2015年05月29日

モミジとあなたの低空飛行

「あなた」が窓の外を見ると、外はすっかり暗く
なり、色濃い夜の気配がしています。

時計は深夜を指していて、いつもならそろそろ
眠くなってくる頃。

でも、今日は見事な星空です。ふと、「あなた」
は散歩にでも出ようかな、と思いました。

色々と準備を終え、外へ出ようかと玄関へ向かう
と……

ただいまー、という聞き慣れた声とともに、玄関
の扉が開きました。

[ ]
……おや、どこかお出かけです?

「あなた」はその女の子におかえり、と返し──

モミジ1.jpg

星が綺麗だし、少し散歩に行こうかと思っていた、
と伝えました。

[???]
なぁんだ、お散歩だったんですかぁ。

[???]
てっきり、誰かに会いに行くのかと思って、
急いで帰ってきちゃいましたよ。

[???]
ンフフフ……。

若干病んだ微笑みを浮かべ、「あなた」に妖しい
流し目を送る彼女の名前は、モミジ。

数カ月前に「あなた」の家に転がり込んできた、
自称「巫女神さま」です。

いつもなら「あなた」の部屋でぐうたらゴロゴロ
な生活をしていますが……

今日は「用事がある」と出かけていき、丁度いま
帰ってきたところのようです。

そんな彼女に、今日は何があったの?と
「あなた」は聞きます。

[モミジ]
年に一度やる神様関連の馬鹿騒ぎに呼ばれたんで
すよぅ。夜勤はやんないって言ったのにまったく。

[モミジ]
私も一応「巫女神」だもんで、出席義務があった
りするわけでして。

[モミジ]
まったく、こちとら最新ゲームのチェックと昼寝
とあなたの監視でとっても忙しいってのに。

[モミジ]
……あ、そういえばお散歩行くんでしたっけ。
私も一緒に行きますー。

[モミジ]
化粧落として着替えて来ますんで、ちょっと
お待ちくださいね。

[モミジ]
はー、だるいだるい。

彼女はそう言うと、「あなた」の横をすり抜けて
部屋の奥へとぺたぺた歩いて行きました。

数分後……。

モミジ2.jpg

[モミジ]
おまたせしましたー。

[モミジ]
いやー、やっぱこれがしっくりきますねぇ。
巫女装束は堅苦しいったらないですわ。

[モミジ]
んじゃ、だらだらテレテレ、お話しながら
お散歩しましょう。

神様らしからぬ、やる気のないジャージ姿で、
モミジは「あなた」の手を引きます。

見事な星空の下を、「あなた」とモミジはゆっく
り歩き始めました。

(道中)
変わった神様もいるもんだにゃ。

モミジと「あなた」は星空の下並んで、ゆっくり
とした足取りで歩いていきます。

時々、モミジは「あなた」の顔を覗き込んできま
すが、特に何か話すわけでもなく……

「あなた」と目が合う度、心底嬉しそうに、

[モミジ]
ふふ♪

と笑うだけ。

どうやら、モミジは「あなた」と一緒に居るだけ
で楽しいようです。

[モミジ]
本当にいい夜ですねぇ。あなたに会った時のこと
を思い出しますよぅ。

[モミジ]
野良の精霊に襲われてるあなたを気まぐれに助け
たのが、事の始まりとはいえ……。

[モミジ]
今となっては不思議な御縁ですよね。まさか神様
の私があなたのおうちに居候なんて。

[モミジ]
……あの、今更聞くのもアレなんですけど、ご迷
惑だったりしません?

そんなことないよ、と「あなた」は言います。

今日は立場が逆転していましたが、いつもならモ
ミジが「あなた」を出迎えてくれます。

はじめのうちは、暇さえあればゲームやひとりリ
バーシを夢中で続け──

家の中を散らかして、ダラダラゴロゴロするだけ
の厄介者だと思っていましたが……

モミジはいわば「気まぐれな大きめの喋るネコ」
のようなもので。

そう思い振り返ってみると、帰る家に誰かが居る
というのは、それだけで嬉しいものでした。

その時ふと、山ぎわの陰から、月が半分だけ顔を
出しているのを「あなた」は見つけます。

一般的に、月が出ているときは、その明かりで星
が見えにくいのですが……

今日はちょうど月の出のタイミングだったよう
で、星と月がうまい形で共存していました。

星空と、山に隠れた丸い月。それを見て、「あな
た」は思わず──

月が綺麗だなぁ、と口にしてしまいました。

[モミジ]
…………。

[モミジ]
……ん?

[モミジ]
あの、ちょっと今のって……。

[モミジ]
う……えっと、待って、不意打ちはズルくないで
すか。

いつもの余裕のある調子はどこへやら、モミジは
急にモジモジと恥ずかしがり始めました。

[モミジ]
あの……えっと……。

近頃はベタベタに過ぎる距離感も、なぜだか今は
若干遠めです。

[モミジ]
……い、いいい今のって……。

[モミジ]
つまり……。

「あなた」はハッと気づきます。「月が綺麗です
ね」という言葉の意味を──

どうやらモミジは、若干遠回し気味に受け取って
しまったようです。

[モミジ]
その……。

モミジと「あなた」の間に、くすぐったいよう
な、じれったい空気が満ちます。

──が、そんな空気をぶち壊すように、野良精霊
たちが「あなた」にじゃれついてきました。

(クリア後)

[モミジ]
まったくもう、いい腑に気が台無しじゃないです
か! 野良さんたち死ぬほど邪魔です!

[モミジ]
しっしっ、あっち行ってくださいよ! 次邪魔し
たらタダじゃおきませんよ!

モミジが「あなた」から野良精霊を追い払うと、
冷たい風が吹いてきました。

ちょっと薄着で外に出ていたモミジは、少しだけ
寒そうに腕を組みます。

[モミジ]
はぁ……そろそろ、帰りましょうか。明日もお仕
事なんですよね?

言いながら、寂しそうに笑うモミジ。

名残惜しい気もしますが、彼女の言う通り、そろ
そろ帰ろうと「あなた」は思います。

そして「あなた」が歩いてきた道を振り返り、足
を一歩踏み出そうとした時。

ふと、「あなた」の右腕の袖が控えめに引っ張ら
れました。

なんだろう、と「あなた」が振り返ると……

「あなた」の右の掌に、モミジの左の掌がそっと
重ねられます。

[モミジ]
あの……。

[モミジ]
こ、のまま……帰ってもいいです……?

上目遣いにそう聞いてくるモミジに、「あなた」
は小さくうなずきました。

……それから、というもの。

モミジがゴロゴロと家でくつろいでいる時……

ふと目が合うと……。

[モミジ]
う……。

なんだか二人の間に、甘ったるい空気が流れるよ
うになってしまいました。

とはいえ、「あなた」とモミジは、今までもこれ
からも──。

きっと仲良く、テンション低めの楽しい生活を続
けていくことでしょう。

いつか再び、モミジのお話ができるその日ま
で……

どうぞ、「あなた」の嫁を大事にしてあげてくだ
さいね。

それでは、また。


途中の展開がよくわからなかったという人は
「月が綺麗ですね 漱石」で検索してみましょう

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posted by yamanuko at 20:32| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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