2017年01月09日

紅赤に彩る恋花 ツバキ・リンドウ

「はい、これ、ツバキにプレゼントだよ」
異邦の友人エトワールは、そう言って綺麗な小箱を私に差し出しました。
「ありがとう! たしか……『ばれんたいん』っていうんだっけ?」
「そうそう。大切な人に『チョコレート』を贈る日さ」
『ばれんたいん』に『ちょこれいと』……。
異国の言葉には、いつも独特な響きがあって、その不思議な風情に、私はいつも興味をそそられます。
「よかったらツバキも、誰かにチョコを贈ってみたらどうかな?」
「そうね……私もやってみようかな!」
誰かに贈る──そう言われて私の脳裏に浮かんだのは、喧嘩っ早い、めんどくさがり屋の顔でした。

私は、エトワールから教えてもらって作った『ちょこれいと』の箱を手に、あの子──ハヅキの姿を探します。
……あ、いました。
「お、ツバキじゃねーか。なんだ、アタシと果し合いでもしに来たのか?」
開口一番、物騒なことを言って不敵な笑みを浮かべるハヅキ。
「それはまたの機会にでも。今日はあなたに……」
私は、丁寧に梱包した箱をハヅキに見せました。
「なんだこれ? ……アタシにくれるってのか?」
「はい。今日は『ばれんたいん』といって、友達に『ちょこれいと』をあげる日なんですよ」
私の言葉に、ハヅキはきょとんとした様子で、
「ばれ……? ちょこれ……? はあ……お前って、ほんとハイカラなモンが好きだよな」
「まあ、そう言わずに。とても美味しいですよ」
「んじゃ遠慮なくもらうぜ。ちょうど小腹が空いてたとこだしな!」
ハヅキは、私の手から『ちょこれいと』の箱を奪い取ると、乱暴に包装を破り、中の『ちょこれいと』を鷲掴みにします。
「あ、こら! そんなに一気に食べたらもったいないじゃない!」
「うっさいなー、どう食おうとアタシの勝手だろ?」
そう言ってハヅキは、鷲掴みにした『ちょこれいと』を、まるでおにぎりを食べるかのように、一気にパクパクと食べ始めてしまいました。
「おお、案外うまいじゃねえか! ちょっと甘すぎる気もするが、これはこれで……うぐっ!?」
「ハ、ハヅキ!? どうしたの?」
するとハヅキは、みるみる顔が赤くなっていきました。
「な、なんひゃこれ……妙に、酔ってひたぞ……きゅう……」
「ハヅキっ! い、一体どうして……あ!」
そこで私は、エトワールから教わった材料である「洋酒」を、多めに入れたことを思い出しました。
あの洋酒、とても美味しかったからついたくさん入れちゃったけど……さすがに多すぎたかな?
ひとまず私は、酔ったハヅキを膝枕しました。
しばらくして、ようやく酔いが醒めた様子のハヅキは、
「……あ〜、ひでえ目にあったぜ」
「う……ごめんなさい……」
私が謝ると、ハヅキはおもむろに口を開いて、
「……なあ、その、ちょこなんとかってやつ……ダチにあげる菓子なんだって?」
「ええ、そうですよ。エトワールからそう教わりました」
「ふ〜ん……そっか」
それだけ答えると、ハヅキは何やら考え事をはじめ、ぽつぽつと言葉を紡ぎます。
「……あいにくアタシは、ちょこなんとかを持ってねえから、お前にやれるものはない」
別にお返しを期待してたわけじゃないけど、そんなはっきり言わなくてもいいじゃないですか……。
「……だから今度、アタシの行きつけの甘味処に連れてってやるよ。それで貸し借りなしな」
それだけ言って、ハヅキは私から顔をそむけました。
「もう、素直にありがとうって言えないんですか?」
「ふん、アタシがそういう柄じゃねえって、お前が一番よくわかってるだろ?」
「……まあ、そうなんですけどね」

『ばれんたいん』……たまにはこういう日もいいものね。
エトワールに感謝しなきゃ!

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 23:26| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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