2016年09月18日

空戦のドルキマスU 昏き英雄 〜 少将だ!!

←従兵エルナ

降伏したフェリクスとヴィラムは、
ディートリヒの船に招かれた。

そこで待っていたのは、やはり、
ブリッジ越しに顔を合わせた、あの男だった。

[ディートリヒ]
ドルキマス軍の人間ではないな。
ザイデル辺境伯が雇った私兵か。

[フェリクス]
傭兵さ。
もっとも、雇い主の方が逃げちまったけどね。

天下の奸計大元帥≠前に、
フェリクスは臆することなく肩をすくめてみせる。

[ディートリヒ]
ならば、我が軍が雇おう。
フェリクス・シェーファー傭兵隊長。

[ローヴィ]
こちらが契約書です。
ご確認を。

ディートリヒの傍らに控えるローヴィから、
きびきびと契約書を手渡され、
フェリクスは大仰に顔をしかめた。

[フェリクス]
ご用意のいいこって。
まるで決定事項みたいにおっしゃるね。

[ディートリヒ]
不服か?

[フェリクス]
言ってみただけだよ。
天下の大元帥に雇っていただけるってんなら、
そりゃ文句はないさ……。

[ディートリヒ]
では、貴君には、シャルルリエ少将とともに
我が軍の先鋒を担ってもらう。

[ローヴィ]
オルゲン大尉。
貴官もシャルルリエ少将の船に配属となります。

[ヴィラム]
え、俺も?

なんで自分まで連れてこられたのかわからない、
という顔で所在なげにしていたヴィラムが、
ぎょっと自分の顔を指差した。

[ディートリヒ]
不死身のシャルルリエ=c…
ブルーノの右腕であった貴官なら、
シャルルリエ少将を支えるに適格と見たが。

[ヴィラム]
また古い話を持ち出してくれますね……。

ヴィラムは渋い顔をした。

[ヴィラム]
何が不死身のシャルルリエ≠ナすか。
その異名がマジモンだったら、
あの方は今でも最前線でがなってますよ。

わざとらしく、機械化義手を動かしてみせる。

[ローヴィ]
オルゲン大尉。これは命令です。
貴官に拒否する権利はありません。

[ヴィラム]
へいへいへーい。言ってみただけでーす。

あからさまに嫌そうな顔でぼやくヴィラム。

ローヴィはさすがに眉をひそめたが、
ディートリヒは気にした風もない。

[ディートリヒ]
通達は以上だ。
両名──私の期待に応えてくれたまえ。

  *  *  *

[クラリア]
クラリア・シャルルリエ少将だ。

その少女は、傲岸不遜に腕を組み、
厳めしく名乗った。

[クラリア]
久しいな、オルゲン。
父の右腕と称された貴様が、
どうして国境くんだりでのんびりしていたのだ。

ヴィラムは困り顔で頬をかく。

[ヴィラム]
右腕、右腕って……俺ぁただの整備兵ですよ。
あんまり買いかぶってもらっちゃ困るんですがね。

[クラリア]
買いかぶってなどいるものか。
貴様の話は父から聞いている。
その評価に見合う扱いをさせてもらうぞ。

言うだけ言って、クラリアは、
ヴィラムの隣に立つフェリクスを見やった。

[クラリア]
で──
こっちが、あの雲隠れ≠しようとした
傭兵とやらか。

[クラリア]
あいさつが遅れた。
クラリア・シャルルリエ少将だ。

[フェリクス]
…………。

フェリクスは、
これ以上ないというくらいの真顔を
ヴィラムに向けた。

[フェリクス]
ヴィラムの旦那。冗談だろ?
なんだこのちっこいのは。

[クラリア]
クラリア! シャルルリエ! 少将だ!

[フェリクス]
少将て。

がりがりと、フェリクスは頭をかいた。

[フェリクス]
わけわかんねぇなァ、ドルキマス軍ってのは……
元帥があんな若いかと思ったら、こんなちっこい
のが少将だ? 人手不足が深刻なのか?

[ヴィラム]
あー、そいつは否定できんがね。

クラリアが、ふんと鼻を鳴らす。

[クラリア]
あきれたな。
年齢を理由に相手を侮るのが傭兵の流儀か?

[フェリクス]
いや、ほんとはこっちがそういうセリフを
吐く側なんだが。

[フェリクス]
しかし、こいつは……うん……予想外だわ……。

[ヴィラム]
そう言うな、フェリクス。
シャルルリエ少将は確かにちっこくてお若いがね、
実力は確かさ。

[フェリクス]
あの元帥が先鋒に任じてるってんなら、
そうなんだろうけどな……。

ひとしきり、唸ってから。

フェリクスは、不意に鋭く目を細め、
上体を折り曲げるようにして、
少女の瞳をのぞきこみ──

ぞっとするほど底冷えする声で、問うた。

[フェリクス]
楽しいかい、お嬢ちゃん。

[クラリア]
何がだ。

[フェリクス]
何百人って人間が、あんたの命令ひとつで
空の塵と消えるのが……さ。

クラリアは、なんだ、そんなことか、
と言わんばかりに鼻を鳴らした。

[クラリア]
私が喜ぶのは相手の死ではない。
ドルキマス軍の勝利であり、元帥閣下の勝利だ。

[クラリア]
敵兵どもが死のうが生きようが、
知ったことじゃない。

[クラリア]
無論──金で雇われた戦争屋が、
敵を侮って無様に死のうともな。

その返答に。

フェリクスは、両手を挙げて降参を示した。

[フェリクス]
悪かった。そうならんよう、
せいぜい肝に銘じとくよ。

言いながら──思わず、内心で嘆息する。

[フェリクス]
(自分に酔ってるってんでもなけりゃ、
信仰や使命感に溺れてるってわけでもない、
本気で戦争やってるタマか)

[フェリクス]
(とんでもない連中に雇われちまったのかもなァ、
俺……)

中級:復讐と裏切りと→

←目次

←トップ
posted by yamanuko at 22:20| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


人気ブログランキングへ