キッキーさんの大事な卵を
料理になんて使えないです。

[ハナス]
心配するな。キッキー殿は、
毎朝こうして新鮮な卵を産むのじゃ。
だからほれ。

[ファム]
毎朝……。
それでは、ありがたく使わせていただきますね。

[ハナス]
おっと。
妾は、下々の者と喋ってはいかんのじゃった。
いまのは忘れてくれい。

手渡された卵は、まだほかほかと温かかった。

[エテルネ]
これで美味しいダテマキが作れそうですね。
お母様?

  *  *  *

グラ.jpg

[グラ]
ファム殿。
なんとか「黒巻きキノコ」を採集できたな。

[ファム]
グラさんが、
手伝ってくださったおかげです。

[グラ]
だが、よくあんな奥まった狭い場所に、
このキノコがあることがわかったな?
勘にしては鋭すぎるぞ。

天上岬の山の湿った場所で、
たまに見かける黒巻きキノコ。

とても希少なキノコで、
見かけることすらほとんど希だった。

しかし、ファムは
そういうキノコの生息場所も
"なんとなく"わかるのだと言う。

[エテルネ]
うわー。このキノコの形、
文献にある「コンブマキ」にそっくりですね。

[エテルネ]
さすがお母様です。
よくこんな珍しいキノコを知っていましたね?

[ファム]
コンブだから、ヨロコンブ。喜ぶ……。
ププッ! ヨロコンブ……ぷぷぷっ!

[グラ]
いかがしたファム殿?

[エテルネ]
コンブ……コンブ。ヨロコンブ……。ぷぷっ!
もうお母様、変なこと言わないでくださいよ!

[ファム]
でも、面白いでしょ?
コンプコンプ……ヨロコンブ。

[エテルネ]
はい! ぷぷぷっ。

[グラ]
(そ、そんなに面白いかな……?)

出来ました〜!試食会です→

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 22:30| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

謹賀新年2017 ファム&フェルチ編 〜 おせちってなんですか?

誰もが、レシピの再現は
不可能だと思った奇跡の香水──

ファム.jpg

ファム・リリーは苦難の末、
奇跡の香水の再現に成功した。

その噂は、天上岬から
遠く離れた王都にも届いた。

[王様]
調香師、ファム・リリーに申し渡す。

[ファム]
はいっ!

[王様]
そなたの調香師としての腕を
見込んでの依頼じゃ。

[王様]
そなたの作る香水で、
余の心の不安を取り除いて欲しい……。

[ファム]
むむっ。 心の不安ですか……。

[王様]
できるか?

できない、と答えるのは簡単だった。

しかし、ファムは感じていた。

目の前にいる王のどことなく寂しげな気配を──

それだけではない。
周囲に控える王の親族、重臣たち全てが
不安を抱えた表情をしているのを──

[ファム]
わかりました。お引き受けいたします。
王様のお心の煩いを取り除く
香水を作ってご覧に入れます。

[王様]
おお! そうか……。
そう言ってくれると思ったぞ。

[王様]
ではファム・リリーよ。よろしく頼む。
期待しているぞ。

[ファム]
お……お任せください!

  *  *  *

天上岬に戻ったファムは、
早速王様から依頼された香水の製作に取りかかる。

だが、そう簡単に事は進まなかった。

フェルチ.jpg

[フェルチ]
不安を取り除く香水か……。
なんだか、とてもふわっとした依頼ね。

[ファム]
王様は色々抱え込んでいるようでした。
その様子に胸を打たれて、
うっかり引き受けちゃいましたが……。

[フェルチ]
でも、ファムのことだから、
きっと勝算があるんでしょ?

姉のフェルチは、
どこか意地悪げな表情を作ってみせる。

[ファム]
ふふふっ。さすがお姉さまですね。
私の考えはお見通しですね。

[フェルチ]
(この所、ファムの表情から、
昔のような頼りなさがなくなった
ような気がする……)

[フェルチ]
(やはり、奇跡の香水を完成させたことが
ファムの自信に繋がったようね)

[ファム]
ぬっ、ふっふっふっ!

[フェルチ]
ファム……。その笑い方、少し不気味よ。

[フェルチ]
でも自信があるのは、結構。
今回、私は手伝わなくてもいいわね?

がしっと少々乱暴に
フェルチの服の袖がつかまれた。

そして眼前に目に一杯の涙を溜めた
ファムが迫ってくる。

[ファム]
実は、自身なんてこれっぽっちもないんです〜。
どうしたらいいのでしょう?

[ファム]
お姉さま、助けてください〜。

[フェルチ]
(……さっきの自信ありげな態度は
なんだったのよ!)

そんないつものやりとりを
交わしているふたりのところに……。

アネーロ.jpg

[アネーロ]
ファムさま〜! お待たせしました!

エテルネ.jpg

[エテルネ]
お母様、準備完了です。

工房の方からやってきたのは、
見習い調香師のアネーロとエテルネだった。

[フェルチ]
その格好……。
香水の素材採りに行くのね?

[エテルネ]
お母様が素材を集めながら、
製作する香水を考えたいって……。

[エテルネ]
勉強のために、私たちも同行させてもらうんです。
行きましょう、お母様!

可愛い娘と愛弟子の登場で、
先ほどまで泣きべそを
かいていたファムは──

[ファム]
行きますよ、ふたりとも。
今日は、素材採りの基礎を教えてあげますね。

いつの間にか、一人前の調香師らしい
顔つきになっていた。

[アネーロ]
はーいファム様!

[エテルネ]
お願いします、お母様!

[フェルチ]
(立ち直りの早さだけは、人一倍なんだから……。
本当にファムひとりに任せて大丈夫かしら?)

  ◆  ◆  ◆

(道中)
お正月にまつわる料理が、詰め込まれたものにゃ。

香水の素材を求めて、
ファムはいつもよりも深い森の奥に
入り込んでいた。

[ファム]
これは、毒無草ですね。こっちがニガニガ草です。

[ファム]
どっちも香水の素材ですが、
癖があるので調合に使うには
注意が必要です。

見つけた素材について、
ひとつひとつ弟子たちに説明しながら、
ファムは進んでいく。

[ファム]
毒無草は、煮沸して繊維を取り出して、
絞った汁を香水の素材として
利用できます。

[ファム]
ニガニガ草は、このとおり……ぱくっ!
にがっ!

[ファム]
……このように、とーっても苦いですけど、
生臭さを相殺する効果があります。

[エテルネ]
さすがお母様。勉強になります。

[エテルネ]
それで……
香水のアイディアはなにか浮かびましたか?

ファムは難しい顔をする。
先ほどのニガニガ草の味が
まだ口の中に残っているからではあるが……。

新しい香水のアイディアが
浮かんでこなかったのもある。

[ファム]
ん? クンクン……。いい香りですね。

[ファム]
きっとこの先に、稀少花が咲いてます。
行ってみましょう。

先を行くファム。

[アネーロ]
さすがファム様ね。
匂いだけで、稀少花かどうかわかるなんて。

隣にいるエテルネは、
子犬のように懸命に鼻をヒクヒクさせていた。

[エテルネ]
アネーロ、香りを感じる?

[アネーロ]
うーん。……全然。

[エテルネ]
草木の香りは感じるけど、私も全然……。
お母様は、やっぱり凄いな。
天性の才能なのかな?

[アネーロ]
そりゃあファム様は、特別よ。
同じことができるとは、思わない方がいいわ。

フェルチからかつて聞いたことがある。

誰の目にも触れられないような場所に
咲いている草花も、ファムに掛れば
簡単に見つけられてしまうと──

[エテルネ]
凄いね、お母様は。
なんだか、自信なくなってきた……。

[アネーロ]
こーら、後ろ向きにあんってる場合?
私たちは、まだ見習いなのよ!?

[エテルネ]
そうだね。落ち込んでいる暇があったら、
自分の腕を磨くこと……だね。

[アネーロ]
そうそう。

先に進んだファムは、後にいるふたりが
なかなか追いついてこないことに
不安を感じて引き返してきた。

[ファム]
ふたりとも、遅いですよ。
はぐれないように──っ!?

その時、ファムの目に入ったのは……
今にも、エテルネたちの背後から
襲い掛らんとしている魔物の姿だった。

[ファム]
危ない!

エテルネたちは、
魔物の存在にまだ気付いていない。

なんとか、助けようとファムは、
山道を駆け上がる。

[ファム]
(しまった! 魔物を大人しくさせる香水は、
工房に置いてきてしまったのでした……)

ファムの声に気付いたエテルネたちは、
ようやく背後を振り返る。

[エテルネ]
ま、魔物!? どうしよう!

[ファム]
(こういう時は、あの力を
使うしかありません──)

と、意気込んだファムだったが、
地面に飛び出している木の根に足を取られて。

豪快にすっ転んだ。

[ファム]
あいたたっ! やってしまいました……。

なにやら近くの茂みから物音がする。
その直後──

[???]
そこのふたり、伏せろ!

ナルナ.jpg

[ナルナ]
魔物は、私たちが相手するわ!

茂みから姿を現したのは、
リグスとナルナだった。

どうしてここにと思う間に、
ふたりは魔物と対峙する。

リグス.jpg

[リグス]
ファムたちは、下がっていろ!

  ◆  ◆  ◆

(クリア後)

[リグス]
食らえ、渾身のマテリアル弾!

機構の多い銃を魔物に向け──
リグスは、引き金を絞る。

銃口から放たれたマテリアル弾は、
魔物にぶつかるとぼふっと
音を立てて弾けた。

[リグス]
魔物といえど、お前にも家族がいるのだろう?

[リグス]
人を襲うより、家族の元に帰ってやった方が
いいんじゃないか?

「家族思いになる」効果のある
マテリアル弾を受けた魔物は、
途端に闘争心を失い──

ファムたちの目の前から去って行った。

[ナルナ]
さすが、リグス。
今日もご苦労様。

[リグス]
……間一髪だったが、
ぎりぎり間に合ったな。

[エテルネ]
あの……助けていただいて、
ありがとうございました。

[ナルナ]
お礼はいいよ。ね? リグス。

[リグス]
困った時はお互い様だ。
それよりも──

と、リグスはファムを見つける。

しかし、ファムは両目に大量の涙を溜めていた。

[ファム]
ナルナさん、リグスさん……ぐすっ!
お久しぶりです〜。ぐすん!
お元気そうで良かったです!

[ナルナ]
あーも、そんな泣かないでよ。
再会を喜んでくれるのは嬉しいけど、
ちょっと照れるな。

[ファム]
ですが、よくここがわかりましたね?

[リグス]
実は、偶然彼女に会った……。
ここまで案内してきてもらったんだ。

リグスの背後から、

ぴょこっと白い生き物が飛び出してきた。

フモーフ.jpg

[フモーフ]
もふもふもふ……。

[エテルネ]
まさか、フモーフ?
うわ、可愛い〜!

ヤネット.jpg

[???]
そうです。フモーフちゃんは、
可愛いのです!

その人物は、
いきなり木陰から飛び出してくるなり、
フモーフを手であやし始める。

[???]
あーも、フモーフちゃん可愛い!
よしよし、今日ももふもふでちゅね〜。

[エテルネ]
ヤネットさん!?
このおふたりを案内してきたのは、
貴方だったんですか?

[ヤネット]
そうです。
……実は、旅の途中で、
とても凄い文献を手に入れたのです。

[ヤネット]
ファムさんたちにお見せしようと思い
持ってきました。

以前、ファムが作った奇跡の香水のレシピ。

それも、このヤネットが
旅の途中で手に入れたものだった。

[エテルネ]
とても凄い文献……。
それってまさか、新しい香水のレシピでしょうか?

[ファム]
その文献を見せてください! 今すぐに!

香水のアイディアに飢えていたファムは、
なりふり構わずヤネットに食いつく。

[ヤネット]
そんなにがっつかれると、
フモーフちゃんたちが驚いてしまいますよ。

[ヤネット]
ほら、ちゃんとここに……。

ヤネットは、一冊の文献を取り出した。
その表紙には、こう書かれている。

和ノ国流新年の過ごし方 おせち料理編──と。

早速、作ってみましょう!→

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 22:24| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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