2016年09月18日

空戦のドルキマスU 昏き英雄 〜 中級:復讐と裏切りと

←少将だ!!

国境を突破して数日──
王都へ向かう空路の途上。

クラリア艦の整備兵に任じられたヴィラムは、
分厚い書類を片手にブリッジに上がった。

[ヴィラム]
ちょいとうかがいたいんですがね、少将殿。

[クラリア]
我が船に何か問題でもあったか?

[ヴィラム]
問題ってんじゃないんですが──

[ヴィラム]
この船、というかベルク元帥の軍じゃ、
レーダーで敵味方の識別ができる、って……
これ、マジなんすか?

[クラリア]
なんだ、そんなことか。
当然、マジ≠セ。

クラリアは腕を組み、誇りの笑みを浮かべた。

[クラリア]
ベルク元帥の船に乗っている、
得体のしれない研究者が作ったものだが、
おかげで敵の制圧が楽になったぞ。

[ヴィラム]
そりゃそうでしょうね。
もし敵味方が入り乱れるような状況になっても、
同士討ちを防げるわけですから。

言いつつ、ヴィラムは書類をめくる。
件の敵味方識別式装置≠ノ関するものだ。

[ヴィラム]
応答波を出す特殊な機材をエンジンに設置して、
レーダーに味方でさア≠ニ訴えるわけだ。

[クラリア]
そうらしいな。
詳しいことは知らんが、
使える≠フと役に立つ≠フは確かだ。

うなずきながら、しかしヴィラムは、
妙に引っかかるものを感じていた。

[ヴィラム]
(……けど、なんでエンジンにくっついてんだ?
この構造なら、
そこでなくてもよさそうなもんだが……)

[フェリクス]
少将さんよ、気をつけな!

突然、フェリクスの船から通信が入った。

[クラリア]
なんだ、シェーファー。
敵は来ていないはずだぞ。

[フェリクス]
識別上は敵じゃあないがね……
右翼の味方が旋回を始めた!
ありゃあすぐにでも撃ってくるぜ!

[クラリア]
なんだと!?

クラリアは、あわててブリッジの窓に駆け寄った。

視線の先──確かに、右翼の船が何度も、
旋回を始めている。

この世界の通例として、
船の正面を相手に向ける≠ニいうのは、
警戒・敵対の姿勢を見せることに等しい。

特殊な鉱石を利用した光砲≠発射する
最大威力の主砲が、
船の正面に設置されているからだ。

[クラリア]
馬鹿な──いったいどうなっている!?

[ヴィラム]
どうなってるも何もないでしょ、少将殿。
こりゃ明確な裏切りですよ──って、
うわ、もう主砲こっち向きそうじゃねえか!

[フェリクス]
とにかくさっさと対応しろ!
いつまでも敵さんに腹ァ向けてんじゃねェ!

空に、無数の砲火が瞬いている。

ディートリヒ旗艦のブリッジからは、
軍艦が混沌と入り乱れ、
撃ち合うさまが見えていた。

一目に、混乱している≠ニわかる状態だ。

[ローヴィ]
閣下。
前線からの報告では、およそ半分が寝返って
攻撃を仕掛けてきているものと……!

[ディートリヒ]
フェイクだ。
それほどの数ではあるまい。

席に座したまま、彼はそう切って捨てた。

[ディートリヒ]
敵味方の識別ができないことを利用し、
誤情報を流している者がいる。

[ローヴィ]
だとしても、一度空域を離脱すべきかと。
敵と味方の区別がつかない状況で
乱戦を続けては、消耗戦になります!

[ディートリヒ]
想像はつく。

[ディートリヒ]
造反の発生位置から見て、右翼の部隊だな。
2ヶ月前、本国から援軍として合流した。
それがそもそも仕込み≠セったというわけだ。

[ディートリヒ]
アーレント開発官を呼べ。

ディートリヒが静かに告げると、

レベッカ.jpg

[???]
とっくに来ておりますわ、元帥殿。

笑みを含んだ艶やかな声とともに、
ひとりの女性がブリッジに姿を現した。

[ローヴィ]
レベッカ・アーレント開発官……。

女性は軽くローヴィに投げキッスを飛ばしてから、
ディートリヒへと微笑みかける。

[レベッカ]
アレがご入用なんでしょう?

[ディートリヒ]
ふふ──用意のいいことだ。

[レベッカ]
だって、せっかくの機会なんですもの。

なまめかしい唇が、
ぞっと鋭い三日月の形をなす。

[レベッカ]
使わずに戦争が終わったらどうしようかと
思ってましたわ。
うふふ──まったく寝返りサマサマね。

  *  *  *

[ウィズ]
なんだかすごい騒ぎにゃ。
敵が来たのかにゃ。

艦内があわただしくなっている。
その気配を、君も察していた。

[ウィズ]
何もできることがないっていうのは、
落ち着かないにゃ。

そうだね、と君はうなずく。

魔道艇がない以上、
軍艦同士の戦いで君にできることはない。

それに、仮に魔道艇があったとしても、
この戦いに参加する理由は──

[???]
失礼する。

考えていると、突如、独房の扉が開かれた。

ルヴァル.jpg

入ってきたのはドルキマス軍の兵である。
他に誰もいないところを見ると、
独房の見張りなのだろう。

[ウィズ]
ちょ、ちょっと待つにゃ。

ウィズが声を上げると同時に、君も気づいた。

この兵の顔には、見覚えがありすぎた。

ルヴァル.jpg

[ウィズ]
ルヴァルにゃ!

兵は、意外そうな顔をした。

[ルヴァル]
私のことを知っているか……
未来から来たという話、眉唾ではなさそうだ。

[ルヴァル]
だが、今はその話をすべきときではない。
ついて来てもらえないだろうか。

[ウィズ]
どうしてにゃ?

[ルヴァル]
良くない気が立ち込めている。

[ルヴァル]
気をつけろ、魔法使い。
この船は、戦場になる。

  ◆  ◆  ◆

(道中)
外では戦いが続いてるいみたいにゃ。
戦争は決して止まらないにゃ……!

クラリアたちは苦戦していた。

なにしろ、相手に先手を打たれた形だ。

どうにか隊列を整え、
こちらの主砲を敵に向ける間に、
幾度も敵艦の砲撃にさらされることになった。

加えて、自軍が寝返ったのでは、
敵味方識別のしようもなく、
さらには誤情報が流れて混乱が拡大してゆく。

状況は泥沼の様相を呈していた。

[クラリア]
撃ってくる船が敵だ!
迎撃しつつ、どの船が寝返ったのかを確認し、
逐一無線で報告しろ!

クラリアは持ち前の果断さで即応したが、
明らかに委縮し、混乱した船が多い。

どの船が突如裏切り、襲いかかってくるかも
わからない──そんな疑心暗鬼が生まれ、
ディートリヒ軍の動きを鈍らせている。

[クラリア]
くそっ、なんたる不始末だ!

[ヴィラム]
やれやれ、こいつは参った。
閣下を信用していない誰かが、
謀反に備えて先手を打っていたんですかね。

[ヴィラム]
(しかし、すっきりしないな。
軍の一部が寝返っただけじゃ壊滅には至らない。
敵の増援があってしかるべきだが──)

今のところ、その気配はない。

そんな余力がない、というのが実情かもしれない。

なにせこちらはドルキマス軍の主力艦隊だし、
国内兵力の多くは国境警備に専念している。

[ヴィラム]
(とすると、こいつらにできることは──
せいぜいこっちの数を減らすのと、
時間を稼ぐことくらいか……)

だが、そんなことは寝返った船の連中にも
わかっているはずだ。

おそらくは王の息のかかった、忠誠心の高い
連中だろうが──だからと言って、命を捨てて
こんな作戦に従事するものだろうか?

[ヴィラム]
(時間稼ぎをしながら何か≠待ってる……
となると、考えられることは──)

ヴィラムがそこまで思考を巡らせたとき。

敵艦.jpg

突如、前方から砲撃していた軍艦が、
ぐらりとかしいだ。

そのまま、みるみる高度を落としていく。

[ヴィラム]
は?

その船だけではない。

こちらに主砲を向けている船≠フすべてが、
悪酔いした飲んだくれよろしく、
空中で態勢を崩している──

[ヴィラム]
なんだ? 何が起こってんだ……?

[クラリア]
なんでもいい、好機ではないか!

クラリアが、興奮気味に快哉を叫んだ。

[クラリア]
きっとベルク元帥が手を打たれたのだ!
裏切りの兆候など、
事前に見抜いていたに違いない!

  *  *  *

[ローヴィ]
(違う……!
裏切りを察していたのではない!)

造反艦に不調あり──
その報告を受けたローヴィは、戦慄の顔で、
ディートリヒの方を振り向いていた。

[ディートリヒ]
速やかに掃討せよ。

最初からすべてわかっていた──とでも
言わんばかりの風情で、
ディートリヒは薄い笑みさえ浮かべている。

その笑みに、ローヴィはひとつの確信を抱いた。

根拠はなにもない。しいて言うなら、
彼ならやりかねない≠ニいうだけだが──

それでもローヴィにとっては確信だった。

[ローヴィ]
(この方は──
自らが指揮する船のすべてに、
同じ細工を施しているのだ!)

[ローヴィ]
(そして、疑わしき船≠キべてに手を下した!
この方は、味方の誰ひとり、
信じてなどいない!!)

  *  *  *

[ルヴァル]
すでに知っているかもしれないが、
私はルヴァル・アウルム。
天の使い〈ファーブラ〉の者だ。

早足に通路を進みながら、彼は名乗った。

[ウィズ]
知ってるにゃ。
いっしょに〈イグノビリウム〉と戦ったにゃ。
プルミエはいないのかにゃ?

試すようなウィズの言葉に、
ルヴァルは驚きの顔を向けた。

[ルヴァル]
人の子が知るはずもない名ばかりを言う。
未来から来たという話……
信じるしかなさそうだな。

ルヴァルはどうしてこの船に乗っているの?
と、君は尋ねた。

[ルヴァル]
〈イグノビリウム〉……
かつて魔法を使えた時代の人間たちが蘇る。
〈ファーブラ〉に、そう予知した者がいたのだ。

[ルヴァル]
詳細は不明だが、奴らが蘇るのだとしたら、
魔法を失った今の人間たちに勝ち目はない。
我ら〈ファーブラ〉が戦うにしても限界がある。

[ルヴァル]
ゆえに彼らへの対抗戦力たりうる人間を探すべく、
下界へ調査に下りていた。

[ウィズ]
じゃあ、ディートリヒに目をつけているにゃ?

[ルヴァル]
そうだ。彼の優秀さは疑うべくもない。
いささか悪魔的に過ぎるがな……。

[ルヴァル]
ともあれ、その資質を見極めねばならない。
今は志願兵ルヴァルとして船に乗っている。
卿らにも口裏を合わせてもらえると助かる。

それは構わない、と君は答えた。
君も、いずれ来るであろう〈イグノビリウム〉の
脅威を伝えたいところだったのだから。

[ウィズ]
でも、どうして私たちを独房から出したにゃ?

[ルヴァル]
言っただろう。良くない気が立ち込めていると。

[ルヴァル]
嫌な予感がする。
何が起こるか予測もつかない。
だから念のため卿らにも──

[???]
お待ちなさい!
あなた、この船の人間ではありませんね!

突如、鋭い声が飛び、君はぎょっと身をすくめた。

一瞬、見つかったか──と思ったが、
その声は曲がり角の先から
聞こえてきていた。

[ウィズ]
エルナの声にゃ!

君たちは、急いで廊下を駆け抜け、
角を曲がる。

そこには、銃を構えたエルナと──
その向こうに佇む数人の軍人たちの姿があった。

ザビーネ.jpg

[???]
ええい──目ざとい奴め!

その先頭に立つ女性が、
忌々しげに舌打ちして武器を構える。

[ウィズ]
エルナを助けるにゃ!

君はうなずき、懐からカードを取り出した。

  ◆  ◆  ◆

(クリア後)

銃という武器は、魔道士の天敵だ。

高い殺傷能力を持つ銃弾を一瞬で放つ。
攻撃y六では引けを取らないとはいえ、呪文詠唱と
いう手間がある分、魔道士側が不利になる。

昨日今日この世界に来た身ではない。
銃の危険を理解していた君は、まず防御障壁を
張って敵の銃撃を無効化し、攻撃魔法に移った。

君の魔法を受け、軍人たちは次々に昏倒した。

先頭の女性軍人だけは、
打ち倒されながらも意識を保っていたが、
戦う力が残っていないのは明らかだった。

[女性軍人]
くそっ……なんだ、この力は……!

[エルナ]
ふう……助かりました、魔法使いさん。
本当に魔法が使えるんですね!

エルナが、ほっと胸を押さえている。
ひとりで彼らに立ち向かおうとしていたのだ。
あるいは死を覚悟していたのかもしれない。

[エルナ]
そちらの方は、確か志願兵の……。

[ルヴァル]
アウルムだ。独房の監視任務に当たっていたが、
鍵が破損し、扉が開いてしまったので、
一時的にこの者を別所に連行していた。

[ルヴァル]
それで、この者たちは──?

エルナは、いつになく厳しい面持ちで、
倒れた女性軍人を見下ろす。

[エルナ]
少なくともこの船の人間ではありません。
そして、そんな人間が船にいるはずはありません。

[エルナ]
ベルク元帥の暗殺を企てていた──そうですね?

[女性軍人]
あの男が何をしたか、知らぬわけではあるまい!

女性軍人は、憎悪にまみれた咆哮を上げた。

[女性軍人]
行き場のないならず者≠スちを集め、
棺桶同然の廃船に乗せて敵軍に突撃させる!
そんなことを繰り返してきた男だ!

[女性軍人]
確かにドルキマスは勝った。
だがそれは、
行き場のない者たちの命を使っての勝利だ!

[女性軍人]
民は喜んださ!
戦争に勝っただけでなく、
ならず者が減って治安が良くなったとな!

[女性軍人]
だが、考えたことはないのか!?
そのならず者にも家族がいるということを!!

[女性軍人]
何が国のためだ!
そんなことのために命を使い捨てにして!
あたしの……あたしの弟だって!

血を吐くようにまくしたてる。
その瞳には、狂的な憎しみと、
悲しいまでの怒りが燃えている。

[女性軍人]
ここにいるのはみな、ディートリヒ・ベルクに
恨みを持つ者だ……!

[女性軍人]
何を聞き出そうとしても無駄だぞ。
この船に手引きしたのが誰か、
あたしたち自身さえ知らないんだからかな!

[女性軍人]
確かなことは、ただひとつ──
あの男を憎み、恨み、呪っている人間は、
あたしたちだけではないということだ!!

糾弾の声が、殷々とこだまする。

エルナもルヴァルも、何も言うことはなかった。

ただじっと、女の叫びを聞いていた──

  *  *  *

[ローヴィ]
造反艦、掃討完了いたしました……
今のところ、敵と思しき船はありません。

[ディートリヒ]
無能の王に打てる手ではないな。

[ディートリヒ]
良くも悪くも、大胆な手を好む者が、
あちら側にはいるようだ……。

どこか楽しげなその横顔をちらりと見て、
レベッカは、そっと肩をすくめた。

[レベッカ]
(エンジン付近に設置された敵味方識別装置……
それはひとたび専用のコードを受信すると、
緊急時のエンジン停止スイッチとなる……)

[レベッカ]
(そんなものを作らせるとは正気じゃないよ、
元帥閣下)

[レベッカ]
(ま……だから、
正気じゃないあたしに作らせたんだろうけど)

  *  *  *

造反艦との戦いが終わり、
ディートリヒ軍全体に
重苦しい空気が立ち込めていた。

ディートリヒ艦も例外ではないことは、
その廊下を歩いていれば肌で感じられる。

[フェリクス]
元帥閣下に呼び出し喰らうとはね。

だからというわけではないが、
フェリクスはつい、
先導するローヴィの背中に声をかけた。

[フェリクス]
何か俺に落ち度でもあったのかい、副官さんよ。

[ローヴィ]
その逆です。
元帥閣下は、寝返りに気づき警告を発した
あなたを、高く評価していらっしゃいます。

[フェリクス]
ほう。てことは、給料を上げてもらえるのか?
そいつはがんばったかいがあるってもんだ。

ローヴィは、つと氷の瞳を彼に向けた。

[ローヴィ]
裏切りにはお詳しいようですね。
フェリクス・シェーファー。

[フェリクス]
職業柄、いろんな裏切りを見てきたんでね。
依頼主に裏切られて捨て駒にされる、
なんてこたァしょっちゅうさ。

[ローヴィ]
それはよかった。

[フェリクス]
いいわけあるか。

[ローヴィ]
そんなあなただからこそ、
お願いしたいことがあるのです。

[フェリクス]
ほう──?

空気が変わる。
それもまた、肌で感じられることではあった。

だから、次のローヴィの言葉にも、
フェリクスは驚かないでいられた。

[ローヴィ]
元帥閣下を裏切り、
こちら側≠ノついていただきたい。

[ローヴィ]
ドルキマス国第1王子──
アルトゥール・ハイリヒベルク殿下の側に。

ディートリヒとエルナ→

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posted by yamanuko at 22:28| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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