2015年07月07日

ミコトと「笹の葉夕月夜」 〜 お願い天の川!

星々で織られた美しい布がまるで川のように七夕
の夜空を横断していた。

星の光は、人気のない参道の輪郭をくっきりと浮
かび上がらせる。

もちろん、人影も……。この場合は神の影もと言
うべきか。

マトイ.jpg

[マトイ]
ほーらー! 女子ー! はやく登ってこーい!

ミコト.jpg

[ミコト]
マトイちゃん! 待ってよ! そんなに急がなく
ても七夕は逃げないよ!

トミ.jpg

[トミ]
そーですわ! マトイさん、ちょっとてんしょん
高すぎですわ。

[マトイ]
馬鹿を言うな!

と言いながら、その頬は緩みっぱなしである。

[マトイ]
夜は短いんだ! 最後の者は願いを告白するの
だぞ!

マトイは飛び跳ねるようにくるりと翻り、参道を
駆け上がっていく。

[ミコト]
マトイちゃん、この手の事は大好きだからなー。

[トミ]
ほんと、いい歳して……ですわ。

[ミコト]
私たちにいい歳っていうのもどうかと思うけど
ね。

[トミ]
それはともかくミコトさん、いま何時かしらん?

[ミコト]
え? えーとそうだなあ?

[トミ]
いまですわ!

ミコトが指折り数えている隙を見逃さず、トミは
スカートをたくし上げて、駆け出した。

[トミ]
おほほほ。最後の者が願い事を告白するんですの
よ!

[ミコト]
あ! ずるーい!

(道中)
にゃは! みんなで競争にゃ!

[ミコト]
はぁ……はぁ……。ちょっと待って……。

駆けっこするには少々長すぎたのか、ミコトは息
を切らせながら立ち止まってしまう。

とはいえ、見上げてみれば……。

[マトイ]
ほーらー! 女子ー! もう着いちゃうぞー!

[ミコト]
元気だなぁ……。

大はしゃぎのマトイから目を外して、ミコトは後
方を見やった。

[トミ]
ぜはぁ……! ぜはぁ……! ミ、ミコトさ
ん……! ず、ずるいですわよ!

はるか後方で、力尽きてへたり込んでいるト
ミがいた。

[ミコト]
相変わらず体力ないなあ、トミちゃんは。

[トミ]
ジョ、ジョゼフィーヌよッ……!

[ミコト]
あ、ごめん……。

そんなやり取りを済ませて、再び石段に足をかけ
た時、マトイの悲鳴が頭上をかすめていく。

[ミコト]
マ、マトイちゃん!

(クリア後)

[ミコト]
マ、マトイちゃん……。

ミコトが慌てて駆けつけた時にはマトイに悲鳴を
上げさせたはずの穢れは跡形もなくなっていた。

[マトイ]
ふん。痴れ者が……。

マトイは冷然と銃口を下げると、振り向きざまに
言った。

[マトイ]
最後はトミか! トミー! 早く上がって来い。
願い事を書くぞー!

[ミコト]
大丈夫そうだね……。

七夕の夜。短冊に願い事を記し、笹の枝にさげ
る。

叶う、叶わないは別として、その手の話は心が躍
る。人も神様もそれは同じである。

[マトイ]
トミ、トミ、お前はなんて書いたのだ? 私は
な! 私はな!

[トミ]
あなたのは聞かなくてもわかりますわ。私は自分
の名前を変えることです。

[トミ]
……って私はジョゼフィーヌですわ!

[トミ]
ミコトはどうですの?

そう問われたミコトは真剣な面持ちで短冊と睨み
あっていた。

[ミコト]
「はくぼ」ってどんな字だったっけ?

[トミ]
は? そんな難しい字を書いてもまた誤字になる
だけですわよ。

[ミコト]
ま、仮名でいっか……。では一筆入魂です。

掛け声と共にミコトは魂を筆先に乗せ、短冊に向
かう。

[ミコト]
七夕のはくぼにかがやくきら星よ。川の瀬を越え、
遠き友へ。

[トミ]
……なんかあなたにしてはまともね。でも、願い
事じゃないですわよ。

[マトイ]
それに今は薄暮〈はくぼ〉ではないぞ。

[ミコト]
そこは写実を越えた印象表現ということで!

[マトイ]
まあ、よいか。しかし、まあ……また来年も来た
いな。

[トミ]
ですわね。

[ミコト]
では、これを笹につるして……。さて帰りますか!

[マトイ]
帰りも競争するか?

[トミ]
やーですわ。

神様たちが去った後、笹にさげられた短冊はひら
ひらと風と踊っていた。

そして、ミコトがつるした短冊にも相変わらずの
誤字が踊っている。

「七夕の ぷれぼに輝く きら星よ 川の瀬を越
 え 遠き友へ」

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posted by yamanuko at 19:48| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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