2016年09月20日

空戦のドルキマスU 昏き英雄 〜 封魔級:向かうべきは、ただ

←天使降臨?

ディートリヒは、鉄機要塞へ進軍した。

[ウィズ]
未来で〈イグノビリウム〉に乗っ取られた要塞と、
同タイプって話にゃ。

ただ、あのときとは大きな違いがあった。

槍のごとく切り立った山岳地帯の存在である。

ディートリヒ軍は、
その山岳の間を縫うようにして
要塞へと近づいていく。

[ウィズ]
どうして山の上を飛び越えて行かないにゃ?

[ローヴィ]
このあたりは、高空に乱気流ができやすいのです。
複雑な山脈の形状や、海との位置関係が、
原因なのではと推察されています。

[フェリクス]
とはいえよ、相手は対空防備に優れた要塞だろ。
高度を下げて侵入したらいい餌食だぜ。

[クラリア]
案ずるな。要塞の対空砲は、そのほとんどが、
他国からの侵略に対して備え付けられたものだ。

[レベッカ]
ドルキマス国内側から攻め入られるって状況は、
想定していなかったわけね。
お粗末なこと。

[ヴィラム]
国王側には、もうほとんど艦隊戦力はない。
このまま要塞を攻め落としゃ、
つつがなく元帥閣下の勝利ですな。

そうだろうか、と君は不安を感じる。

竜の卵を使うという奇策を打ってきた相手だ。
何の対策も講じずに要塞に引きこもる、という
行動を是とするだろうか?

もちろん、手を打ち尽くしてしまって、
そうするしかないという可能性もあるのだが──

[フェリクス]
ん? おい待て、レーダーに反応だ。

不意に、フェリクスが緊迫と驚愕の声を上げた。

[フェリクス]
敵影──こいつはッ……!

そそり立つ細長い山岳の間から現れ、
ディートリヒ艦隊に砲撃を敢行してくる影。

通常の艦の4分の1ほどの大きさもない、
それは──

[クラリア]
こっ……小型艇だとぉ!?

被弾の衝撃に震える艦内で、
クラリアは目を丸くした。

[クラリア]
こんな、もう戦力にも数えられないような
旧式の小型艇を集めていたとは……!

迎撃を命じるが、功を奏していない。

敵小型艇は、その小ささと機敏さを存分に活かし、
山岳さえも楯にして、すいすいと砲撃をかわす。

そして、敵の砲撃は、威力こそ小さいとはいえ、
確実にディートリヒ艦隊に損害を与えていた。

中には、小型艇の集中砲火から逃れようとして、
焦ったあまり山岳に激突、沈む船もある。

予想外の事態に、クラリアは歯噛みした。

[クラリア]
くそっ、こんなものにいいようにされるとは……!

[フェリクス]
旧式だの小型だのって言っても、局面次第だ。
いくら虎の図体がでかかろうが、檻に入ってちゃ、
猫相手にやられたい放題だろ!

[フェリクス]
しかもあいつら、ただの猫じゃない。
この動き──傭兵!
百戦錬磨のドラ猫どもだ!

[ヴィラム]
自国の艦隊兵力がなくなったもんで、
小型艇使いの傭兵どもをお呼びなすったかい!

[ローヴィ]
閣下、このままでは──

[ディートリヒ]
進め。

ディートリヒは、ただ泰然と告げた。

[ディートリヒ]
ここまで来た。
退く理由などどこにもない。
進め。すべてを喰らい尽くせ!

  ◆  ◆  ◆

(道中)
ディートリヒは、もう退くことはできないにゃ。
見届けなければいけないにゃ。

ディートリヒ軍の船が、また1隻、
小型艇に翻弄されて撃沈されていく。

対してこちらは
ほとんど敵に損害を与えられていない。

[クラリア]
なんというふがいなさだ!
最後の勝利を目の前にしていながら……!

[???]
ハハハハハハ!
戦場で指揮官が毒づく姿を見せてはならんぞ、
クラリア・シャルルリエ少将!

突然割り込んできた無線の声に、クラリア以下、
ブリッジの兵たちはぎょっとなった。

[クラリア]
ヒ──ヒルベルト教官ッ!?

[ユリウス]
今は退役して、ただの傭兵よ!
ハハハ、そら、あいさつ代わりだ!

クラリア艦の近くを小型艇がかすめ、
衝撃がブリッジを揺るがした。

[クラリア]
くっ……!

[ユリウス]
旧式だのなんだのと言われておるがな。
わしが現役だった頃は、
こいつらが主役を張っていたものよ!

[ユリウス]
さあ、ドルキマス軍人の意地と誇りを見せてみろ!
それが生半可なものであれば、
このわしがへし折ってくれるぞ!

  *  *  *

[アルトゥール]
ユリウスめ、はしゃいでいるな……。

自艦のブリッジで戦況報告を聞きながら、
アルトゥールは苦笑する。

鉄機要塞前の山岳地帯──
その地の利を活かし、小型艇で敵軍を翻弄する。
その作戦は、功を奏していると言えた。

[アルトゥール]
(しかし、ベルクが諦めるとは思えん)

さらに二重、三重の策を用意している。
とはいえそれでも安心できる相手ではなかった。

[アルトゥール]
(奴が、我々の用意した策を破りきるか否か。
この戦いの結末は、それで決まる)

[アルトゥール]
(さあ──どう出る?
ディートリヒ・ベルク……!)

  *  *  *

状況が芳しくないのは明らかだった。

しかも、仮にこの逆境を覆しえたとしても、
第1王子の側にはさらなる策が控えている。

[ローヴィ]
(それを超えることができるのか──)

あるいは、超えられず倒れてしまうのか。

ディートリヒが死ぬときは、自分も死ぬときだ。
その覚悟は、すでに決めきっている。

[ローヴィ]
(ディートリヒ・ベルク・
あなたが、この状況をも覆せる方であるか否か。
私はそれを知るために──)

ディートリヒの席へと視線を向ける。

誰もいなかった。

[ローヴィ]
……え?

ディートリヒはいなかった。

先ほどまで、そこで指揮を執っていたはずの彼が。

忽然と、姿を消していた。

[ローヴィ]
…………!!?

ローヴィは文字通り、己の目を疑った。

だが、何度席を見直しても、
やはりそこにディートリヒの姿はない。

だが、いつ?
いったいどうやって──?

茫然となるローヴィの耳を、
悲鳴じみた損害報告が滑りすぎていく……。

  ◆  ◆  ◆

(クリア後)

自艦の被弾報告が続く。
友軍艦が撃沈されたという報告が届く。

悲鳴や怒号が交錯するブリッジで、
クラリアは静かに腕を組んでいる。

状況は悪い。きわめて不利だと言っていい。

だが、こんな事態はいくらでもあった。

小国でありながら、
周辺諸国への侵略を敢行したドルキマス軍──
その先鋒を担ってきた彼女だ。

敵艦に包囲されたこともあったし、
援軍を断たれ、孤立無援に陥ったこともあった。

艦が撃沈寸前になったことも、
一度や二度ではない。

それでも、クラリアは常に生きて帰ってきた。

何も特別なことをした結果ではない。

クラリアの行く道は、常にひとつ。

[クラリア]
前進せよ。

[ヴィラム]
前進!? 前にゃあ山がありますって!

[クラリア]
吹き飛ばせ。

整備士でありながら、すでに少女の片腕とも
言っていい立場にあるヴィラムは──

このとき初めて、
振り向くクラリアの顔に、
その父親と同じ表情を見た。

[クラリア]
我が軍の前に立ちふさがるものは──
船だろうと山だろうと、吹き飛ばしてしまえッ!

クラリア艦の主砲が放たれた。

前方に位置していた小型艇の群れが、
白い光の砲撃を軽やかにかわす。

それでも、砲撃は狙いどおりに直撃した。

そそり立つ、槍のような岩山へと。

合わせて、他の軍艦も主砲を放った。

いずれも山へ。
小型艇を無視して、立ち塞がる山々へ。

光砲を浴びせ、打ち崩しにかかる。

檻≠ェあるなら、食い破る──
クラリアは、そういう虎≠セった。

[フェリクス]
窮地を切り拓く≠チてのは、
こういう意味じゃないと思うんだが。

[フェリクス]
けどここは、便乗させてもらうとしますかね!

フェリクスは、自らも山への砲撃を命じた。

[フェリクス]
くたばれ!

  *  *  *

[ディートリヒ]
ふふ……いつもながらのやり方だな、
クラリア・シャルルリエ少将。

空を揺るがす戦いを見つめながら、
ディートリヒは笑う。

馬.jpg

馬上である。

山脈を抜けた先、鉄機要塞にほど近い平地。
そこに、馬とともに佇んでいる。

彼だけではない。
付き添う君とエルマもまた、
馬上の人となっている。

[ルヴァル]
天の使いを輸送機代わりに使った男は
卿が初めてだ。

翼を広げたルヴァルが、
ディートリヒをあきれたように見やっている。

そう──君たちは、ルヴァルの魔法によって、
艦内からここまで瞬間移動してきたのだ。

ディートリヒはすでに、
ルヴァルが人でないことに勘づき、
接触を図っていたものらしい。

[ディートリヒ]
思いのほか快適な旅だった。
感謝する、アウルム卿。

[ルヴァル]
まだ卿を完全に見定めたわけではない。
だが、〈イグノビリウム〉との戦いにおいて、
必要不可欠な人間だとは思っている。

[ルヴァル]
今、卿に死なれるわけにはいかないのだがな。
本当に自ら要塞に乗り込むつもりか?

[ディートリヒ]
そうでなくては意味がない。

[ディートリヒ]
心配なら同行するか?

[ルヴァル]
いや。少し気になることがある。
それを確かめさせてもらう。

[ディートリヒ]
天の使いも、存外に忙しいようだ。

冗談めいたことを口にして、
ディートリヒは要塞へ馬首を返した。

[ディートリヒ]
ドルキマス王を討つ。
ついてきたまえ。

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posted by yamanuko at 22:37| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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