2016年01月03日

謹賀新年2016 〜 ディートリヒ編:ドルキマス国の元帥

ディートリヒ・ベルク.jpg

ドルキマス国は、空戦が繰り広げられる大陸にお
いて、小国──あるいは弱小国と呼ばれていた。

軍事力、政治力……そういう面において、この小
国は他国より劣っていると言われていたからだ。

当のドルキマス国王も、小国を体現したような、
いわゆる小物であった。

仕方がなかった、のかもしれない。

もとより力のない国が大国に立ち向かうなど、無
謀にほかならないからだ。

その意味においていえば、ドルキマス国は矮小で
あったからこそ、生き延びられたのだろう。

造船に優れた国とはいえ、しょせんは"それしか
ない"国であった。

しかし──。

ローヴィ.jpg

[ローヴィ]
──元帥閣下。

ディートリヒ.jpg

[ディートリヒ]
…………。

戦争狂、死にたがり、あるいは戦争の亡霊と他国
からそしりを受ける男──

ディートリヒ・ベルクは、珍しく窓の外を眺めた
まま、動かなかった。

[ローヴィ]
シャルルリエ少将が敵国の戦艦を10隻落とした
と報告が入りました。

[ディートリヒ]
そうか。

ドルキマス国の軍を掌握するディートリヒは、日
に幾度もこのような報告を受ける。

ほぼ無傷で大勝を収める戦艦もあれば、時には大
打撃を受け撤退する隊もある。

それはこの大空戦が繰り広げられる大陸において
は、日常の一部であると言えた。

[ディートリヒ]
……敵国の動きは。

[ローヴィ]
元帥閣下が仰られたように、彼らは自国を戦場と
したくないようです。

[ローヴィ]
奇襲──いえ、先手を打ち、乗り込んだことで、
少なからず混乱をきたしている、と。

[ディートリヒ]
…………。

ローヴィの言葉に沈黙で返したディートリヒは、
再び外に目を向けた。

[ローヴィ]
元帥閣下。何か気がかりがおありですか?

[ディートリヒ]
そう見えるか。

[ローヴィ]
……はい。

ローヴィが、ディートリヒを補佐する立場につい
て数年。

このような彼の姿を見るのは初めてだった。

[ディートリヒ]
そうか。

戦争を是とし、大国から勝利を収めてきた元帥。

冷たい風が吹きすさぶ外の景色を眺めながら、
ディートリヒは幼少の頃をふと思い出した。

(道中)
ディートリヒが何を考えているのかわからないにゃ。

それは冷たく、痛みさえ感じるほどの夜だった。

心を暖めるには薄すぎる布切れを1枚。

少年は、それを体に巻き寒さに耐えていた。

広がる空は、それは美しい星がいくつも輝いてい
た。

今日は爆音の音が聞こえない。

それだけで周囲の人々は安心して眠れる、のだと
いう。

屋根のない廃墟、積み重ねられた瓦礫、"血や異
臭"までも漂う場所。

少年が育ったのはドルキマス国内にありながら、
国から見捨てられた──そんなところだった。

血生臭さを吸い込み、その日を生きながらえるこ
とだけを考える。

およそ人と呼べる生活は見込めず、何より人であ
るものからは虐げられる日々。

気が狂いそうになるほどの日常が、少年を育てて
いった。

少年とともにここへ流れ着いた母は、1年ほど前
に死んだ。

母の墓を作ったのが、人らしい行動といえばそう
かもしれない。

街は──明かりや賑やかな声が聞こえるほど、色
濃く息づいている。

まるでこことは正反対だ、と少年は思う。

母と自分を見捨てた父は、その中心に立っている
ことだろう。

馬鹿な母であった。

目を腫らし、幾夜も幾夜も、少年に「ごめんなさ
い」と言っていた。

少年が眠れるよう、幾夜も幾夜も彼を抱きしめ、
風から守っていた。

救いようのない馬鹿な母親であった。

"自分を見捨て、己ひとりなら生きていけただろ
うに"

彼は幼心に、そんなことを考えていた。

そうして気づいた頃には、モノ言わぬ"何か"に
成り果てていた。

許せるものか──少年は、怒りに震えていた。

血が繋がっている程度で、謝罪する母親にも、自
らを捨てた"父親"にも。

少年は決して拭えないドス黒い景色を眺めなが
ら、復讐することを胸に誓う。

どんな手を使ってでも、たとえこの身が朽ち果て
ようとも──

必ずドルキマス国王を絶望の淵に追いやってやる
と。

(クリア後)

[ディートリヒ]
ローヴィ。

[ローヴィ]
はっ。

[ローヴィ]
血縁者は健在か。

[ローヴィ]
…………。

外を眺めていたディートリヒからの、突然の問い
かけに、ローヴィは困惑を隠し切れない。

[ディートリヒ]
父、母、兄弟、あるいは繋がりの薄い者でも構わ
ない。血縁者は健在か。

[ローヴィ]
……4年前、父は戦場で。母もその年に亡くなり
ました。兄弟はおりません。

[ディートリヒ]
そうか。

[ディートリヒ]
確か貴族の出だな?

[ローヴィ]
国に影響力を持っていたとは言い難いですが……。

[ディートリヒ]
何故、軍に入ろうと思った。

[ローヴィ]
……戦うためです。

ローヴィはほんの少し迷いを見せたあとで、そう
言った。

それは本心ではあったが、本音とはいえない言葉
であった。

[ディートリヒ]
…………。

ディートリヒもまた、それを見抜いたのだろう。

ローヴィから視線を外すことをしなかった。

[ディートリヒ]
シャルルリエ少将の父は、軍人だった。

[ローヴィ]
…………。

[ディートリヒ]
アレも同じことを言っていた。──そしてそれは
シャルルリエ少将も同様だ。

[ディートリヒ]
戦う覚悟を決め、死に場所を知る者の目を、アレ
らは持っている。

だがローヴィは返答できずにいた。

無論、覚悟がないわけではない。

戦争を繰り返し続けるこの大陸に生まれた者は、
戦で死ぬことを知っている。

[ディートリヒ]
ローヴィ。

[ローヴィ]
はっ。

[ディートリヒ]
前線へ向かう。ついてこい。

我が敵を討つ→

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posted by yamanuko at 19:30| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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