2017年01月09日

暁の千鬼夜行 ミオ・ツヅラオリ

ここは和ノ国。
カラッと晴れた青空の下、街道脇の茶屋で、ミオ・ツヅラオリは大いにはしゃいでいた。
「ハヅキさんハヅキさんハヅキさん!!」
彼女が話しかけているのは、大量の剣を抱えた女剣士。名をハヅキ・ユメガタリと言う。
「はい、はい、はい……」
心底面倒くさい、と言わんばかりの表情で団子をぱくつきながら、ハヅキは呼ばれた名前の数だけ返事を返した。
「で、ミオ。なんか用か? あと呼び捨てで良いって何度も言ってんだろ」
「あわわわわ……!!」
「は? ……いや、だから何の用なんだよ」
「ハヅキさんに名前を呼ばれました……! 名前を呼ばれました!!」
隠す素振りも見せず、ハヅキはめんどくせぇー、とわかりやすく顔に出しながら大きなため息をついた。
二人が知り合ったのは、およそひと月ほど前。あらくれ者たちに絡まれていた彼女を、ハヅキが気まぐれに助けたことから、ミオのつきまといに近い絡みが続いている。
彼女はその体験により、ハヅキに憧れて剣を習い始めようとしたが、たくさんの剣を腰と背中に差したら身動きが取れなくなってしまったため、しぶしぶ都の魔学舎へ入学し、現在に至っている。
「私を助けてくれたハヅキさんには、本当に本当に感謝してます! ありがとうございますハヅキさん!」
真正面から感謝の言葉を受け、ハヅキは一瞬きょとんとしてから、唇を尖らせて少し頬を赤くした。
「だ、だからよ、呼び捨てで良いって。さんとか様とかそういうのくすぐってぇんだよ」
「いーえ! 命の恩人を呼び捨てになんてできませんよハヅキさん!」
「はぁ……まったく、勝手にしろぃ」
「ふふっ、なるほどー。ハヅキの弱点みーっけ」
ぷいっと横を向いたハヅキの横に、盆に乗せた団子とお茶を運んできたのは、ツバキ・リンドウ。彼女は団子とお茶を二人に渡すと、上品にハヅキの隣へと腰掛ける。ちょうどハヅキを挟むような形で、長椅子には女子三人が並ぶ形になった。
「それで、ミオちゃん。魔学舎での勉強は順調?」
「あ! それはもう順調です順調です!」
ミオはツバキにそう言うと、グッと力を込めて、魔力を手に集める。それから空中にするすると模様を書くと、そこからぽん、と小さなカエルが現れた。その額には、今しがたミオの書いた模様がついている。
「おおー、すごいわねミオちゃん。ねえ、ハヅキ。カエルよカエル」
「ヒィ!」
「ん? どうしたんですハヅキさん」
「い、いや……カエルは苦手なんだよ……」
「えー、可愛いじゃないですか可愛いじゃないですかぁ」
そう言い、次から次へとカエルを召喚していくミオを見て、だんだんとハヅキの顔色は真っ青に変わっていく。
ツバキはそんなハヅキを見てイタズラな笑みを浮かべると、彼女の耳にこうつぶやいた。
「ゲコッ」
「ぎゃーー!! いーーーーやーーーー!!」
ハヅキの叫びとともに、トンビがひとつ高く鳴き、さらにそれを合図にしてハヅキは全力疾走を始める。
「あーん! 待ってくださいよハヅキさんハヅキさーん!!」
ミオはハヅキを追いかけ始め、その様子を眺めながら、ツバキは残された団子を黙々と食べていた。
「今日も平和ねぇ……」
和ノ国の空は、今日も今日とて、青く、高い。彼女たちの日常は、これから先も、まだ続く。

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ラベル:謹賀新年2017
posted by yamanuko at 23:34| Comment(0) | イベントストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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