2016年11月02日

黄昏メアレスU 残響dearless 〜 REPURE


←上級:内なる炎を意地として

[ゼラード]
妖精……だぁ?

夕暮れが終わり、夜となって。

門を守っていたゼラードたちは、合流早々、
にこにこと微笑む少女の自己紹介を受けて、
目を瞬かせた。

[ミリィ]
マジっすか……うわあ、羽パタパタしてるぅ。
ていうか、この子、どう見ても……。

[コピシュ]
あのときの──
〈ピュアメア〉……ですよね?

[リピュア]
──???
私は、リピュアだよ?
魔法の妖精、リピュア・アラト!

少女は屈託なく笑い、
君とリフィルの手を取った。

[リピュア]
えへへ、やっと会えた!
私、ずっと見てたんだよ。
あなたたちが魔法を使ってがんばってるとこ!

[リフィル]
私たちを? ずっと?

[リピュア]
うん。
私ね、生まれたばっかで、力が弱かったの。
だから、ずっと実体化できなかったんだけど──

[リピュア]
リフィル、いーっぱい魔力を
ばらまいてくれたでしょ?
あれ使ってね、やっと実体化できたんだ!

[アフリト]
なにせ、2年以上もの間、
〈黄昏(サンセット)〉が溜めに溜めた魔力よ。
じゅうぶんすぎるほどであったなあ。

[リフィル]
アフリト翁……。

不意に現れ、くつくつと笑うアフリトへ、
リフィルは物言いたげな視線を向ける。

アフリトは彼女の傍らに近づき、
何事かささやいた。

[アフリト]
我が本体──フルト・アラトが、彼女のことを
気に入ってしまってねえ。砕け散った魂に
妖精界の息吹を与え、生まれ変わらせたのさ。

[アフリト]
人に捨てられたのではなく、人が死んだことで
生まれた夢……ゆえに人を恨まぬ、清らかな魂を
持っていた。そうでなければ、こうはいかん。

[リフィル]
どちらにしても……
あの子≠サのものではない、ということね。

ふたりの会話は、君には聞こえなかった。
だが、リフィルの神妙な顔つきからすると、何か、
彼女にとって大事なことを確かめていたようだ。

[リピュア]
私ね、魔法の力で、みんなを幸せにしたいんだ。
だから、いっしょにがんばろうね!
リフィル、魔法使いさん!

よろしく、と君は
差し出されたリピュアの手を握り返した。

[ルリアゲハ]
しっかし、溜め込んでた魔力を全部解放して、
人形を自爆させるなんてねえ。
リフィルも思い切ったもんだわ。

[リフィル]
死ぬよりマシでしょ。

苫笑するルリアゲハに、
リフィルは、さらりと肩をすくめる。

[レッジ]
この世界に魔法の存在を示し続ける……
それがアストルム一門の目的で、だからこそ、
おまえも魔力を溜め続けていたはずだ。

どこか厳粛な面持ちで、レッジが言った。

[レッジ]
なのに……どうして、あそこまで思いきれる?

[リフィル]
言ったでしょ。
前の私にはそれしかなかった。今はそうじゃない。
だから、魔力の使い道くらい自分で決める。

[リフィル]
あなたの方はどうするの?
〈魔輪匠(ウィールライト)〉。
門を守る仕事には、愛想が尽きたようだけど。

[レッジ]
……ああ、そうだな。
自分でも、どうしたらしいのかわからない。
わからないが……。

一瞬、うつむいてから。

レッジは、顔を上げた。
その双眸に、決意の火を乗せて。

[レッジ]
俺はユイアを誤解していた。
その償いはしなければならない。
あの〈ロストメア〉を討つことで。

[レッジ]
どんな〈夢〉だろうと、〈ロストメア〉だ。
現実≠ノ出せば、世界がイカれる。
ユイアは……そうなることを望まないだろう。

[レッジ]
だから、〈ラウズメア〉は討つ。
今は、それだけ決めた。
そのあとのことは、そのあとで考える。

それでいいと思うよ、と君はレッジに笑いかける。

[レッジ]
おまえにも迷惑をかけたな、魔法使い。
だが、おかげで助かった。
借りの返し方は、考えておく。

そんなに気にしなくても、と答える君の後ろで、
ミリィがパンと手を打った。

[ミリィ]
そうと決まれば、一丁、パーッとやりましょう!

[ゼラード]
お、いいねえ。ずっとケチな病院食だったからな、
ここいらで肉と酒を補給しとかねえと。

[コピシュ]
元気になったからって、
いきなり暴飲暴食はダメですよ、お父さん。

[ゼラード]
大丈夫だって。
あ、そうだ。つうか俺の復帰祝いどうしたよ!

[ルリアゲハ]
ああ。そういやそんなものあったわね。
退院即日現場復帰とか言ってたから、
すっかり忘れてたわ。

[ゼラード]
ひっでえな!

[ルリアゲハ]
まあまあ、まとめてやったげるから。
あ、〈巡る幸い〉亭でいいでしょ?

わいわいと騒ぎ出す〈メアレス〉たち。
その光景を見て、ウィズが笑う。

[ウィズ]
レッジも吹っ切れたみたいだし、
これなら、〈ロストメア〉との戦いも平気だにゃ。

そうだね、と微笑みながらうなずいたとき、
君は、懐に熱を感じた。

[ウィズ]
キミ、どうしたにゃ?

君は、熱の源──
1枚のカードを取り出してみせる。

[ウィズ]
にゃにゃ?
契約済みみたいだけど……
そんなカード、持ってたかにゃ?

さあ、と君は首をかしげるしかなかった。

  ◆  ◆  ◆

…………

あれから、数日の時が過ぎた。

[ミリィ]
今日も空振りだったんすか?
〈ラウズメア〉探し。

[レッジ]
ああ。リフィルやリピュアの魔法を併用して、
さらに探査の網を広げてみたが……
それでもだめだった。

[ルリアゲハ]
完全に、逃げることを優先してるって感じね。
さりとて門を襲うわけでもないのが、
不気味なところだけど。

[ラギト]
前回はこちらの戦力を削りに来たが、
それが厳しいと分かってやり方を変えたのかもな。
少なくとも何も企んでいないことはないはずだ。

[コピシュ]
妙ですね。あっちにしてみたら、
魔法陣が解除されるまでに
決着をつけなきゃいけないはずなのに……。

同じテーブルで話し合う君たちの耳に、
リフィルとリピュアの声が届く。

[リフィル]
らっしゃーせー。

[リピュア]
らっしゃーせー。

てきぱき接客をこなすリフィルと、
にこにこ応対するリピュア。
ゼラードが、あきれたような声を上げる。

[ゼラード]
昼も歩き回ってるってのに、
よく働くねえ、おまえら。

[リフィル]
溜めていた魔力が吹き飛んだ分、
ますます節約しないといけなくなったもの。

[ミリィ]
あれっ、そういや、今は魔力ナシってことですか?

[レッジ]
俺の手持ちの魔力から補填させてもらった。
量が量だから、さすがにすべてじゃあないが、
徐々にでも返していくつもりだ。

[ゼラード]
おっ、つまり……借金か? 借金だな?

[レッジ]
なんで嬉しそうなんだ。

そんなことを話していると、
リピュアが笑顔で皿を運んできた。

[リピュア]
マトンと野菜のグツグツシチュー、お待ちどーう!

テーブルに、ドン、と鍋が置かれる。
そのなかには、生肉と生野菜と水が
まとめてぶちこまれていた。

[ゼラード]
……って、コレぜんぶ材料じゃねえか。
あのなあ、妖精のお嬢ちゃん。
料理したもん持ってきてくれよ。

[リピュア]
料理なら、これからするよー。

[リピュア]
こほん。
ツルカメツルカメ、どっとはらい!

リピュアが、
まったく意味のわからない呪文を唱える。

すると、鍋の中身が、一瞬にして、
グツグツ煮立つシチューに変わった。

[ウィズ]
にゃにゃにゃ!?

[ミリィ]
わーいシチューがえええええええ!?
なんすかこれ!? 何したんすか!?

[リピュア]
魔法だよー。

[レッジ]
待て、いったい何をどうやった!?
料理の全工程をあんな呪文ひとつで
済ませたのか!? どういう理屈だ!?

[リピュア]
愛と希望の力だよ。

[レッジ]
理屈どこだ!!!!!

[ルリアゲハ]
ていうか、量! 量多くない!?
なんかどんどん増えて、ああんもう、
こぼれてんじゃないのほらー!

[リフィル]
ねえ、魔力の気配がしたんだけど──

眉をひそめて厨房からやってきたリフィルが、
鍋からシチューの噴きこぼれる光景を見て……。

そのまま、そっと後ろ歩きを始めた。

[コピシュ]
ティーーーーチャーーーー!!

[ゼラード]
無言で戻んなよ!
おまえも魔法使いだろ、なんとかしてけよ!

[リフィル]
無理よ……。
その子の魔法、理論もへったくれもないもの。

[リピュア]
だから、愛と勇気と茶目っ気だって〜。

[ルリアゲハ]
なんかさっきと違うんだけど。

[ミリィ]
そうだ、魔法使いさん!
異界の魔法でなんとかなりませんかね!?

無理。

[レッジ]
待てよ。適切な材料が必要ということは、
必要な工程をすっ飛ばす時間干渉系の
魔法と考えると、まだ納得もできるか……?

シチュー.jpg

[シチュー]
我はシチュージン……
愛と勇気と茶目っ気の汁……。

[ラギト]
おい。
しゃべりだしたぞ。
シチューが。

[レッジ]
──!?!?!?!?!?!?

  ◆  ◆  ◆

…………

[ゼラード]
……来ねえな、連中。

[ミリィ]
来ないっすね。ぜんぜん。

開かれた門の奥から、続々と隊商が現れる。

君たちは、
そんな光景のどこにも異常がないことを、
逐一確認しながら、〈門番〉を続けていた。

[ゼラード]
門を潜るのを諦めた、
なんてオチじゃねえよな。

[コピシュ]
それはないと思うんですけど……
門を潜るのは、
〈ロストメア〉の最終目的ですし……。

[ルリアゲハ]
そういえば、魔法陣解除のメドって、
そろそろ立ったの? アフリト翁。

[アフリト]
前もそうだったが、おそろしく精密な陣でな。
あと2日はかかると思ってくれ。

[ウィズ]
魔法陣といえば、
この広場にも、それっぽいものがあるけど、
あれはなんにゃ?

[レッジ]
俺の弓と同じ、魔匠技術の産物だ。
門の力を支えている。

[アフリト]
もともと魔匠技術は、
門の安定化を図るために
発達したものだからねえ。

[アフリト]
最初に狭間の世界が見つかったとき、
今この都市のある場所には、
現実≠ノ通じる穴≠セけがあった。

[アフリト]
そこに門という形≠与えたのさ。
実際に門を築き、
門を意味する魔匠を彫り込むことでなあ。

[アフリト]
それでようやく安定した通行が可能になった。
それ以前は、黄昏時に開いたり開かなかったりと、
実に不安定な場≠セったのさ。

[ミリィ]
なんか、見てきたように言いますね……。

[レッジ]
だから、俺の一族は代々魔匠師をやってるんだ。
魔匠技術の専門家でなければ、
門の管理はできないからな。

言いつつ、レッジは車輪を取り出してみせる。

[リピュア]
あ、それ、気になってたんだ。
見せて見せて〜。

[レッジ]
……変なことするなよ。

リピュアは車輪を受け取り、
しげしげと眺める。

[リピュア]
ふむふむ、このなかに、
魔法の力が入っておりますわけですな……。

そして、おもむろに車輪を指に差し込み、
反対の手で勢いよく回転させた。

[リピュア]
〈デテクトウィール〉!!

[レッジ]
ディテクトな。

車輪は勢いよく回ったが、何も起こらなかった。

[リピュア]
あれ〜? なんで?

[レッジ]
ウィールだけではだめだ。
この弓の機構と連動して、
初めて効果を発揮する。

[ミリィ]
おっ。てことは、あたしのパイルバンカーに
その機構を仕込んでもらったら、
あたしもウィールを使えるようになります!?

[レッジ]
いちおう、ウィール機構は門外不出なんだが……
それはいいとしても、
改造するのに2年はかかるぞ。

[ミリィ]
あう。

[ルルアゲハ]
さすがに2年も待つのはねえ……。

[ルリアゲハ]
あ、そだ。リピュアの魔法で、
パパーッと強くできたりしない?

[レッジ]
おい。

[リピュア]
やっちゃいますか!

[レッジ]
よせ。
この流れはダメだって昨日わかったろ!!

[リピュア]
チチンプイプイ、ゴヨノオタカラ、
あーした天気になーぁれ!!

[レッジ]
おい最後!!

ぽん、と音を立て、
パイルバンカーから、
もくもくと煙が立ち込めた。

[ミリィ]
ちょっ、ど、どうなったんです!?

[ラギト]
──パイルバンカーがしゃべる≠ノビール1杯。

[リフィル]
──ニラになる≠ノベリータル卜。

[ミリィ]
怖い賭けしないでくださいよ!!

煙が晴れ、パイルバンカーがあらわになる。

そう、パイルバンカーが……。

[ミリィ]
増えとる!!!!

[ふたり]
そっちか……。

[コピシュ]
……あの、物を増やすって、
何気にとんでもないですよね?

[ゼラード]
まさか……金もか?
行けんのか? 増やしたい放題か!?

[コピシュ]
お父さん!

[リピュア]
増やしてないよ?
これ、もともと割れる仕組みだったみたい。

[ミリィ]
え? そうなんすか?

[ルリアゲハ]
あ、ホント。
合体させたら元に戻るみたいね。
はい、ガチャコンっと。

[ラギト]
なるほど、これは面白いな。
高威力の合体形態と、小回りの利く分割形態、
ふたつを臨機応変に使い分けられる仕組みか。

[ミリィ]
あ、そういえば、これ買うときに、
ユバル社の人がそんなこと
言ってたような言ってなかったような……。

君たちは、ミリィを遠巻きにして
ひそひそと会話を始めた。

[ウィズ]
鳥……。

[レッジ]
鳥頭……。

[ルリアゲハ]
〈戦小鳥(ウォーブリンガー)〉って
そういう……。

[ミリィ]
ち、違いますって! ねえアフリト様、
違いますよねってえええええいなーい!
こういうときだけあの人いなーい!!!

封魔級:火花散る意志→

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posted by yamanuko at 19:35| Comment(1) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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ほっこりするの〜
Posted by 通りすがりの魔道士 at 2017年05月18日 00:46
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