2016年09月18日

空戦のドルキマスU 昏き英雄 〜 初級:国境を越えて

←捕縛

ドルキマス国境付近──

その上空に、10隻の軍艦が集まっている。

中央に位置する船のブリッジで、
ヴィラム・オルゲン大尉は大きく嘆息した。

ヴィラム.jpg

[ヴィラム]
ベルク元帥率いるドルキマス軍主力艦隊を相手に、
お貴族どもが逃げるまでの時間稼ぎをやれとはね。

[ヴィラム]
はあ〜あ……まったく。
貧乏クジもいいところだ。
極貧クジ≠チて言ってもいいくらいだぜ。

フェリクス.jpg

[???]
それでも、
雇い主のご意向とあっちゃあ逆らえんのが、
傭兵家業の悲しさってヤツだわな。

[ヴィラム]
俺たち国境警備兵だって、似たようなもんさ。
ケツまくって逃げ出したいってのが、
本音なんだがね。

[ヴィラム]
とはいえ、な……いくらいけ好かない貴族でも、
その奥さんやら坊ちゃんやらご令嬢やらまで、
まとめてひどい目に遭うのを見るのは忍びない。

[???]
なにせ軍部の謀反だもんな。
これまで利権を貪ってた貴族連中に、
どうツケを払わせるか、わかったもんじゃない。

[???]
だから、一家が安全なところまで逃げられるよう、
身体張って時間を稼ごうってんだろ。
泣かせるね、ヴィラムの旦那。

ニヤリと笑う青年に、
ヴィラムは意味深な視線を送る。

[ヴィラム]
それより、どうなさいますんですかね、
フェリクス・シェーファー傭兵隊長殿。
まさか正面からぶつかる気じゃないだろ?

[フェリクス]
ふむ……。

フェリクスは、ブリッジの向こうに目を凝らした。

分厚い雲の層が目の前の空にできている。

そのせいで見えないが、哨戒艇の報告によれば、
ディートリヒの大艦隊が接近中であるという。

[フェリクス]
みんなそう考えるよな……。

つぶやいて、フェリクスはヴィラムを振り返った。

[フェリクス]
決めた。

[ヴィラム]
よーし、じゃあ行こうそれで行こう。
で、どんな作戦よ?

フェリクスは、真顔で言った。

[フェリクス]
作戦名そのまさか=B

[ヴィラム]
…………。え。

  *  *  *

国境付近に、豊かな雲の層ができている。

ディートリヒ軍は、
その雲の向こう側に10隻の軍艦が
控えていることを探知していた。

[ローヴィ]
ザイデル辺境伯麾下、国境警備隊と思われます。

[ローヴィ]
動くそぶりがないところを見ると、
雲を楯に時間稼ぎをするつもりでしょうか。

[ディートリヒ]
……いや。

[ディートリヒ]
あれは、来る≠ネ。

ディートリヒがそう口にした直後。

雲を突き抜けて飛来した砲弾が、
先鋒を務める1隻にぶち当たった。

  *  *  *

正面、斜め上方から、砲弾が降り注ぐ。

そのほとんどは虚空を突き抜けるのみだったが、
一部は先鋒艦隊の装甲に命中し、
派手な爆炎の華を咲かせる。

先鋒艦隊を仕切るクラリア・シャルルリエ少将は、
周囲の動揺を肌で感じるや、
即座に無線で叱咤を飛ばした。

クラリア.jpg

[クラリア]
うろたえるな!
やけっぱちで撃ってきているだけだ!
こちらの数と力を思い知らせてやれ!

  *  *  *
 
[ローヴィ]
まさか、たった10隻で、
我が軍と戦おうというのでしょうか?

[ディートリヒ]
いや。ザイデル辺境伯が逃げるまでの
時間稼ぎを命じられているのだろう。

[ディートリヒ]
風上、かつ高みに陣取っての攻撃だ。
あちらの砲は届くが、こちらは届かない。
そういう状況を造り、混乱を招こうとしている。

[ローヴィ]
なら、高度を上げつつ、
雲を迂回して攻めれば──

[ディートリヒ]
その間に雲を挟んで下に逃げ散る算段だな。
それを容易とするため、
まずこちらの混乱を誘った。

[ディートリヒ]
戦うつもりではない。逃げるつもりだ。
だが、勇敢な逃げ方だな。

ディートリヒは笑った。

[ディートリヒ]
前に出るぞ、ローヴィ。
指揮官の顔を見たくなった。

[ローヴィ]
前に、とは──

前方に広がる雲の層を、
面白そうに見つめ、ディートリヒは言う。

[ディートリヒ]
前は、前だ。

  ◆  ◆  ◆

(道中)
いったい何が起きているにゃ……?
まずはどうするかを決めるのが先決にゃ!

[ウィズ]
魔法で扉を破るのは簡単だけど、
破ったところで話を聞いてもらえなかったら
どうしようもないにゃ。

独房のなかで、ウィズがため息を吐く。

外では戦いが行われているようだ。
振動から、戦艦の速度が上がったのを感じる。

それにしても、いったいどうして
時間を遡ってしまったのだろう?

[ウィズ]
キミ、覚えてるかにゃ?

[ウィズ]
〈イグノビリウム〉と戦っているうちに、
だんだん周囲の時間がねじれていったにゃ。

確かに。

長く続く戦いのなかで、
まるで彼らの持つ闇に呑み込まれるように、
魔道艇周辺の空間が変質していった。

最後には、昼のはずなのに、
夜のような暗闇のなかで戦っていた。

[ウィズ]
ひょっとしたら、
お互いの魔力がぶつかりすぎて、
時空を歪ませてしまったのかもしれないにゃ。

[ウィズ]
〈イグノビリウム〉も魔道艇も、
この世界の古代魔法文明の産物にゃ。
何が起こってもおかしくないにゃ。

だとしたら、と君は言う。

この世界には
まだ〈イグノビリウム〉が来ていない。

聞けば、〈イグノビリウム〉は襲来後、
瞬く間に大陸を席巻していったという。

だが、最初から〈イグノビリウム〉の到来が
わかっていて、対処手段がそろっていたなら、
そんな悲劇は起こらなかったはずだ。

君がその脅威をこの世界の人々に訴えれば、
今から対〈イグノビリウム〉の準備を
整えることができるかもしれない……。

[ウィズ]
そうだにゃ。でも──

[ウィズ]
問題は、信じてくれるかどうかにゃ。

  ◆  ◆  ◆

(クリア後)

レーダーの表示を見て、ヴィラムはうめいた。

[ヴィラム]
奴ら、雲を突っ切ってきやがる!

[フェリクス]
敵先鋒は戦争狂≠フシャルルリエだったか?
さすがに思いきりがいいというか、
命が惜しくないのかね、まったく……!

[フェリクス]
まあいい、時間はじゅうぶんに稼いだ!
あとは雲の下に回って逃げ──

砲撃.jpg

太く青白い輝きが、雲を割って伸びた。

迫り来る光の柱──としか見えないものが、
フェリクスたちの船の足元を突き抜け、
空を焼き焦がしていく。

そちらに逃げてくれるなよ=Aと笑うように。

[フェリクス]
──な。

ドルキマス旗艦.jpg

そして、その光を追いかけるように、
1隻の軍艦が雲を突き破って現れた。

[ヴィラム]
あれは──

[フェリクス]
ディートリヒ・ベルクの旗艦じゃねェか!
御大将自ら突っ込んでくるなんざ、正気か!?

まったく正気とは思えない速度で猛然と空を走る
ディートリヒの船が、フェリクスの船の真横を
鮮やかにすり抜けていく。

そのとき、フェリクスは、はっきりと見た。

すれ違う軍艦──
そのブリッジからこちらを見て笑う、
ひとりの男の姿を。

[フェリクス]
…………。

長い嘆息とともに、フェリクスは
座席に身を沈めた。

[ヴィラム]
……どうするよ、傭兵隊長殿。

[フェリクス]
降参だ。白旗挙げて待機。

[ヴィラム]
あっさり決めるねえ。

[フェリクス]
相手が混乱してくれないってんじゃ、
逃げようにも逃げられねェ。
逃げるな≠ニも言われ≠ソまったしな。

げんなりとした表情で、彼はぼやいた。

[フェリクス]
あえてツラを見せたからには、
情けをかける用意がある──って
ことだとは思いたいがね……。

  *  *  *

ドルキマス王国第1王子、
アルトゥール・ハイリヒベルクは、
告げられた報告に眉を動かした。

アルトゥール.jpg

[アルトゥール]
ディートリヒが国内に入ったか。

ユリウス.jpg

[???]
順調に進軍しておるようです。
ま、辺境伯に止められるはずもありませんからな。

[???]
しかし、殿下。ディートリヒはなぜ、
まだ国外にいる段階で
謀反を宣言したのでしょうな。

ディートリヒ率いる主力艦隊は、
周辺国の征圧にあたっていた。

謀反を起こすなら、任務を終えて
王都に帰投してからの方が、
圧倒的にやりやすかったはずだ。

[アルトゥール]
正直、解せぬ。だが、あの男のやることだ。
なんの意味もないわけはない。
父への心理的打撃を狙ったのかもしれんな。

[アルトゥール]
父は小物だ。
ディートリヒが命を狙って進軍してくるとなれば、
最悪、戦わずして降伏することもありうる。

[???]
陛下でなくても、そうしたくなるでしょう。
国内の船をかき集めたところで、
ディートリヒ軍には太刀打ちできませんからな。

[アルトゥール]
で、あろうな。

[アルトゥール]
ユリウス。
例の件、速やかに実行に移せ。
もう時間がない。

[ユリウス]
あの娘にも動いてもらう必要がありそうですな。

[アルトゥール]
アレ≠ゥ……。

憂鬱な顔を見せるアルトゥールに、
ユリウスは飄々と言う。

[ユリウス]
彼女としては、願ったりでしょう。

[ユリウス]
ずっと待っていたのですからな。
ディートリヒに復讐する機会を──

従兵エルナ→

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posted by yamanuko at 22:13| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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