2016年09月20日

空戦のドルキマスU 昏き英雄 〜 絶級:憎しみのゆく果て

←英雄の影

君たちは鉄機要塞に侵入し、内部を進んだ。

さすがに正面から行ったわけではない。
ディートリヒが抜け道を知っていたので、
そこを利用して潜入した。

内部にはドルキマス兵の姿があったが、
ディートリヒとエルナが先行し、
敵に気づかれるより早く倒していった。

[ウィズ]
ふたりとも、手馴れているにゃ。

[ディートリヒ]
私とて、最初から元帥だったわけではない。

[エルナ]
わたしも、元はスラム育ちの志願兵ですので。
ま、こんなもんです!

なぜ従兵であるエルナを連れてきたのか──
その理由は単純に、
彼女の個人戦闘力の高さにあったらしい。

速やかに、かつ密やかに、君たちは進む。

要塞内は静かなものだ。
まだ潜入には気づかれていないのだろう。

[ディートリヒ]
いずれ気づかれるはずだ。
その前にドルキマス王のもとに
辿り着かなければならない。

[ウィズ]
艦隊の方は放っておいて大丈夫にゃ?

[ディートリヒ]
ドルキマス王を倒せば戦いは終わる。
味方が心配なら、迅速に目的を達することだな。

[エルナ]
この分なら、なんとかなりそうですね。
予想以上に警備が手薄ですし。

[ディートリヒ]
王を守るために手勢を割いてはいられない
ということだろう。
やはり、軍を率いているのは第1王子か。

そのときだった。

君は不意に、背中を氷の刃で刺されたような、
ぞくりと鋭い気配を感じ、背後を振り返った。

そこにいたのは、敵兵ではなかった。

イグノビリウム2.jpg

機械だ。

さまざまな部品を寄せ集めたような、
いびつな人型の機械が、立っている。
ゆっくりと、こちらに歩を進めてくる。

だが、君を戦慄させたのは、
その異形の姿が原因ではない。

感じるのだ。

暗く、重く、冷たい情念。失われたはずの慟哭。
求められぬものを求め続けるような、その気配。

忘れられるはずもない。

[ウィズ]
──〈イグノビリウム〉にゃ!

[イグノビリウム]
ア……ア、ア……。

ソレは、声を発した。
喉を焼きつぶされたような、歪んだ声だった。

[イグノビリウム]
〈王〉ノ……仇……
我ラノ……仇……。

その声に、ディートリヒが眉をひそめる。

[ディートリヒ]
なんだ? あれは何を言っている?

[エルナ]
いえ……ぜんぜんさっぱり……。

やはり、魔法を失った彼らには、
〈イグノビリウム〉の言葉は理解できないのだ。

[ウィズ]
〈王〉の仇って言ったにゃ。
こいつ、ひょっとして……。

ウィズの推測に、君はうなずく。

あのときの戦いで時空の歪みに巻き込まれたのは、
君たちだけではなかったということだ。

目の前にいるのは古代の亡霊──
であると同時に、未来世界から漂流してきた、
〈イグノビリウム〉の残党兵!

[イグノビリウム]
殺シテ……ヤルゾ……
ディートリヒ・ベルク……。

狙っている。ディートリヒを。
過去の彼とわかっているのかいないのか。
いずれにせよ、恐ろしいまでの憎悪を燃やして。

君は懐からカードを取り出し、構えた。

[ウィズ]
ディートリヒ、エルナ!
ここは私たちに任せるにゃ!

[ディートリヒ]
よいのだな?

君はうなずく。

こいつは君が連れてきてしまった亡霊だ。
本来、この時間軸にいなかったはずの邪魔者。
ディートリヒたちを巻き込むわけにはいかない。

[ディートリヒ]
わかった。この場は任せる。
後ほど、武勲のほどを聞かせてもらおう。

[エルナ]
がんばってくださいね、魔法使いさん!

ふたりは、通路の奥へ駆けていく。

君も、ふたりとは反対側に駆け出した。

〈イグノビリウム〉──倒すべき敵へと向かって。

  ◆  ◆  ◆

(道中)
こんなところで〈イグノビリウム〉に遭遇するなんて……。
絶対に倒してみせるにゃ!

要塞に、振動が走る。

[エルナ]
魔法使いさんと、
〈イグノビリウム〉……が、
戦ってるんでしょうか。

[ディートリヒ]
あちらは任せておけばよい。

にべもなく言って、ディートリヒは足を進める。

その後ろ姿にエルナは、くすりと笑いをこぼした。

[エルナ]
閣下、意外と買われてますよね。
魔法使いさんのこと。

[ディートリヒ]
意志の強さは疑うべくもない。
もし戦場であいまみえたとしたら、
ある意味、最も厄介な手合いだ。

[エルナ]
ふふ。かもしれませんね。

人なき道を駆けてゆく。

王の元へと続く道。
勝利をもたらす道。

ひた走り、駆け抜けて──

[???]
ディイィイイィイイトリヒィィイィィイイッ!!

[ふたり]
──!

轟音が、道そのものを割り砕いた。

見えたのは、赤。赤黒い衝撃波。

それが天井を粉砕し、瓦礫の雨を降らせ──
廊下いっぱいに広がって、
ディートリヒとエルナを吹き飛ばした。

[エルナ]
ぁあっ……!

[ディートリヒ]
ぐっ……!

巨人の拳を叩きつけられたような衝撃。
骨が軋み、砕ける感触を味わいながら、
ディートリヒは激しく床を横転する。

[ディートリヒ]
……。

ディートリヒはすばやく立ち上がり、
銃を構えた。

もうもうと立ち込める噴煙の彼方に、
不気味な赤光が瞬く。

鉄機要塞をぶち抜いて現れた女──
その瞳に燈る、人ならざる瞳の光が。

[ディートリヒ]
(あの女──ザビーネ・クーンと言ったか)

ディートリヒの命を狙い、艦に潜入していた女。
独房に閉じ込められたままのはずだったが──

[ザビーネ]
ディートリヒ……仇ッ……
弟の仇……〈王〉の仇ぃいぃいッ……!!

近づいてくる。
踏み出す都度、吹き上がる赤黒い気が、
床をどろりと溶解させてゆく。

その気配は、先ほど相対した
〈イグノビリウム〉なるものと酷似している。

[ディートリヒ]
人の念を呑むのか。
〈イグノビリウム〉とやらは。

[ザビーネ]
うぅぅうあああぁああああああーっ!!

自ら築いた瓦礫を吹き飛ばすようにして、
ザビーネが走り出す。

ディートリヒはすばやく、そして正確に、
女の胸に狙いを定めて引き金を引いた。

直撃。女が足を止める。

だが、それだけだ。死なない。向かってくる。

[エルナ]
……閣下ぁっ!

通路の壁側に吹き飛ばされていたエルナが、
ザビーネに体当たりをするようにして組みつく。

その隙に、ディートリヒは撃った。
額。
女の頭部を弾が貫通する。

[ザビーネ]
邪魔だァッ!!

止まらない。ザビーネが激しく腕を振るった。

赤黒い閃光が炸裂。
周囲の瓦礫ごとエルナを吹き飛ばす。

[エルナ]
あ……。

鉛鉱に動を薙がれ、エルナは鮮血を噴いて倒れた。
その上に、砕けた瓦礫のかけらが降り注ぎ、
押しつぶしていく。

おかげで、敵の動きが一瞬、止まった。
ディートリヒは銃を構える。

胴。額。いずれも致命傷にはならなかった。
ではどうする。どこを撃てばいい。

[ザビーネ]
ディートリヒィッ!!

ザビーネが来る。
尽きせぬ憤怒と憎悪に瞳を赤くきらめかせて。

憎悪。他のすべてを喰らい尽くすような──

忽然として、ディートリヒは悟った。

[ディートリヒ]
──そうか。目≠ゥ!

撃つ。

銃弾は狙い違わず、
迫り来るザビーネの左目に飛び込み、
赤い輝きを貫通していく。

止まらない。まだ。
右眼が尽きせぬ憎悪に満ちている──

[ザビーネ]
おまえが奪ったッ!

血走るような叫びと共に、腕が伸びた。

避けようとしたが、骨が軋んだ。一瞬の停滞。

その隙に喉をつかまれ、持ち上げられた。
むけようとした銃は容易に弾き飛ばされる。

[ザビーネ]
おまえが弟を殺したんだディィトリヒィィィ!
おまえが〈王〉を殺した、〈イグノビリウム〉
がならず者の消えろとみんな喜んで!!

言葉の断片を繋ぎ合せただけのでたらめな糾弾
と共に、喉をつかむ手に力が込められる。

[ディートリヒ]
ぐ……。

[ザビーネ]
おまえは──この手で殺すッ!

  *  *  *

[イグノビリウム]
ディートリヒ……仇……!!

激しい憎悪をまき散らしながら、
〈イグノビリウム〉の残党兵は暴れ回る。

[ウィズ]
こいつを、ディートリヒとエルナのところへ
行かせるわけにはいかないにゃ!

ウィズの言葉に、君はうなずく。

[ザビーネ]
確かなことは、ただひとつ──
あの男を憎み、恨み、呪っている人間は、
あたしたちだけではないということだ!!

[エルナ]
だからね。みんな、期待しているんですよ。
ベルク元帥が導かれる国──
平和に満ちた、新たなるドルキマスに!

ディートリヒは、決して平和の使者ではない。

彼の行く道は、
多くの人間の犠牲の上に築かれた道だ。

だが──今、この戦いが、荒れ果てた
ドルキマスの民に光明をもたらすことも事実。

そして、その光は、来るべき
〈イグノビリウム〉との戦いにおいて、
確かな希望となる。

だから。

君は新たなカードを取り出し、魔力を込める。

この世界、この時代にいるべきではない者同士、
決着をつけるために──

  ◆  ◆  ◆

(クリア後)

[イグノビリウム]
ウァアァアアァアアッ!!

幾多の魔法を浴び、ほとんど壊れかけの状態で、
それでもなお〈イグノビリウム〉は向かってくる。

君は気力を振り絞り、
さらなる魔法を放つべく精神を集中する。

[ルヴァル]
見事追い詰めた──魔法使い!

白い閃光が駆け抜けた。

天より降り注ぐ光そのもの。
清らかなる光の刃が、
ぼろぼろの〈イグノビリウム〉を断つ。

[イグノビリウム]
ガ……ア……。

ついに〈イグノビリウム〉は倒れ、
完全に消滅した。

[ルヴァル]
すまない。救援が遅くなった。

[ウィズ]
ひょっとして、
ルヴァルの言ってた
気になること≠チて……。

[ルヴァル]
戦場に〈イグノビリウム〉の気配を感じた。
蘇るには早すぎるが、もしやと思ってな。

[ルヴァル]
その気配が要塞に向かったので、追ってきたのだ。

[ウィズ]
私たちと同じ時代から来た奴だったみたいにゃ。
でも、やっつけたから、これで安心にゃ!

[ルヴァル]
いや。
感じる。この奥に、もう1体いる。

そう告げるルヴァルの横顔に、悔恨が浮かぶ。

[ルヴァル]
あの船で感じたよくない気≠フ正体は、
これだったか……。

  *  *  *

──夜は、いつも暗く濁っていた。

心の奥まで切り刻むような冷たい風が、
いつも、鉄サビめいた血のにおいを運んでくる。

屋根のない廃墟。
積み重ねられた瓦礫。
血や異臭≠ワでも漂う場所。

ドルキマス国内にありながら、
国から見捨てられた──そんな場所。

血生臭さを吸い込み、
その日を生きながらえることだけを考える。

およそ人と呼べる生活は見込めず、
何より、
人であるものからは虐げられる日々。

そんな場所に追いやられながら、
自分を育ててくれた母が、
今わの際に残した言葉は──

[エルナ]
う……。

自分自身のうめき声が、
記憶のなかのよどんだ夜から意識を引き戻した。

激痛。血臭。視界がぼやけ、焦点があわない。
わたしはどうしてここにいるんだっけ──?

[ディートリヒ]
そうか。目≠ゥ!

男の声と銃声が、エルナの頭を強烈に叩いた。

[エルナ]
(そうだ、わたしは……!)

ハッとして、半ば閉じかけていたまぶたを開く。

見えた。

屋根のない通路。
積み重ねられた瓦礫。
血と異臭にまみれた女の後ろ姿──

女が吼える。その指が誰かの首にかかった。
持ち上げられる──首をつかまれてなお、
揺るぎない瞳──ディートリヒ・ベルク元帥!

[エルナ]
元、帥……閣下っ……!

うつぶせながら、身体を起こそうとする。

だめだ。動かない。上に何かが乗っている。

血にまみれた鉄の瓦礫。

結局おまえは廃墟と瓦礫と血生臭さから
逃れられないのだと、言われているようだった。

[エルナ]
(だっ、たら……!)

腕を伸ばす。何かに触れた。
冷たい鉄の感触。銃。
震える指で確かにつかみ、引き寄せる。

[エルナ]
(見せてやる……わたしが培ったもの!
あの夜のなかで磨いてきたものを!)

あ い つ を 殺 し て

母は言った。泣きながらの遺言だった。
独りで生きていけるようになるまで育ててくれた
母の願いだから、叶えるのは当然だと思った。

復讐。
そのために腕を磨いた。銃の撃ち方。殺しの技。
ただひとりの男に報いをくれてやるためだけに。

だが、服種のために入った軍で、見てしまった。

ディートリヒ・ベルクという男を。
彼が軍を導き、勝利を重ねるさまを。
それが国を変えていく光景を。

茫然となった心に、願いが生まれた。

母から託された願いではなく、自ら抱いた願いが。

[エルナ]
この人に、変えてほしい

[エルナ]
澱んだ国を。あの廃墟と瓦礫を。
もう誰も、あの夜の寒さに
震えることなどないように。

死なせてはならない。これから変わるのだ。
ディートリヒがドルキマス王を討つことで、
あの夜は本当の意味で終わりを告げるのだ──

[エルナ]
く、う──

目>氛气fィートリヒはそう言った。
彼があえて口にしたからには意味がある。
目を狙え。きっと自分にそう教えるために。

片方はディートリヒが潰した。
もう片方。右目。それさえ撃てば。
だが、後ろからでは──

[エルナ]
元、帥っ……閣下ぁぁああーっ!

エルナの叫びに、彼は応えた。

[ディートリヒ]
……ッ!!

首をつかまれ、
じわじわと締めあげられている状態で、
カッと左目を見開き──

ザビーネの横っ面に、渾身の右拳を叩き込んだ。

[ザビーネ]
──!?

不意打ち。打たれたザビーネの顔が、衝撃で
ぐるりと右を向く。

エルナの位置から、右目が見えるように。

[エルナ]
くっ──

だが、エルナの目はかすみ始めていた。

視界が揺らぎ、銃口が震える。
狙いが定まらない──

[エルナ]
(母さん……)

[エルナ]
(お願い──助けて、母さん!)

[エルナ]
(あの人は──
あの夜を終わらせてくれる人なの!!)

視界が開けた。

ふっと身体が軽くなり、ぴたりと銃口が定まった。

その感覚があった瞬間、撃っていた。

すべてが銃口から放たれたような心地だった。

過去も、願いも、魂も──
自分という自分のすべてが弾丸となって。

こちらを向いた女の右目を撃ち抜き、
頭蓋を貫通して、
ディートリヒの顔の真横を通り過ぎていった。

[ザビーネ]
が……。

女が、くたりと倒れ伏す。

それを見届ける力すら、エルナにはなかった。

それでも、彼女は微笑んでいた。

[エルナ]
ありがとう……母さん……。

〈イグノビリウム〉を倒し、
ディートリヒの後を追った君たちは、見た。

破壊の爪痕にまみれた通路の奥──
瓦礫の下に横たわるエルナと、
その傍らにしゃがみこむディートリヒの姿を。

[エルナ]
ごめんなさい……閣下……。

[エルナ]
わたし……実は、閣下のこと……
利用、しようと……思って……。

音を喰われ尽くしたかのごとく
静まり返った通路に、
かぼそい声が響いていた。

[エルナ]
王を……殺してほしかった……。
わたしと母さんを捨てたあいつを……。

[エルナ]
でも……あなたを見て、思ったんです。
あなたなら……この国を変えてくれる……
あの夜を……終わらせてくれるって……。

[エルナ]
お願いします……閣下……
あの夜のなかで……死んでいった……
みんなの、ために……。

君は走った。
癒しの力を秘めたカードに魔力を込めながら。

だが、彼女のもとに辿り着いたとき。

もう、声は聞こえなくなっていた。

[ディートリヒ]
……私たちだけでは、なかったということか。

ディートリヒが、ぽつりとつぶやく。

感情ひとつ、読み取ることはできなかった。
声からも。瞳からも。
その表情からすら。

ディートリヒは立ち上がり、歩き出す。

[ディートリヒ]
ゆくぞ。王はこの先だ。

なにひとつ、顧みることとてなく。

昏き英雄→

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posted by yamanuko at 22:41| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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